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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
身辺整理編

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348/363

なんか色々悪化したから気軽に出歩けないわね

 

 はぁーーー……お風呂に入ると気が抜ける……緊張したなぁ……

「ルナ様っ、お背中流しますっ」

「んーうん、おねがーい」

 血を流し過ぎたかな。身体が重いし、少しふらふらする。まぁ超寝不足くらいの重さだからなんとかなるか。

 ルゼル様のところに行ってから、こっちでは1週間くらい経っていた。そろそろセイランとローザを帝国に帰さないと。

 あと何するんだっけ? メイラさんには私の素材を沢山置いて来たから半分放置でも良いし、王と一緒にサーレスに行く約束が多忙のせいか流れているし、細かいところは合間にやれば良いし……おっ? 近々の予定は特に無い? 学院はいつものペースで……あっそうだ。


「ナナリーちゃん、氷神教が無くなってノースギアの様子って変わった?」

「そうですねぇー、氷神巫女を引退したウォーエルさんが女神様みたいな扱いに変わったのと、ルナ様も似たような感じになったと思いますよ」


「女神様? 前とそんなに変わらなくない?」

「マリン様がウォーエルさんを妹って言ったせいで、氷神様の妹だからウォーエルさんも氷神様みたいな噂が流れたんですよ。ルナ様も氷神様の娘だから氷神様、みたいな?」


「なんかよくわかんないね。クルルもバレたし、明日ノースギア王都をぐるっと散策してみるよ」

「恐らく、前よりも国民の反応は悪化していそうです。リューメイ魔導具店でルナ様の物は全て売り切れで、入荷しても即完売の状態になりました」


「つまり、私がもっと人気者になったって事かしら?」

「想像以上かと。帝国の英雄の大聖女ルー、ヴァン王国の英雄の合成魔導士クルル、そして氷神様の娘のルナ様が同一人物だと知られてルナ様に憧れる女子が倍増しています。新しい宗教でも出来そうですねっ」


 ふむ、私の評価が良い方向に行っているのか。

 ふむふむ、じゃあ街に出たら騒ぎになる? いや前と同じく祈られるだけだと思うが……うーん……学院に行きたくない病が発病したかもしれない。なんか凄そうだし……落ち着いてから行こうかな。


 翌日、引き篭もってしまったので更に1週間引き篭もってしまった。血を流し過ぎた影響なのでベッドでぐったり……でもよく寝られたよ。

 ルゼル様の家に行ったがルゼル様とデスちゃんは不在で、魔導人形のメイドさんに腕時計を託そうとしたが断られた。会いたかったなぁ……まぁ仕方がない。


 よし外に出ようっ!

 あずきジャージにぐるぐる眼鏡といういつもの格好で外に出た。

 いや親しみ易さをアピールしているだけなのだが、この格好はルクナと定着しているせいか私を見掛けた人々は膝を付いて祈るようになった。前までお辞儀程度だったのだが……ランクアップしている気がする。氷神教が無くなって氷神巫女も無くなったのに祈るとか困るんですけどー。

 本当にただの平民になったのに、なんだか居心地が悪くなってしまった。


 はぁ……引き篭もりが加速するぜっ。

 別に外に出なくても転移で出掛けるし、特に困らない。出歩く用事もほとんど無いし、神殿に行く程度か。神殿あるよね?

 まぁ先ずはリューメイ魔導具店にでも行くかぁ。

 ……

 ……ふむ、ルクナ・ルナの作品は売り切れ。入荷未定とな。3階に行ってみるか……確かにナナの言う通り売り切れだった。結構良いお値段だったのに、売れるもんだなぁ……それなら、今の内にもっと納品しておけば売上が良くなる。

 まぁ本店に卸すだけだし、私が店を持って店頭販売なんてしたら大混乱になるだろう。


 次は神殿に行ってみるか。

 ……真王都でも祈られるのは気不味いが、口角だけ上げて早歩きで神殿に向かうところで、神殿への道が封鎖されていた。これじゃあ神殿を見る事も出来ない状態だな。ウォーエルは神殿の周囲に人が来るのを嫌がったのだろう。

 看板が建てられていて、氷神教終了のお知らせとその経緯が書かれていた。教徒からしたら一方的なものだが、まぁそこは上手くやっているのだろう。

 ここを乗り越えて行くのはお行儀が悪いので、先に城へ行ってみる事にした。


「すみませーん、王様にルクナが来たとお伝えくださーい」

「はっ! 長くなられるとお身体に障りますのでこちらにお座り下さいっ!」


 えっ、どうも……今回は椅子付きだ。受付の隣にある椅子に座らされ、暇なので手帳の確認をしておこう。

 ……やべっ、セイラン帰す前にアルセイアに会わないと。自慢厨セイランの餌食になってしまう。

 いやー今日行くかなぁー……アルセイアは長期休暇だけれど公務で忙しいからなぁ……丁度アルセイアママに会っておきたいし……なーやーむー。


「あの、すみません……ルクナ・レド・ノースマキナさんに会いたいのですが、神殿に行けなくて……どこに居るかわかりますか……」

「氷神教はもうありませんのでお答え出来かねます」


「そうですか……どこに居るんだろ……」

「ルクナ様っ! 王様がお会いになられるので執務室へどうぞっ!」

「っ……あの、聞こえるので普通に言ってくれますかね……」


 おーびっくりしたぁ……至近距離で大声出さないでよ……まじ怖かった……

 よっこいせっと。とりあえず王に現状を聞くかぁ……


「えっ……ルクナちゃん?」

「ん? あ……」


 えっ、娘さんなんで居るの? 更にびっくりだよ……えーっと、辺りを見渡してみたがヘルさんは居ないのか?

 いやいやいや、あずきジャージにぐるぐる眼鏡だからめっちゃ恥ずいじゃん……帰りてぇ……


「良かったぁ……やっと会えた……みんなルクナちゃんの事知っているのに教えてくれなくてさぁ……」

「特殊な立場なので。ヘルさんは居ないのですか?」


「手分けして探していて……呼んで良い?」

「あー…はい。これから王様に会うのですが、一緒に来ます?」


「えっ……良いの?」

「いつも友達を連れて来ているので大丈夫ですよ。あのすみません、王様に2人追加って言って貰えますか?」

「はいっ! 少々お待ち下さいませっ!」


「……ルクナちゃんって、凄い有名人なんだね。帝国とヴァン王国も行ったんだけれど、みんなルクナちゃんの事を知っていた」

「好きなように生きていたらこうなっただけです。目立ちたがり屋なので楽しいですよ」


 どこまで私を探しに行ったんだ……基本行方不明に加えて何処でも目撃情報があるせいか情報が無かった訳か。

 まぁ各国回って探してくれたから、おもてなしくらいしようかしら。

 ヘルさんが走って来たと同時に、受付の人も走ってきた。


「るく……」「ルクナ様っ! 歓迎するとの事ですっ!」

「あっ、はいわざわざありがとうございます。このお守り、お子さんにどうぞ」


「ありがとうございますっ! ありがとうございますっ! うぅぅっ! 家宝に致しますっ! ありがどうございっ……ひぐぅぅ!」

「「……」」


 引くなよ。氷神巫女の娘ってこんな感じなんだよ。

 とりあえず2人に手招きして、城の階段を登っていった。

 ……あずきジャージにぐるぐる眼鏡に突っ込まないのか? むしろ言ってくれた方が気が楽だぞ……


「娘様、ヘルさん、わざわざ私に会いに来てくれてありがとうございます。私の扱い、驚きました?」

「うん……なんか……女神様みたいな扱いだよね」「これが普通、なの?」


「一応こんな感じですが、前よりも悪化しているので王様に現状を聞きに来たところで娘様に会ったのですよ。氷神教とは氷神様を崇めるノースギアの国教のようなものなのですが、先日氷神様の巫女が氷神教おーわりって宣言してしまったせいでよくわからない状況になっています。色々情勢が変わると思うので、長話になったらすみません」

「えっ、私達居て良いの? 聞いてもよくわかんないけれど」

「……大変な時に来てしまってごめんなさい」


「ここまで来てくれた方を帰すなんてしませんよ。嫌かも知れませんが、王様には平民の友達として紹介するので我慢して下さい。お互いに言いたい事は私の家でしましょう。失礼しまーす」


 2人の返事を聞かずに執務室に入ると、机にある大量の書類とにらめっこしている王が書類を見ながらソファを指差した。


「ルクナ、おかえり。お茶で良いか?」

「ただいまです。あっ、お土産あるのでみんなで食べません? 鬼族の里名物『鬼饅頭』と緑茶です」


「悪いな、俺も菓子を出すよ。ちょっと待っていてくれ」


 王が立ち上がり、私から鬼饅頭と緑茶を受け取ると簡易キッチンの方へ歩き出した。ここにはメイドが居ないから王が自らやるスタイルで、私がやろうとすると怒るからいつもやってもらう。

 王がキッチンに行った時、娘さんが徐々に距離を詰めてきていた。

 ……反対側に座るヘルさんも距離を詰めないでくれん? 暑いのよ。


「王様、めっちゃ格好良くない? 若いよね? 何歳?」

「確か50代ですよ」

「えっ……見えない。どう見ても20代後半じゃない……」


「ママはもっと若く見えますよ。王さまー、友達が王様がイケオジ過ぎて素敵って言ってますよー」

「……ありがとう。氷の適性が高いと若くみられやすいだけだ。友達は何処のお姫様だ? 平民じゃ絶対出せないオーラがあるぞ」


「月よりも遠い所からわざわざ来てくれた方くらいしか言えませんよ。まぁエリちゃんと同じ扱いでお願いします」

「そうか、ルクナの味方ならそれで良い。丁度王妃はウォル様と出掛けたからルクナとゆっくり話せるよ……」


 忙しそうね。王は対面にドカッと座って深いため息を吐いた。氷神教解体の余波は凄いみたいね。


「引き籠もっていたせいで状況がわからなくて、なんか私に対して悪化していません?」

「それなんだが、氷神様がウォル様を妹と言ったせいだな。氷神様の妹だから氷神様と同じ存在だと……そしてルクナもウォル様の娘だから氷神様の親族という事で崇拝対象になった」


「悪化はしましたが……今までとそんなに変わらなくないですか?」

「それがな……結構変わる。先ず、ルクナは王の子に選出されない」


「えっ……あー、まぁ、そっか……王になる気が無いのに選出されても、国民は納得しないですよね……」

「あぁ、確実に次の女王はルクナだと思ってしまう。女王にならなかったら暴動にもなるし、そもそも氷神様の親族を王の子にするのは失礼だと批判されるのは明白だ。仮に王になったとして、誰も逆らえない王ほど危険なものはない……そう思う者も多いだろう」


「そうですか……王様をじーじと呼べないのは悲しいですが、仕方がないですね……」

「じー……ごほんっ、アズは育ての親という認識があるから母だと言っても良い。俺は、王を引退したら呼んでも構わない」


 引退? まぁ、そうか……アズ母が女王になっても母と呼べて、じーじとも呼べる。私が王女になる必要が無くなったという事で良いのかな。


「じゃあ、学院に通う意味も無くなった訳ですね」

「……通えるようには、するつもりだ」


「……? 私が学院に通っていたのは、アズリーナ王女と王様の家族になりたかっただけですよ。腫れ物を触るような扱いも我慢してきましたし……氷神様の親族になった私に気を使う生徒達に囲まれて過ごすのは嫌なので……まぁ、地方の田舎の学校で、のんびり学んでみたいですね」

「……すまない……その事なんだが……ヴァン王国に続いて、ノースギアでもルクナは絶対不可侵に認定された。帝国も、その内そうなる」


 えぇ……それって、何処にも所属出来ないって、事? 田舎の学校でさえ、学べないという事か。

 ははは、行く所まで行ったか……


「そうですか……仕方がないですね。仕事が忙しいので別に良いですが、氷神結界の件はどうなりました?」

「俺が引き継ぐ。だから早い内にアズを女王に推薦するつもりだ」


「……王都から出られなくなるじゃないですか」

「大丈夫だ。神殿巫女達が手伝ってくれる。氷神様の加護が強くなったからルクナが思っているよりも簡単だよ。ただ、悪用されないように俺が管理するってだけだ」

「それなら良いです。王様とお出掛けしたいので時間は作って下さいね」


「ふふっ、もちろんだ。あとは……そこまで変わらないと思うが……周りの反応次第だな」

「せめて膝を付いてお祈りはやめて欲しいですね。買い物も出来ません」


「そうは言ってもな……いきなり氷神教が無くなったんだぞ? 信者は祈りたいのに祈るものを失ったんだ。少し我慢してくれ」

「じゃあママの像でも建てておいて下さいよ。女神とそんなに変わらない状態ですし」


 王が顎に手をやり、少し考えた。

 ウォーエル教の誕生かしら。

 宗教って思っているより難しいからなぁ……王は立ち上がって私の頭を撫でた。

 泣きそうになるからやめれ。


「氷神様の像を建てて良いか聞いて貰えるか?」

「はい、その方が良さそうですね。ママがまた怒りそうですし」


「また進展があったら教える。書類が多くてすまんな……まぁ、ゆっくりしていてくれ」

「では、お邪魔しては悪いので行きますね」


 王に手を振って、2人を連れて執務室から出た。

 ふむ、王と会えて良かったな。現状よりは良くなるだろう。

 ……いつの間にか私の両側に立たれているので挟まれている状態だ。すれ違う人が迷惑だから後ろ歩いてくれよ。


「ルクナちゃん、絶対不可侵ってなぁに?」

「誰も手出しが出来ない存在ですよ。もし手を出したら、殺されようが何をされようが国は関与出来ない。強さ、信用、権力が異常な程に高い存在だけがなれる称号のようなものです」


「それって、王様より凄い?」

「まぁ……そう思えなくもないですが、同等の立場として扱われても王様は文句が言えないですね」

「……それ、凄いで済む話じゃないわ……」


「ルクナちゃんって、私達が思っているより高貴な人だったんだね……」

「はははっ、高貴なんて言われたのは初めてです。お二人が思っているより私は泥水を啜って生きてきました。今の立場は、私の努力の結晶ですよ。じゃなきゃこのノースギアで絶対不可侵になんてなれない」

「ノースギアって、なんだか戦闘民族みたいよね。他の国よりもみんな魔力が高い」


 城から出て、真王都を出る辺りで前方から兵士の一団を見付けた。その中心には、お出掛けが終わった2人組が歩いてきていた。


「ルクナちゃん、あれって騎士団かな?」

「はい。そうそう、絶対不可侵はノースギアにもう1人居ます。あの真ん中の仮面を被っている人がもう1人の絶対不可侵……氷神巫女ウォル・ノースマキナです」

「えっ、じゃあ……あれがルクナのお母様?」


「うわぁ……すっごい魔力。ルクナちゃんのママって、怖い?」

「私には優しいですが、気まぐれで氷神教を終わらせるような人です。私を見付けたのでもう逃げられませんよ」

「怒られるかな……」


「あらあらあら、眠り姫はわたくし好みの女を2人も連れて嫉妬に狂いそうだわっ」

「ご機嫌斜めね。ママおはよ。王妃様、こんにちわっ」

「ルクナちゃんっ、今日も可愛いわねっ。来てくれるなら一緒に出掛けたのにっ」


 腰に手を当て、ふんぞり返る姿はセイランそのもの……一緒に居過ぎて仕草が一緒なのだが……どんだけ一緒に居るのよ……もう親子みたいじゃん。

 セイランは宿題を終わらせている最中なので居ないが、隣にセイランが居る感覚になるから背中がゾクっとなるよ。


「王に聞いた?」

「うん。そうだ、マリンさんの像とか建てない? マリンゴールドで作れば喜ぶと思うよ」


「……盲点だったわ。流石はわたくしの娘ねっ! 建設計画を練るわっ!」

「デスちゃんに頼んだら直ぐ出来るよ。じゃあ家に帰っているね」


「待ちなさい。そちらのはぁはぁじゅるりな美少女達は誰?」

「恥ずかしいから変な言い方しないでよ。お客さんだから。はいっ、お城行くんでしょ? ほらっ、家で話すからっ、ほらっ!」


 悔しいからってこんなところで仮面外すなよ。可愛いキメ顔で2人に熱視線を送らないでくれ。

 うるうるすなっ、ほらっ、仮面しなさい。泣かないっ。王妃っ、連行してくれっ!

 王妃に手を引かれながら、ウォーエルは泣き真似をしながら歩いていった。

 ふぅ、気になって家に来るだろうな。


「……ルクナちゃん、ほんとにお母さん? どう見ても10代だよね?」

「すっごい可愛い……あれで母親?」

「あー、若い頃に好奇心で不老の術を試したら永遠の16歳になってしまったみたいです。美しいものを愛でる習性があるのでお気を付け下さい」


「あんなに可愛かったら愛でられたいなぁ……ヘルちゃん痛いっ」

「ダメよ。ルクナ、お母様にも改めてご挨拶したいわ」

「母も喜びます。ところでお二人はいつまで居られるのです?」


「あ、実は居られるのは今日までだったんだ。一旦帰ったら少ししてまた来ようと思っているんだけれど……良い?」

「はい、あっ、それならルゼル様に依頼の品を渡してくれませんか? 伺ったのですが会えなかったので」


「あー……直接渡した方が良い、かな。そっ、そうだ帰って来たら連絡して良い? 連絡先教えてっ。それスマートウォッチでしょ?」

「……? これ魔力登録式ですが、有効範囲がこの国なんですよ。ルゼル様は何故か出来ましたが……」


 娘さんがスマホって奴を取り出して私のルクナリンクに当てた……でも首を傾げるだけ。

 見せてと言われたので外して機能の説明をすると、なんだか欲しそうにしていた。

 結局登録が出来なかったみたい。そりゃ私の自作だからそれには対応していないよ。

 ルゼル様は恐らくデスちゃんのルクナリンクを使ったのかしらね。次元超えて連絡出来るとかどうなってんのよ……


「うーん、もしかしてこれってこの世界の? おかぁさんから貰ったものじゃないの?」

「はい、この世界のものです。結構高い値段ですが、簡易型は販売されていますよ」

「えっ……そうなの? 売っているの?」


「い、いや……これこの世界の技術じゃ作れない、よね?」

「そうですね、恐らく作れないと思いますよ」

「どういう事? なんで売られているの? 他世界から技術者でも来たの? だとしたら問題になるわよ」


「……私が作ったので」

「「……」」


 引くな引くな。ルクナリンク作った時なんてみんな引いてんだからこれ以上引くな。私の貴重な財源なんだから作っちゃ駄目とか言わないでね。


「……天才、だね。魔導具も、作れるの?」

「はい、量産に成功したのはこのリンクシリーズだけなので……問題にしないで欲しいです……」

「この世界の人が作ったなら問題無いわ……ごめんなさい……」


「あーっ、えーっと、他にはどんな魔導具作ったの?」

「……まぁ、色々……ですね……あっ、リューメイ魔導具店に出品しているのでそこでなら見られますよっ」

「ルクナの商品全部無かったわ……買いたかったのに……」


 武器ですっ、なんて言えねえよなー。

 魔剣と神剣作りは秘密にせねば。流石に神剣は問題になりそうだし。

 ヘルさんが落ち込み、娘さんが話を繋ぐを繰り返してルクナ邸に辿り着いた。


「ただいまーフランさん、お客さん連れて来たからご案内よろしくー」

「はーいおかえりなさいませっ。ルクたん様のお屋敷へようこそっ、こちらへどうぞー」


「ミレイさん、何か届いてます?」

「書類と大量の納品依頼と大量の招待状ですね。事務員の募集でもしておきますか? 招待状の返信と書類整理で結構時間が取られますよ」


「うへぇ……事務員かぁ……その前に事務所が無いもんなぁ……わかった、事務員ね。2人は要るよね」

「出来れば経験者でお願いしますね」


 はいはい、忙しいのよねー。主に私の周りが。メイド業務の他にもやってくれているのは申し訳無いから事務員を雇うか。書類と納品依頼を持って客間へ行き、ヘルさんと娘さんの対面に座った。

 流石にぐるぐる眼鏡は外しておくか。


「お待たせしました。お昼は何が良いですか? 今ならなんでも作ってくれますよ。せっかくなので一緒に食べましょ」

「じゃあ……ノースギアの家庭料理が食べたいっ」「私も、お願いします」


「ほいほい。フランさん、私も同じで」

「はーい。では準備しますので、御用があればお呼び下さい」


 ……厨房担当と事務員2人は必要か。メイド協会に募集掛けるかなぁ……どうすっかなぁー。この書類は見積書? 外壁工事? こんなの頼んだ覚えはないな。自分でやるし。怪しい業者って一定数居るからなぁ……


「あっ、すみません考え事をしていました。改めまして、お忙しい中わざわざお越し下さりありがとうございます。大したおもてなしは出来ませんが、出来る限りの感謝は伝えていきたいと思っています」

「こちらこそ、受け入れてくれてありがとうございます」

「……ありがとうございます……あの……ごめんなさい。私、貴女の事何も知らなくて……」


「世界が違うので知らないのは仕方がないですよ。ここに来たという事は、私のルールに従うという意味でもありますよね? その誠意だけで、充分伝わっています。きっと、デスちゃんにボロクソに言われたのですよね? こちらこそ他世界のルールがあるのに申し訳ありません。まっ、水に流せるものは流しましょう」

「……ありがとう」


 ヘルさんは、一言お礼を言って頭を下げ続けた。

 何がこの人にここまでさせるのか、そこは興味があった。二度と会わなければ済んだ話なのに。

 にしても勝ち気なイメージが強いヘルさんがここまでしおらしくなるなんて、デスちゃんは何を言ったのかしら?

 デスちゃんって怒ったら正論でぶん殴るタイプだから口では勝てないと思うし、そこは私と一緒か。


「ルクナちゃん、私も魔眼で視ようとして失礼な事をしてしまった。申し訳ありません……」

「私も、貴女を不躾に探ろうとした。ごめんなさい」

「……私の事……視られました?」


「……いや、何も」

「私も視られなくてムキになってしまったの……」

「……ふふっ、じゃあ、私の勝ちですね」


 ふっ、ルゼル様の娘とその恋人? に勝ったという実績は自慢出来るな。

 勝ち誇った笑みを浮かべて2人を見ると、きょとんとした目で見られた。


「……ははっ、そうだね、負けたよ。凄いね……こんなに負けた気分なんて久しぶり」

「えぇ……なんか、完敗した……よくわからないけれど完敗したって事はわかる……なんで、こんなに悔しいのかしら……」


 ふっ、なんか知らんが負けを認めた。ハッタリだったのだがね。まぁ良いか、負けを認めてくれた訳だから、いやまぁ勝ち負けとかどうでも良いのだがね。でもなんかスッキリしたわ。


「まっ、お二人にはラスボスのデスちゃんが居ますから、頑張ってデスちゃんに認められて下さい」

「うっ……」

「……自信無いわ」


「ふふふっ、意地悪な事を言ってしまいましたね。デスちゃんとは長い付き合いになるかも知れないので仲良くしておいた方が得ですよ。そうそう、ノースギアの事は調べました?」

「えっ、まぁ、レドって称号がステータスとか国が結界で囲まれている珍しい国だよね。パンパンでも聞き込みとかしたけれど、ルクナちゃんの人気が凄くて色々聞いたんだ」

「私達とは比べ物にならないくらい人気だった……レド試験とグレイド試験は必ず話題に出るもの」


「レドになれない者は見下されるんです。しかもどこでレドになったかでも色々言われるし、変な国ですよね。レドの最上位がグレイドで、王様がノースギアでただ1人のグレイドなんですよ」

「へぇー、グレイド試験って簡単に受けられるの?」


「うーん……簡単ではないですね。東西南北のどれかの公爵の推薦を受けて、王様が了承すれば受けられます。王都民に公開されるので、グレイド試験は一大イベントですね。凄い人でしたよ」

「見たかったなぁー……映像とか残っていないの?」


「誰かの記憶見させて貰えば良いんじゃないですか? 学院に通っている生徒なら観たはずですよ」

「それは、良いのね」


 私と私の知り合いじゃなきゃ良いわよ。

 なんとなく視られるのは怖いので、ヘルさんの隣に座って手をさわさわ……すべすべー。

 やっぱり良い匂いだなぁ……娘様とは違う花の匂い……? あぁ髪の毛に匂い付けているのね。ツインテールの片割れをくんかくんか……あーずっと嗅いでいられる。

 ヘルさんは抵抗しないが私の事をジーッと見ていた。

 ……魔眼は使わずに見ていたので、私もジーッと観察。

 くんかくんか……赤い瞳の中にうっすらと魔法陣があるな。読めるかなぁ……聖眼……いや神聖の魔眼ってやつか。

 じゃああっちでは聖女なのかしら。


「ルクナちゃん? 座るなら間に座って欲しいなぁー……」

「すみません今ヘルさんの観察をしているので……ヘルさんって聖女なのです?」

「……そう、なるのかしら。聖女なんて呼ばれないけれど。どこまでわかる?」


「私の魔眼は解析の魔眼なので、ざっくりしかわかりません。綺麗な眼ですね」

「……ルクナも綺麗よ。曇りのない氷みたい……でも左眼に違和感があるのはなんで?」

「寂しいよぉー、ルクナちゃーん」


「魔導具で変えているので。解除しますね。どうです?」

「っ……少し、ヒビが……」

「ヘルちゃんばっかり……うぅ……っ、ルクナちゃんこっち来てー」


 仕方がないから2人の間に座ったが、娘さんにくっ付かれた。まぁ今日は許してやろう。

 再びヘルさんに顔を近付け、至近距離で目を見た。


「この瞳は、私の大好きな人の瞳です。失明寸前だったので、私の瞳と入れ替えました」

「っ、そんな事、出来るの?」


「はい、瞳を取り出して物理的に……私は起きていないといけなかったのでめっちゃくちゃ痛かったです」

「そんなに、大事な人なんだ……」


「はい、瞳を入れ替えた事がバレた時は本気で怒られましたがね……実はこれ、魔眼の入れ替えには副作用がありました」

「……危険、なの?」


「危険ですね……私の片想いだと思っていたのに、相手も私の事が大好きだって瞳を通じてわかってしまいました。しかも相手にも、私が大好きだって丸わかりだったんです。好きとか怒りとか悲しいとか、感情が共有されました……すっごい恥ずかしかったんですけれど、すっごい嬉しくて、めちゃくちゃチューしたのですが……まぁ、何が言いたいかと言いますと……ただの自慢です」

「えっ……」


「いやぁ……ヘルさんにもう一個くらい勝っておこうかなって」

「っ……アスティ、眼入れ替えるわよっ!」

「いや死ぬよ? 深淵の瞳と破壊の瞳どっちでも死ねるよ。やめとこ」


 なにその強そうな魔眼っ!

 娘さんの方をバッと振り向いて、覗き込むように瞳を見た。

 ……ほえー、なんか意識が持って行かれる感じがする。

 じー…………なんかミリ単位で近付いて来ている気がするぞ。このまま行ったらチューしちゃうので、私もミリ単位で遠ざかってみた。

 じー…………ちょっと近付く速度が上がったので私も負けじと遠かった。


「絶望、悲しみ、恐怖……よくそんな魔眼で気が狂いませんね」

「ふふふ、わかるなんて凄いね……良いなぁ……好きな人の眼なんて……」


「私の宝物です……私も貴女のように強かったら、私の目標は達成出来るのでしょうね……」

「その目標は聞いても、良い?」


「はい、ですが……ここでは言えません。またいらした時にでも……そろそろママが来るので、離してくれませんか?」

「もう離したくないっ」

「私も、ルクナと一緒に居たい」


 いや、ウォーエルが来たら勘違いするじゃん。別に友達じゃないし、ただのお客さんだもん。

 勝者として敗者の魔眼を覗いただけなのだから。

 ──コンコン。

 あっ、来た。扉を開けて、私達の様子を見てにんまりと笑ったが勘違いだからね。

 ……おや? ウォーエルは普通に挨拶をして出て行った……ちょっと探ってみよう……あっ、お昼ご飯作るのね。



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