やりたい事は、全部やりたい
「……まさか、貴女に貞操を奪われるなんて思わなかったわ」
「嬉しくてつい……ありがとうございました」
「責任取りなさいよ」
「えっ、責任取って良いの?」
「っ……そういう意味じゃない。私の大事なものを奪ったのだからルクナも大事なものを頂戴」
「大事なものって言われても私の大事なものって友達とかだからあげられないものよ? そうだ、私の魔剣第一号をリアちゃんにあげよう」
メイラさんと試しに作った魔剣は良い感じにぶっ壊れ性能になってしまい、雷を纏う魔剣にメイラさんはドン引きしていた。
まぁそこは武器に魅入られた女だから楽しくなって色々やっていたのだが、目がバキバキで徹夜でやろうとしていたので怖くなって眠らせた。
「馬鹿みたいな剣出さないでよ心臓が止まるかと思ったわ。ルクナの魔剣って作ったの?」
「うん、鬼族の鍛治士と仲良くなってさ。私の技術と融合させたらこうなったのよ。大丈夫、雷の魔法剣が常時発動しているだけだから。素質があれば操作できるから頑張って」
「頑張ってって……本当にくれるの?」
「うん。性能が良過ぎて値段が付けられないからね。リアちゃんの処女はこんなもんじゃ足りないから、また良いの出来たらあげるね」
「いやいやいや、こんな凄いの貰えるなら処女くらいいくらでもあげるわよ」
「ほんと? あのね、もっとシたい事あるの。付き合ってね」
引くな引くな。私は本気だよ。アルセイアのご先祖様ってだけでヨダレ凄いのに、もう色々させて戴けるなんて幸せです。神気が溜まり過ぎて光りそうだわ。
「はぁ……まぁ良いわ。友達が生きているだけでこんなに嬉しいなんて思いもしなかったし」
「言ったじゃん、生きているって」
「初対面が幽霊で信じられると思う? でもまぁ、ありがと。来てくれて……今度交流戦があるから不安だったの」
「ふふふ、リアちゃんが心を開いてくれて嬉しいよ。じゃあ女神らしくリアちゃんの才能を開花させて恩を売っておく事にするよ。ふみゅー……あっ、弓矢の才能増えたよ」
「弓なんて使わないけれど、私の為にありがとう」
「信じていないわね。まぁ一応説明するけれど弓って実際の弓じゃなくても得意になったのよ。ファイアアローとか弓矢っぽいの全般」
「えぇ……そんな事言われたら試したくなるじゃない……ほんと?」
「ほんとよ。才能開花って術が使えるのよ。迷宮核の力を取り込むよりも安全な方法だから安心して」
半信半疑なので暇だったら鬼族の里にご案内しよう。
作った武器の使用感とか知りたいし、ライズは忙しいかもだし……あっ、サーレスに一緒に行こうって言ったけれど、忙しいかしら……というか一度帰らないとセイランに何をされるかわからない。
「……難しい顔、しているわね。悩みくらいなら聞いてあげるわよ」
「ありがと。今後の予定を整理しているのよ。見てこの予定」
「……どこがただの平民よ。私より忙しいじゃない。公務でもあるの? にしても可愛い手帳ね」
「手帳余っているからあげるよ。私って超お嬢様だから人気者なの。まぁ自分で予定を立てたものがほとんどだけれど……そんなに気になる?」
「えぇ……貴女って謎なのよ。それが少しでも解るからこの好機はものにしたいの。この貼ってあるものは何?」
「シールだよ。好きなところに貼れる紙。この手帳にも入っているから使ってみて」
アークイリアは私の手帳をずっと読んでいるので、私もアークイリアの手帳というか日記を読ませてもらった。
……真面目な文章だが、時折不安や悩みが書いてあって本当に友達居なかったのだと思った。おっ、幽霊に会った話も書いてある。ふふっ、ムカつくって書いてあるや。
「……ねぇルクナ、アルセイアに今日も言えなかったって……何を言えなかったの?」
「あー……私ね、あと数年で死ぬんだ」
「えっ……」
「ネクタルで延命したけれど、神位の魔王と戦う予定だからそんなに生きられない……ふふっ、泣かないでよ」
「死ぬなんて、簡単に言わないでよ……悲しいわ……その、魔王と戦わなきゃ良いじゃない……」
「魔王を封印しているのが私のおかぁさんなんだ。だから私がおかぁさんを解放しないと嫌なの。大好きだから」
もっと強くなりたいのだが、本格的な修行場が無い。月の闘技場は保留にしておかないといけないし、迷宮もなんだが怖くなってしまった。過去も下手に動くと過去のマリンさんが来てしまいそうだし……うーん……ルゼル様に相談……いや、そこまで頼るのは駄目か。
という感じの相談をしたのだが、なんか嬉しそうだから腹立つわね。
「強過ぎるのも問題よね。誰も合わせられないなら手加減するしかないし、それこそ意味が無いのよね?」
「そうなの。神気を使って循環させないといけないし、生きるだけで忙しいのよ」
「女神も大変なのね。その氷神回復結界? 他には無いの? ルクナだけ弱くなる結界とか」
「私だけはむずい。道連れになるし、下手に力を封印すると女神の私が死ぬの。んん~~…………強過ぎる武器を作ってみんなで私を総攻撃し続けるくらいしか思い付かない。それならみんなも強くなれる、か」
「これ以上の武器作れるの?」
「うん。それ魔剣だから、神剣にしちゃえば良いのよ。よしっ、ありがとっ! なんか方向性見えたっ! お礼に沢山シてあげるねっ!」
「えっ、いや大丈夫っ! 大丈夫だからっ! アレすると頭真っ白になるからっ! ルクナっ、ちょっ……」
……
……
……侍女のノックで我に還った時には、ちょっとアレな状態になっていたので自主規制。
アークイリアはもうお嫁に行けないとかなんとか言っていたが明日になれば普通に戻っているよ、きっと。
今日は公務で忙しいと言われたので、私1人でメイラ家に戻ってきた。
「あっメイラさんおはようございます」
「おはようっ! 今日は何作る? 剣か? 槍か? 斧か?」
「落ち着いて下さい。先ずは朝ごはんを食べましょう。デスちゃんおはよー」
『おはよ。見て、ナイフ』
「デスは器用だからびっくりしたよ。研磨師として雇いたいくらい」
「流石は私の娘だね。斬れ味最高じゃんっ、包丁セットとか作ったら売れそう」
「あっ、良いね。フレイに売り付けようか……よしっ、デスやるよっ!」
『うん。ご飯、先』
「ところで防具って専門外ですか?」
「そうだね。鬼族は武器しか持たないから。まぁでも、良い防具職人にはまだ会った事無いなぁ……防具も作る気?」
「はい、みんなが私の攻撃に耐えられる防具を装備すれば良い訓練になると思いません? ちょっと人の中では強くなり過ぎてしまって訓練相手に困っているのですよ」
「あぁ……私より強いもんね。良い迷宮あるけど?」
迷宮はしばらく行きたくないので首を横に振っておいた。
わがままですまんね。あれからほんと怖いのよ。どの迷宮が罠かわからないというか、ルゼル様にバレたら怒られそうだし。
そんなこんなで武器を作りながら過去と現代を行き来する生活が始まった。
それから直ぐにナナリーも加わり、区切りの良いところで一旦ナナリーと共に現代に帰る事にした。
「初めまして、ナナリー・エル・ナイトクラウンと申しますっ! これからお世話になりますっ!」
「セイラン・オレイドスよ。よろしく……ルクナ、とんでもない大物捕まえてきたわね」
「ん? 知ってんの?」
「歴史の教科書に載っているのよ。ナイトクラウンの女神教では重要人物で、女神と同列に崇められているわ」
「ほえー、ナナリーちゃん凄いねー」
「えっ、私何もしていませんよ? あれから直ぐにルクナ様の元に向かったので……きっとお父様が何かしたのでしょうね」
にこにことしているナナリーを見て、セイランの手刀が飛んできたが受け止めてペロンと舐めた。
睨まないでー、私の好みど真ん中だからって睨まないでー。
セイランさんの睨みに耐えながら、家のみんなを紹介した。あれ? ローザは? あっ、まだ力尽きているのかしら。
ナナリーと一緒にローザの部屋の前に立ってノックをコンコン……
コンコン……
「はぁーい、ごめん寝ていた」
「起こしちゃってごめんねー。紹介するねー、今日からここに住む事になったナナリーちゃん」
「初めまして、ナナリー・エル・ナイトクラウンと申しますっ! よろしくお願いしますっ!」
「…………ぁっ、よろしく……ローザ、です」
「……? ナナリーちゃん、ローザは前に話したクレイルとして来ているから、クレイルの時はクレイルって呼んであげて」
「はいっ、ルクナ様、すっごい美人ですね……緊張しちゃいます」
「ありがと……ナナリー、ちゃんも、綺麗だよ」
「えへへ、お世辞でも嬉しいですっ」
「……」
……おいローザ、一目惚れしただろ。
キャラがぶっ飛んでお淑やかになっているぞ。戻せ、取り返し付かなくなるぞ。上目遣いすな。私の角度だと睨んでいるようにしか見えんぞ。
あれか? ショートカットに弱いのか? サラシャもショートカットだったよな? 惚れただろ、絶対惚れただろ。この反応私でも解るぞ。
後ろのセイランの動きが止まった気がする……すすすっと後ろに下がってセイランと一緒に眺めよう。
「お世辞じゃない。本当に、綺麗よ。あのね、私の事、ローザちゃんで良いからね」
「「……」」
「はいっ、あっ、敬語もしない方が良いかな? よろしくねっ、ローザちゃんっ!」
「うわぁ……可愛い。あの、良かったら、今度一緒に出掛けない? 都合良い日で良いから」
「うんっ! あっ、すみませんルクナ様勝手に決めてしまって……」
「あぁ気にしないで。ナナリーちゃんの好きなようにして良いから。今後の予定も決めたいからローザと出掛けるのはママと話してからね」
「はいっ! ローザちゃんっ、楽しみにしてるねっ」
「……ぅんっ。ありがとね、ナナリーちゃん」
「……じゃあ早速ママの所に行こっか。セイランも来る?」
「……えぇ。ローザ様、寝ぐせ」
「──っ!」
バタンと扉が閉まったが、閉まる寸前のローザの顔は真っ赤だった。普段クレイルでキラキラさせているクセにいざという時にはモジモジしちゃって……セイランが無表情でナナリーを見て、私の顔を見た。どうすんのって? 自由で良いんじゃない? ナナリーから見て私は崇拝対象であって恋愛対象じゃないし。私に対して恋愛を通り越しちゃった感じで好きだから、まぁローザの入る余地はある。
「まぁ見ていて面白いから応援するわ」
「そうして。青春は寝たきりだったんだからこれくらいは、ね」
「ん? ローザちゃん病気なんですか?」
「昔ね。たまたま立ち寄って私が治したの。今じゃ親友の1人だから信用出来る人だよ」
「ほえー、病気だったなんてわかんないくらいすっごい美人でびっくりしました。すっぴんでアレとかドン引きじゃないです?」
「ナナリーさんも、凄く綺麗よ。ルクナが連れて来るのもわかるくらい」
「そうです? あんまりそういうの言われないから慣れないですね。ルクナ様の方が綺麗なのは確かですっ」
「まっ、それは同意ね。ルクナが一番よ」
「綺麗の種類が違うからそれぞれ綺麗よ。セイランは可愛いくて美人だし、ナナリーちゃんは超美少女って感じだし、私は権力を持った超お嬢様……ローザは超美人って感じよねー」
褒め合いながら真王都を歩き、神殿巫女に手を振って神殿の裏口へ行き、廊下を歩いてリビングへ行くとソファーに座るウォーエルさんが出迎えた。
仮面を被って顔がわからないので、ナナリーの緊張が増した気がする。
「は、初めましてルクナ様のお母様。わたくしナナリー・エル・ナイトクラウンと申しますっ!」
「あら、やっぱりナナだったのね。久し振り。セイラン、いらっしゃい」
「お邪魔していますルクナママ」
「……え? へ? え? ウォーエルさん?」
仮面を取って悪戯に笑う様子に、ナナリーの目が点になっていた。
ウォーエルからしたら千年振りだが、ナナリーからしたら割りと最近会った人で歳も取っていないからというか生きている事自体意味がわからんよね。
「驚いた? 千年後の氷神巫女ウォーエル・ノースマキナが私のおかぁさんなの。似ているでしょ?」
「……ぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええっ!」
「ルクナ、ナナを眷属にしたという事はわたくしの娘にもなるの?」
「んーそうなったら色々大変よ。でもナイトクラウンって名乗れないからノースマキナの方が良いかしら?」
「氷魔法が使えないからノースマキナを名乗るのは難しいわね。ナナリー・エル・ルナで良いんじゃない?」
「ちょっ、と、待って、下さい……ウォーエルさん、なんで生きてるんですかっ」
「わたくしは秘術を使った影響で歳を取らないのよ。あれから色々あって氷神巫女になったの。それから千年なんてあっという間だったわ」
「あぁぁあぁ心臓痛いです……まさかここで会えるなんて……あぁ千年経っても超可愛いですよぉぉ……」
「……ルクナ、ローザ様に勝ち目ある?」
「まぁあるでしょ。ママはライズラブだし」
あると言ったが恐らくナナリーの初恋ってウォーエルなのよね。まぁ、多分大丈夫っしょ。
ウォーエルを交えてナナリーの今後について話し合った結果、先ずは千年後の勉強をする為に家庭教師を付けて私の家で学ぶ事になった。
家庭教師は誰でも良いとの事なので、テシアにお願いしたら引き受けてくれた。
よっしゃっ! テシアが私の家に来るっ! セイランさん脇腹ちねらないで。
「貴女に友達が増えて嬉しいわ」
「青筋立てながら喜んでくれるのね。ナナリーちゃん、勉強が終わったら学校行くなり仕事するなり決めて良いからね。買い出しはローザと行く?」
「ルクナ様と一緒が良いですが……ここでは好きな事をしていた方がルクナ様の為になりますよねっ。お世話になりっぱなしは嫌なので働きたいのですが……どこか良い所ありますか?」
「あぁ私の家で働きながら学校行けるよ。メイド教会に入ってもらうけれど」
「やりますっ! ルクナ様に御奉仕したいですっ!」
「ルクナ、グニアを呼んだ方が良いわ。案件よ」
「メイド服特集? メイド服は各国で業者の派閥があるからトラブルになるわよ。写真だけなら良いけれど、売るのはミカとウルさんに迷惑が掛かるもん」
「ふっ、甘いわね。写真集に決まっているじゃないっ!」
何言ってんのよ。
やだよ、みんなでこっち見ないでよ。そんな気分じゃないからやだっ!
にこやかに、ゆっくりと首を横に振り、一歩踏み出そうとしていたセイランの前に全力のバックステップ。
ウォーエルの目配せで動く神殿巫女よりも速く後ろの扉を開いて廊下を走り裏口の扉を開いた瞬間にイチカさんっ!? 真上にジャンプっ! 結界を蹴ってジグザグに飛び氷神結界に到達するスレスレで真横にダッシュッ!
──氷の壁っ! 誰だっ! ウォーエルかっ! ルクナパンチで砕いて、砕いて、おいおい私の進行方向に氷の壁とかどっから見てんだよっ!
私を逃げさせないつもりだが甘いなっ! 障害が多い方が逃げ癖が高まるんだよっ!
はっはっはっ! 氷で作ったルクナ人形に引っ掛かりよったっ! その隙に魔力を消しながら真下に落ちて雪山に突っ込み雪の中を爆走しながら雪を巻き上げ追加のルクナ人形を直進させて転移魔法を起動。
神殿の上空に転移した。
そのまま逃げても良いのだが、私を妨害した人に勝ち誇っておきたいだけだ。
…………なるほど。千里眼系統の魔法で私を捕捉して、魔法をその座標に飛ばす……これは空間属性だな。
「……流石はルクナ様ですね。追い付けませんでした」
「私を追っていたのはイチカさんでしたか……じゃあ私の勝ちという事で戻りましょうか」
「……てっきりそのまま逃げるのかと思いましたが、良いのですか?」
「はい。どちらにしても捕まるだけなので」
「販売はしないので、気軽に参加して欲しいとの事ですよ」
「そうですか」
「「……」」
私の雰囲気にイチカさんは黙って先導し、リビングに戻ってきた。
みんなホッとした表情をしているが、まだ逃げないよ。話し合ってから逃げるのでねっ、急にふらっと居なくなる私が悪いのだが謝らないよっ。
拗らせ女子の自覚はあるからねっ。
「ウォル様、ルクナ様に負けました」
「そう……流石は私の娘ね」
「ねぇセイラン、写真集の勉強をしてからにしない? ちきゅうに行って写真集とか買って来るからさ」
「1人で行くの?」
「うん、移動がめんどいから1人の方が気が楽でさ。お土産は買ってくるから」
みんな思い立ったら直ぐに行動する癖があるので、写真集の見本を提示したら大人しくなってくれた。
ティナちゃんに会うついでにアズサにも会いたいし。帰してから数年経った時代だけれど、まぁ引っ越して居なければ会えるでしょ。
よしっ、何からやろ。




