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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
身辺整理編

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347/363

もう行くのやめよかな

 

 …………ん? 寝ていた……? いや、確かルゼル様を怒らせてしまって、死んだのか? 目を開けると、デスちゃんが私の顔を覗き込んでいた。ちゅっちゅしてー……


『ママ……良かった……』

「夢……じゃない、か……」


 確認すると私の右腕は、肘から先が無かった。

 生きている……それだけで充分だ。腕はまぁ大魔法を使って治せば良い……

 あーあ、服も血だらけだし、お風呂入りたいや。


「……ルクナちゃん」

「っ、はいっ! 申し訳ありませんでしたっ!」


 横から声が聞こえて直ぐ様飛び降りて着地と同時に土下座っ!

 ……今一瞬見えたのだが、1人増えていなかったか? ルゼル様と娘さんと誰か……もう頭を打ち付けている状態なので誰かわからないが、というかなんでみんな床に座ってんだ? そこにソファあるのに……

『ルクナ、すまなかった……』

 えっ……何? 直ぐ近くで声聞こえるから怖いんだけれど……なんでルゼル様が謝ってんの? 状況がわからないが、とりあえずこのまま土下座を続けていた方が無難だろう。


「ルクナちゃん……母がすみませんでした」

「……い、いえ……私が無礼な事をしたばかりに……申し訳ありません……」

『ママ、悪くないよ。全部、黒金様のせい』


「あのね、ルクナちゃんがマギマタイトの腕輪を使おうとしたのを止めようとしただけみたい。それで勢い余って腕を潰してしまったの……」

『……我のせいだ、本当に、すまない』

「……」


 勢い、余り過ぎじゃない?

 なんて言える雰囲気ではない事は確かだ。空気が重苦しい……このまま顔を上げたくないので土下座のままだが、私は悪くない方向で良いのかしら……本当に良いのかしら?


「本当に反省しているから許してあげて欲しいんだ。それでね……腕、治させて欲しい。元通りに出来るから」

「……はい」


 …………なんだこの間は、はい以外答える選択肢無いだろ。許してあげて、はい、間違っていないよね?

 デスちゃん、この間が苦しいよ……なんとかして。


『ママ、顔上げて。ママ、何一つ悪くない。ぜーんぶ、黒金様のせい』

『……』

 それ気不味いから言わんでっ!

 絶対デスちゃん怒ってんじゃん。私は別に命が助かって良かったなぁーくらいにしか思っていないのに、デスちゃんめっちゃ怒ってんじゃん……そのせいで間がもっと苦しいよ……


「……ルクナ、顔、上げて」

「……ヘルさん?」

 声のした方をチラッと見ると、正座しているヘルさんと目が合った。

 それからすーっと顔を戻して、ちょっと考えた。なんで居るの? もっと気不味いじゃんっ!


「……ごめんなさい、ルクナが死にそうだって聞いて……無理言って来たの……」

「……そう、でしたか……なんか、こんな身体ですみません」


 ……ルゼル様くらい至近距離で声がしたから、私と同じ体勢? って事はルゼル様も私と同じ体勢? えっ、やだ、なにこの状況っ! 顔上げた人が負ける感じ?


「おかぁさんって馬鹿力だから結構やらかすんだけれど、誰かを傷付けるなんて無かったのに……ルクナちゃん、お願いだから顔上げて……このままだとずっとこんなだから」

「っ……汚れますよ」


 娘さんが私を起こして、抱き締める形でベッドに座らされた。

 ……先に顔を上げた私の負けか……ルゼル様とヘルさんも顔を上げて、少しの沈黙。


「腕は、私が治すね。少しこのままで……エナジーヒール」

「……? これは何の属性ですか?」


「星属性っていうんだ。そっちの世界には無い属性だよ」

「へぇ……凄いですね…………もう腕が復活している……」


「…………よしっ、おしまい。どう?」

「欠損を誰かにやってもらうのって初めてですが、凄いですね……ありがとうございます」


「えっ、腕とか欠損って、よくあるの?」

「はい、よくあります。ありがとうございました。あの、ルゼル様……」

『っ、すまない』


「あぁいえ、勘違いしてしまい申し訳ありません。マギマタイトは二次加工が違反だったのですか? 私には学が無くて……せっかく止めて戴いたのに……」

『……違反なんて、無い。あの腕輪は、我らの友である証のようなものだから……部品に使わせたくなかったんだ……』


 …………話を盛らないでくれません? 友とかそういう関係じゃないでしょ。娘の前だからって良い感じに言わないでくれないかしら……明らかに上下関係があるのに友とか無理があるし、もし本当なら価値観違い過ぎて友じゃねえって思うし、正直に言ってくれないかな? また腕潰されたらガチ泣きするぞ。


「……おかぁさん、どう見ても友って関係じゃないのにルクナちゃんを困らせないでよ。腕もいで土下座させるのが友達とか私でも無理があるって思うし、おかぁさんの言う事全然信じていないよ。もうちょっとわかりやすく言ってよ」

『……でも……これ以上、どう言えば良いんだ』


「はぁ……ルクナちゃん、ごめんね。おかぁさん、ルクナちゃんと一緒に居るのが楽しかったみたいなんだ。咄嗟に出た行動で怪我をさせてしまった事は凄く反省しているし、私も怒ったから許して欲しい。お詫びに私達がなんでもするし、もう二度と怪我はさせないと誓う」

「あの……はい。許すもなにも、ルゼル様が怒っていないのならそれで良いです。私も恐がってしまい申し訳ありません……ルゼル様、お相子って事で今まで通りに戻りませんか?」

『……良い、のか?』


「はい。話が大きくなってしまったのは私が貧弱なせいでもありますし、納得出来ないのなら貸し1つでお願いを聞いて貰えたらと」

『ああっ、もちろんだっ! なんでも言ってくれっ!』


「で、では……この部屋を貸して下さい。誰にも邪魔されずに作業出来る場所が欲しくて、あとアンテナを置けばいつでも来られるので」

『……この部屋はもうルクナの部屋だ。自由に使って良いし、勝手に来ても良い。別の願いにしてくれ』


 ……あぁ扉に書いてあったのって私の名前か。部屋、用意してくれていたのか……優しいよなぁ……私なんて道端の石くらいの立場なのに、ここまで良くしてもらったら申し訳ないよ。

 別の願いって特に無いぞ。でも勝手に来ても良い……か。


「ルゼル様にいつでも会えるだなんて幸せです……じゃあ……お願いは、たまに、お話、聞いてくれますか?」

『……もっと、大きなものを頼まないのか?』


「大きいですっ、ルゼル様とお話出来るなんて、私にとって、とても大きな事ですっ! 私、ルゼル様の事大好きなのでっ」

『……』


 っ……ルゼル様がおでこに手を当てて上を向いた。

 嫌だった、かな。まぁ、小娘との話なんて面倒だよね。


「すみません、調子に乗りました。他に願いは無いのでこの話は終わりにしましょう。あと、皆さんの貴重な時間をこれ以上私の為に使わせる訳にはいかないので……はい、解散しませんか?」

「……解散はやだ。ルクナちゃんとお話したい」


「家に帰って着替えたいので、またの機会でお願いします」

「えーじゃあ私もルクナちゃんの家に行きたいっ」


「それは勘弁して下さい。離してくれませんか?」

「……」


 いやいやと頭を振ってグリグリしないでくれ。デコに私の血付いてんぞ。

 ヘルさんを見て娘さんの回収をお願いしたが、どうしても私と話したい雰囲気なので当てにはならない。

 ルゼル様は私に何かを言おうとしているが娘さんが邪魔で聞けない。

 仕方がないので、娘さんの耳元で思っている事を言った。


「娘様、私の怪我を利用してヘルさんを連れて来るように仕向けましたよね?」

「……いや、まさかそんな事しないよ。ヘルちゃん呼んで来てなんて言っていないし」 


「では、何故私の腕を直ぐに治さなかったのです? 目覚めるまでに治す場面は幾らでもあったのに、同意なんてしなくても良かったですよね?」

「……それは、おかぁさんに反省して欲しくて……でも連れて来たのはおかぁさんだよっ」


「パンパンに居る人の中で回復魔法が得意な人は限られます。ルゼル様に連絡した際はパンパンに居ましたよね? 誰が居るか把握していましたよね?」

「それは、まぁ、そうだけれど……ごめんなさい」


「……離して下さい。では、家に帰ります。ルゼル様、用事を済ませたら作業に取り掛かります。失礼します」


 おっと、アンテナを設置しないと。ベッドに仕込んで……よし、次元帰還転移っ!

 先に帰るとか無礼者だと思ったが、風呂入りてえんだ。

 ……ああやべっ! デスちゃん忘れてきたっ!



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「……おかぁさん、なんで返事してあげなかったの? 落ち込んでいたじゃん。そのせいで拒絶されたし……」

『……すまない、ルクナが可愛いくて別の扉が開きそうだった』

「私なんて嫌われたままでした……はぁ……せっかく会えたのに……」


「良い? おかぁさんはルクナちゃんにさっきの返事をしっかり伝えて。じゃないと私達はずっと拒絶されたままだもんっ! 絶対やだっ、仲良くなりたいっ!」

『だって……恥ずかしいもん』

「ルゼルさん、思春期みたいな事言わないで下さい。ほんとお願いします。あっ、デス、さん……」


 置いて行かれたデスがトコトコと歩いてルゼルの膝に座り、娘達を見て呆れるように肩をすくめた。


『黒金様、ママ、悲しんでた』

『……あぁ、会ったら、言うよ』

「あのっ、デスさんっ、どうしたら、ルクナと仲良く出来ますか……デスさんだけが頼りなんです……」

「ルクナちゃん、心開いてくれなくて……」


『デス、我からも頼む。娘達が嫌われているのは見ていて辛くてな』

『お母様の意に反する事はしないのですが、仕方がありません……ねぇ貴女達、何を言われても良い覚悟はある?』

「はい」「お願いします」


 髪を整えていたデスが立ち上がり、キラキラとしていた瞳から光が消えた。虫ケラを見るような冷たい視線に、正座をしていた2人の肩がビクッと跳ねた。


『先ず、ヘルトルーデ……貴女はお母様にとって、頼りにならない人間よ』

「っ、どういう、事でしょうか……」


『パンパンに連れて行かれたお母様に、何も聞かずに働かせたのでしょ? 何も知らない土地で、頼りに出来る人も居ない独りぼっちのお母様に、貴女は何をしたの?』

「えっと……パンパンの説明と、みんなに紹介と、仕事を教えて……いました」


『それだけ? 休みの日にどこかに連れて行った? 街の案内は? お母様と2人でどんな景色を見た? 親身になって会話した? お互いに身の上話くらいしたのよね? その上であんな仕打ちをしたのなら許さないわ』

「……みんなと、仲良く話していたので……何も……」


『あっきれた……それでよく仲良くなりたいなんて言えたわね。立場の高い貴女の紹介なら誰だって気を使う。妬み嫉みも受ける。気を使われている事なんて丸分かりだから、お母様は誰にも気を使わせないように独りで過ごすようにしていた……身の上話を聞いていたら同世代の中に放り込むなんて酷い事は出来ない……パンパンでお母様を孤独にしたのは貴女よ』

「……はぃ」


『あの年で、寝る間も惜しんで働いている。自分の身体の事なんてお構い無しに、大切な人の為に命を削っているの。だからお母様から見た貴女は、ただの道楽者なのよ。他にもあるけれど、仲良くなれない理由はこんな感じかしら』

「……」


 全ての言葉が突き刺さって何も言えないヘルに、デスは興味を無くしたようにもう1人の娘を見た。


『娘様、お母様の警戒心は異常なほど高いの。裏切ったら親友でさえ切り捨てるわ。そこで質問……貴女、何人その身体で飼っているのかしら?』

「ぁ……えっと……何人、かな……」


『貴女単体なら、お母様は拒否しないわ。でも、貴女の中にお母様をよく思わない者が居たら話は別ね』

「ぇっ、そんな人、居ないはず……」


『誰だか知らないけれど、お母様に敵意を持つ者を飼っている貴女は……私の敵になるわね』

「ご、誤解だよっ、多分、羨ましいとか、そんな感情だから……ルクナちゃんって、みんなに愛されているから」


『そうね。お母様はみんなに愛されているわ。だから貴女達は無理に仲良くなろうとしなくて良いの。まっ、これを聞いても仲良くなりたいのなら、嫌われる覚悟でノースギアに来てルクナ・レド・ノースマキナを知る事ね。お母様のお言葉を借りるならば……『謝りたいなら直接来いよ。それが筋ってもんだろ?』ふふふふふふふふふ、私からはこのくらいにしておいてあげる。黒金様、ご褒美、下さい』

『あぁ……ありがとう。ルクナにも、お詫びの品を考えないとな……』


 デスは再びルゼルの膝に座り、2人を眺めながら……取引相手から始めれば良いのに……と、1番簡単に仲良くなれる方法を言わずにため息を吐いた。


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