なんか嵌められた感
「1番っ、3年1組ユウレースリ・レド・ノースギア」「3年1組アンジェラ・レド・サーム」
「「よろしくお願いしますっ!」」
ベストパートナー賞は、2人で協力して氷魔法を使う。
お題はノースギアに関連した生き物で、3年の王族と貴族のカップルは歓声を受けていたので有名なカップルなのだろう。アズ母の補足では男子の方は生徒会長で、全校集会で見ていないかと聞かれたが全校集会がある事すら知らない私にとって完全に初対面だ。
ノースギアの魔法は詠唱か詠唱破棄が主流なので、2人で魔力を込めて短い詠唱をした後にアイスメイクを発動した。
「「「おぉ〜」」」
周りが唸るほどの大きな狼が現れ、それぞれ色が違うのでオスとメスかしら。知識が無さ過ぎて狼さんだーくらいにしか思わない私を許しておくれ。
でも凄い綺麗な狼だ。流石はレド……恐らく親戚であろう男子はにこやかに礼をして、女子の方は息切れを隠すように胸に手を当てて礼をした。
「ルクナ、近くで見て審査するのよ。行きましょ」
「うん。レド試験もこんな感じの表に書くの?」
「そうね。1番の欄に各項目の点数を書くの。10点満点で3項目だから、全部で30点よ」
「へー、でもさ、ノースギアの基準なんて知らないよ?」
「そうねぇ……ルクナの基準だと辛口よねぇ……まぁ、好きに採点して良いわよ。どうせ全員の合計点だし」
「ほーい」
項目は3つ……魔力精度と造形とパートナー度? 同じ造形であれば良いのか?
まぁ好きに採点して良いと言われたので、とりあえずメスの狼さんの顔をじーっと見詰めた。
……オスは格好良い系で、メスは格好良い系だが少し丸い。綺麗な造形だし、この2人を基準にして点数を書けば良いか。とりあえず9、9、7、最後にまた書こう。
採点中に次の人が隣にお題を出していた。大きなウサギさん……可愛いわね、カキカキ……7、6、6。
おっ、ネコちゃん……5、8、7。おぉ凄い大きな竜だー9、9、1……クマさんも良い感じね、7、8、9。
なんか楽しくなってきたわね。20組エントリーしているみたいで、ほとんど3年生だった。実力差がハッキリしているから、1、2年生はよほど才能溢れたカップルじゃないと恥をかくだけだな。となれば、私も3年生になればお誘いが凄いのではないか? 私と組めばベストパートナー賞は確実だし。
……ふむ、一通り終わってメスの狼さんの前に立って眺めていた。エントリーした人も自分のお題の後ろに居るので、狼越しに目の前にアンジェラさんが居る。私がじーっと狼を見詰めているのは、昔エリスタで子狼を助けた事があったから懐かしい思い出に浸っていただけだ。アズ母が魔の森の向こうから迷い込んだ魔物なのだろうと言っていたし。助けたのは首輪があったからで……あれ? この狼にも首輪がある? オスの方には無いな。 この模様……
「あの、この子はどうして首輪があるのです?」
「えっ……あっ! いやこれはその……」
「アンジェラ? まさか失敗したのか? は? なんだこれは……まるでペットじゃないかっ!」
「も、申し訳ありません……なんとお詫びすれば……」
「残念だ。君には失望したよ……ルクナ様、お目苦しい作品を披露してしまい申し訳ありません」
「いえいえ、素晴らしい作品なので私に謝る必要は無いかと。アンジェラさん、この子もしかして……ムーマちゃんですか?」
「へ? ど、どうして……その名を……」
「おー当たりですね。何年か前に森でこの模様と同じ首輪の子犬を拾ったので……今はこんなに大きいのです?」
「そんな……まさかルクナ様が……あ、えっと、今は、領地に居ましてっ、もうこれくらいですっ!」
「こんなにデカくなるのですねぇ……あっ、アズリーナ王女、この子ムーマちゃんなんだって。結構前に森で子犬拾ったでしょ」
「んー? ムーマちゃん? えっ、こんなにデカいの? じゃあ貴女はあの時の子?」
魔の森は子供以外にも子犬とか子猫も迷い込んでエリスタに行き着く不思議な森なので、首輪の犬は覚えていた。犬というか狼なのだが、当時は小さい子犬だったので狼だとは思わなかった。アズ母が首輪の住所を見て家に帰して貰ったが、ここに飼い主が居るなんて世間は狭いわね。
アズ母と話すアンジェラさんは凄く嬉しそうで、隣の男子は凄く不機嫌そうだった。私もアズ母が話の中心になったから不機嫌だった。もっと聞きたかったのに……席に戻ろう。しょぼーんとしているところをセイランに撮られたが、悲しいから勝手に撮ってくれ。
『審査が終わりましたので、集計に入らせてもらいます。しばしお待ちください』
「ルクナ、生徒達も中々のものだろう?」
「凄いですねー、分析し甲斐があります。魔法陣を使わずにここまで出来るなんて尊敬しますよ」
「レドになれば魔法の発動速度も必要だからな。ルクナは例外だが」
「訓練すれば出来ますよ。魔力回路がボロボロになるくらいの努力家なら大体大丈夫です」
「まぁ、そうだと良いが……今じゃそんな子も減ったな」
「貴族の子でも自由に生きやすくなった証拠じゃないですか? 王様の努力の賜物かと」
「……それは中1の発言じゃないぞ。もっと子供らしくしろとか言われないか?」
「いいえ。私は自立しているので流石ルクナ様と言われます。まっ、子供らしくする時はしますし、自分の魅せ方を知っているだけです」
「くくっ、そうか。孫達にも見習って欲しいものだな……納税しろとは言わないが、ある程度の自立は必要だ」
「子供が働ける環境はとても少ないので、大人達がどう動くかによりませんか? ヴァン王国ではオレイドス家というかセイランが服飾工場や食品工場を建てて孤児院の子達に就職してもらっていますし、帝国でもローザクレイル皇女主導でその動きがあります」
セイランさんとローザが組んで色々やっているから、詳しくはセイランに聞いてね。あれ? でも2人がノースギアに居るから色々止まっているのでは? まぁ、焦っていない様子だから大丈夫なのだろうが、そんなに長く休暇取って大丈夫なのかしら。
「……アズ、ルクナの周りは凄い子ばかりなのか?」
「えぇ……凄い子ばかりというか、凄い子になってしまうんですよ……セイランちゃんは少し才能があるくらいの公爵家のお嬢様でしたし、他の子も平凡でした。ルクナの事が大好きというだけで、ここまでの才を発揮しています。本当に末恐ろしいです」
「なるほど……全てはルクナの為、か」
『お待たせしましたっ、これよりベストパートナー賞を発表したいと思います! サーレス公爵様、お願い致しますっ』
『参加してくれた生徒諸君、素晴らしい作品に感謝する。今年はレベルが高くて将来有望なレドだと感じた。ベストパートナー賞は王都学院の伝統ある賞で……』
……話長えな。
私をぼっちで挨拶させた事を謝ってくれなかったので私のサーレス嫌いが加速した気がする。
セイラン達は最前列で固まって雑談していて楽しそう……私も混ざりたいが、自分からここに来たいと言ったので我慢。参加者の観察でもしていようかしら……最初のペアは険悪な雰囲気で、ピシッと立っているペアであったり、手を繋いでいるペアは恋人同士かしら。私をジッと見ている人も居るし……あー竜のペアはパートナー度1にしてしまったが、やっぱり仲悪いのかしらね。仲悪いというか、男子が嬉しそうなのに対して女子は落ち込んでいるような感じかしら。
『ここに居る皆に感謝を。それでは発表する……第3位はスノーベアのゴーレペア』
「おぉぉっ! ありがとうございますっ! やったなっ!」「うんっ! 記念に参加して良かったっ!」
クマさんペアは大喜びして抱き締め合って……なんか青春を見せ付けられる側だと腹立つな。
パチパチと拍手が鳴り、周りの生徒達が祝福を送っていた。こんな感じで褒め合うのね。
「ねぇアズリーナ王女もこういうの出たの?」
「私は有名になり過ぎて出れなかったけれど、パートナーの誘いが凄かったわ。男子達が加熱して決闘騒ぎになったもの」
「くくくっ、決闘事件は有名だな。男子100人の乱闘騒ぎになってアズが泣きながら俺のところに来たんだ」
「あんなの見せられたら泣きますよ……なんで男ってみんな脱ぎ出すんです? 全員に抗議の手紙を書きましたよ」
「あの手紙を渡しに行ったの俺なんだがな……」
「えっ……なんか、すみません……」
「ふふふっ、やっぱアズリーナ王女はモテるのねぇー。私を巡って乱闘とか起きないかしら」
「ルクナは全員相手にして治療院送りにしそうだな」
……まぁ確かにそうかも。
学生時代のアズ母かぁ……本気出せばもう少し若くさせる事が出来るんだよなぁ。
今で20代前半くらいだから、頑張れば18歳くらいかしら。
『第2位は1位と1点差……スノーウルフのユウレースリペア』
「……ありがとうございます」「あ、ありがとうございます……」
「「「おめでとうございまーすっ!」」」
おや、第2位は最初のペアか。親戚っぽい男子は悔しそうにしながら礼を言い、女子も申し訳無さそうに頭を下げた。
じゃあ1位は竜のペアかしらね。
『1位は氷雪竜のアッシルスペア。おめでとう』
「よっしゃぁぁ! ありがとうございますっ! ジラっ、俺達最高のペアだなっ!」
「……ありがとうございます」
「「「おめでとうございまーす!!」」」
『優勝したペアにはトロフィーと目録として景品を送ろう。各審査員の点数も載せておくから、慢心せずに努力してくれ』
「はいっ!」「……ありがとうございます」
それって私の点数もバレるって事? えっ……気まずっ。竜のペアにパートナー度1って書いちゃったじゃん。
後で文句言われたら返り討ちにしちゃいそう……
『サーレス公爵様ありがとうございました。王様、審査員を務めて戴きありがとうございます。生徒達に向けて感想など戴けますか?』
『あぁ。アッシルスペア、優勝おめでとう。参加した生徒も良い作品を披露してくれてありがとう。久し振りに参加したが、とても楽しかった。以上だ』
『ありがとうございます。アズリーナ王女も何かあれば』
『はい。とても素晴らしい作品を見る事が出来て、心が温まりました。これからも仲良く楽しい学生生活を送って下さい。以上です』
『ありがとうございます……では来賓のナイトクラウン公国ミラニア侯爵、感想などあれば』
うぉいっ! 私はっ! 私を飛ばすとか酷くないか? ぼっちだから気まずいのはわかるけれど、ここまで来たら飛ばすなよ……ローザ、指差して笑うな。ナナがその指を下ろしてだめって嗜めるとわかりやすくシュンッとした。それをセイランが素早く写真に撮り、うんうんと写真を確認していた。
「ルクナは晩餐会に参加する?」
「ん? 晩餐会かぁ……ぼっちになる予感しかないよね」
「……俺とアズはペアで来賓席、生徒は割り振られたテーブル……だな」
「……やだ」
「……だって、ルクナと居られる時間少ないもん……ウォル様ばっかりズルいもん……寂しいもん」
「ルクナ、頼めるか? 城に泊まっても良いぞ」
「……みんなも良いです?」
「あぁ、もちろん。ペアの席だから……友達のセイランに頼んでみたらどうだ?」
「……」
「……セイランに聞かれましたね。はぁ……ウォルママを呼ばないといけない案件になったのは王様のせいですからね」
「……どういう事だ?」
「セイラン・オレイドスを誘うんですよ? この貴族が沢山居る場で素直に応じると思います? ごめんねアズリーナ王女、絶対拗ねて拗らせるから氷神巫女様を呼ぶよ。あっ、ウォルママ直ぐ来て」
「……お泊まりは譲らないわ」
進行は晩餐会前の自由時間になったので席を立って、注目されながらセイラン達の元に向かい……セイランみたいに腰に手を当ててアゴを上げて見下ろすように高飛車ポーズをすると、セイランも同じく高飛車ポーズをして私の前に立った。そしてパシャリと写真を撮るのを忘れない辺りプロね。
「ヴァン王国オレイドス公爵家次期当主セイラン・オレイドス、これから晩餐会があるの。私のパートナーになってくれない?」
「あら、帝国の英雄ルクナ・レド・ノースマキナに誘って貰えるなんて光栄だわ。貴女ほどの女がパートナー不在だなんて、ノースギアの男達は見る目が無いのね。笑っちゃうわ」
「そんなもんよ。で? どうなの? なってくれるの?」
「ふふっ、答えはノーよ。私に恥をかかせるつもり? カップルしか居ない晩餐会で女同士で寂しくご飯を食べろと言うの? これでも誇り高きオレイドス公爵家の血を引く女よ。笑われるなんて絶対いや。出直して来なさい」
セイランは片方の口角を上げてフッと笑い、私を睨み付けた。
流石、超お嬢様は違うねぇ……簡単に首を縦に振らない。周囲がしーんと静かになり、私達の動向を見守っていると……来賓席の私が座っていた場所に急に現れた氷神巫女が座り、皆が硬直した。
「はぁ……わかった。私の誘いを断った事、後悔してもらうよ?」
「はっ! 良い度胸ねっ! 貴女が私に敵うと思うと思っているの? 真正面から叩き潰してやるわっ!」
「はははっ! セイラン・オレイドス、準備は整った。君の負けだ」
「私が負ける訳無いわ。それなら、見せてもらおうかしら? 私が負けるというその自信をっ!」
私は写真機を見ながらセイランに手を差し伸べると素直に渡してくれたので、アズ母に向かってポイっと投げるとキャッチして私とセイランの間に立った。
セイランさん、これで準備は出来ましたよ。人差し指で真上にぐるっと円を描くように魔法陣を展開し、真下に下げるように魔力を込めて……へーんしんっ! 私を包む光の柱が上がり、スポッと早着替え。アクセサリーを外して男子の制服に着替えて厚底の靴を履いて魔導具を発動し、キラキラ全開モード!
髪を縛って光の柱を消し去ると……
「えっ……」「うそ……」「まさか……」
男子制服を着たクルルの出来上がり。周りが口を開けて呆然とし、アズ母がパシャパシャと写真を撮る姿に誰も突っ込まないくらい、ルクナがクルルになった事が衝撃だったのだろう。
髪を掻き上げ、少し呆れるようなため息をしながらセイランに一歩近付く。
「セイラン、私にここまでさせて……君は悪い子だ」
「……えぇ。貴方をノースギアの民から遠ざけるのが私の役目よ。これで貴方はもっと孤立するわ」
「ふふっ、昔から変わらないね。君は私に一歩踏み出すきっかけをくれる」
「えぇ、もっと褒めなさい。貴方のためならどんな悪い女にもなってあげるわ」
「ふふっ、ありがとう。セイラン、もう一度言う。私のパートナーになってくれない?」
「……仕方がないわね。貴方の女になってあげる」
「えへへ、ありがとね。記念写真撮ろっ!」
「セイランちゃーんこっち向いてー! キャーッ可愛いー!」
「ふふふ……これよこれ、この公の場でクルルを独り占めにする優越感……はぁ……気持ち良い……」
アズ母が興奮して写真を撮りまくっているので、みんなを巻き込んで撮影会でもしようかしら。
エリちゃんは逃げようとしていたがナナが捕まえていたので逃げられず、泣きそうなエリちゃんって唆るのよね……
「酷いよ……くそぉ……格好良い……」
エリちゃんの友達は借りてきた猫みたいにビクビクしていたので、とりあえずツーショットを撮って写真を自宅に送ってあげよう。
アズ母よ、クレイルと並んだだけで鼻血出すんじゃない。
セイランと一緒に来賓席へ行き、ウォーエルと王の前に立った。
「ママー見てー、格好良いでしょー。王様、セイランがパートナーになったのでお祝い下さい」
「各国が探している幻の合成魔導士クルル・マクガレフがわたくしの子だなんて……優越感が凄いわぁ。セイラン、よくやったわ。貴女にはわたくしからお祝いをあげる」
「そういう事か……すまんな……何か、欲しいものはあるか?」
「クルルママ……私の力では手に入れる事が出来ないものが、どうしても欲しいです」
「あら、聞くだけ聞いてあげるわ」
「あっ、なんか嫌な予感」
「私セイラン・オレイドスはクルル・オレイドスの名が欲しい」
「セイランさん、ここで言う?」
「あらあらあらっ! ルクナには恋人は居るけれど、クルルに恋人は居ない。大きな壁と戦うよりも、ずっと簡単な道ね」
「えっ……ルクナ、恋人居るのか?」
「私はルクナの恋人2人に勝つなんて出来ません。でもクルルは別です。私は誰よりもクルルと共に過ごし、共に歩んできました。だからクルルの隣は絶対に誰にも譲らない。その為になら私はなんだってやります」
まぁ、確かにクルルはセイランが最初の友達だし、ずっと一緒だ。普通にセイランが周りにクルルの恋人だって言っているから周りも認めている。
そしてアズ母とウォーエルからの信頼を得ているセイランに敵なんて居ない。
あれ? 後はウォーエルがうんと言えばセイランのプロポーズが成功してしまう状況じゃないか?
「ママ、セイラン、私達はまだ子供だよ」
「そうね、子供だから今の内に決めておかないといけないわ」
「そうね、子供だから親の了承が必要だわ」
「クルルの気持ちも大事じゃない?」
「そうね、私は大好きって言われたわ」
「そうね、恋人だってセイランから聞いたわ」
「仲良しね。クルルに戸籍なんて無いわよ」
「あるわよ。ヴァン王国王妃が作ったものがね。アルセイア王女と結婚させる為だと思うけれど、利用させてもらうわ」
「わたくしの情報網を侮ってはいけないわよ」
「いやいやいや、それって絶対私とアズリーナ王女の前で言う為に温めておいた話だよね? アズリーナ王女っ、クルルがセイランと結婚させられるっ!」
「ん? 良いんじゃない? クルルはセイランちゃん以外居ないでしょ」
「アズリーナ王女っ、大好きっ!」
セイランがアズ母に抱き着いて、アズ母も嬉しそう……可愛い娘が増えるから嬉しいわな。いやいや、私は先にアルセイアとリリにプロポーズしたいのよ。結婚とかって話になったらややこしいのよ。
そこで立ち上がるウォーエルは、仮面の中で笑っているのだろう。ウォーエルってセイランに負けっぱなしだから相当気に入っているもんなぁ……はぁ……
「セイラン、条件があるわ」
「はい、なんでも言って下さい」
「ノースギアに住みなさい。遠距離恋愛なんて許さないわ」
「はいっ!」
「それと帝国学院はそのまま通いなさい。週末にクルルが迎えに来てくれるわ」
「はいっ! 頼んだわよっ!」「いや、それ私だけ大変じゃね? 忙しいのよ」
「アズリーナ王女は、何かあるかしら?」
「私も一緒に住みたいですっ!」
「貴女、家、あるじゃない。サーレスに、立派な、お屋敷が」
近くにサーレス公爵居るんだからさぁ……私を見ながら強調して言われてもよぉー。もっと嫌味を込めて言ってくれ。
「あそこはマクガレフ親子が住んでいるので私は城に居ます。私がどれだけ寂しいかウォル様ならわかりますよね?」
「王都で家買えば良いじゃない。姑と同居なんて嫌われるわよ」
「私が家を買ったらお金の出所はどこだとか税金で買ったとか噂を流されたら大変なんです。じゃあわかりました、ウォル様も一緒に住みましょう」
「わたくしは御祈りがあるの。寂しいなら家でも神殿でも来れば良いじゃない」
「えっ、良いんですか?」
「わたくしとアズリーナ王女はクルルとルクナに関して対等な関係なのよ。貴女の方に分があるのに、何を遠慮する必要があるのかしら? わたくしとアズリーナ王女はこの子の母親なの。むしろクルル、貴女がわたくし達に連絡を怠るからこうなるのよ」
えぇ……なんで私のせいにされるのさ……
こうって何よ。そもそもウォーエルが私を独り占めしようとするからこうなったのよ。先に色々言っておけよ。最初に喧嘩売っておいて味方に付けようとするなんて勝手過ぎん?
セイランを見ると肩を竦めるだけなので、頑張れって事ね。
「ちゃんと朝と夜に連絡しているよ」
「足りないわ。何をするとか何処へ行くとか、誰と会うとか必要なのよ。心配なの」「そうですね。いつも何処に居るかわからないので連絡は欲しいですね。写真付きで」
「そう言われてもねぇ……大体通信の届かない場所に居るから難しいのよね。それに多方面から注文が入っているから忙しいの」
「休憩中に連絡出来ないの? 誰かに手伝ってもらうとか……」
「あー……今度私の作業見せるよ。部品作りから組み立てまで私しか出来ないんだ」
「働き過ぎよ。少しは休みなさい」「そうよっ、気晴らしにお出掛けしましょうっ」
「……屋敷の維持、メイドの給料、神殿へのお布施、ノースギアの税金、他にも色々、固定費だけで幾ら掛かると思ってんの? 全部私が稼いで払っているんだから働かないといけないの。文句はノースギアの法律に言って」
「「……」」
お布施と聞いたウォーエルが上を向き、税金と聞いたアズ母が下を向いた。お布施は結構な額を入れているので神殿巫女から聞いているはず。税金に関してはアズ母は王族だから娘が払った税金で暮らしている罪悪感だろう。
同世代の中で1番お布施と税金払っている自信あんぞ。まじで私は働かないといけないのよ。
貴族だったら地方の税金で賄えるが、私は平民だから自力でお嬢様やってんだ。
まぁでも、私の作品は一発が大きいから本当は結構休みがある。
お互い様だと思うのよね~。私が会いたい時に、母達は忙しいから。
……いや、忙しいのはアズ母だけだな。ウォーエルは暇人だったわ。




