同世代恐怖症がレベルアップした気がする
メイラさんは一度里に帰るらしいので、拠点の宿を教えておいた。ライズと観光案内を見ながらゆっくりしていると、ナナリーちゃんが戻って来たので部屋に入れた。連絡不要で場所がわかるって楽よね。
「ルナ様っ、一度城に来て女神っぽい事をしてくれませんか?」
『まぁ、見えるようにはしないけれど良い? ライズ、行こー』
「ゆ、ゆっくりで、良い? 筋肉痛エグいんだわ」
「んー? なんかしたの?」
「ルクナが憑依して暴れてさぁ……」
『暴れていませんー。ちょっと格闘戦をしただけですー。運動不足じゃないの?』
「運動してますー。殴り合いとか馬鹿じゃないの? 死ぬかと思ったわっ!」
「誰と戦ったんですかー?」
『鬼族のメイラさんって知っている?』
「えーっ! 見たかったですっ! 鬼人メイラってすっごい強いんですよっ!」
『いやぁ強かったよ。近々鬼族の里を案内してくれるから本体で来るねー』
メイラさんは相当有名人みたいね。普段剣を使っているが、拳で戦う事は無いみたいだから悔しがっていたな。子供嫌いと言っていたが、多分話した感じ子供好きだぞ。多分怪我をさせたくないから遠ざけているだけだと思うし、人間とは仲良くしていなさそうだ。ナナリーちゃんは他の人が城で講師として呼んだくらいの交流らしく、仲良くは無いみたい。
『うーん、車輪がむずいよねぇ……』
「……ルクナ、尻痛い」
「昔おばあちゃんのを押したなぁー」
ライズがわがままを言うので車椅子を作製してみた。椅子に車輪を付けただけなのだが、ゴムじゃないからガタガタ言うわね。うーん、あっ、良い事を思いついたよ。
『床は私が凍らせれば良いわね』
「ズレたら傷付かない?」
「わぁーはやーいっ! あっ……」
椅子にブレードを付けて、床を凍らせてソリにしてみた。スイスイ行くのだが、少し操作をミスると急ブレーキが掛かってライズが転げ落ちる。
「るくなぁ……痛いよぉ……」
起きれ。
『これ完璧じゃない?』
「いやこれなんか恥ずい」
「……馬車呼びます?」
ライズを椅子に座らせて氷の兵士が四隅を担いでお神輿状態にしてみた。これなら尻が痛くないし転げ落ちない。完璧だが目立つ。
こんな事をしているが、不審者扱いされずにこの街の人達は普通にナナリーちゃんに手を振ったり声を掛けたりして正直羨ましい。
私がジェラっていると誰か来たな。騎士団の人かしらね。同世代の男子なので、すすすっと離れた。
「姫さまー! そちらの方が女神様ですかっ!」
「違うわ、彼女は私の友達よ。ルナ様はそこの屋台で食べ物を見ていらっしゃるわ」
『ライズー、イカ焼き食べたーい』
「じゃあ本体で来てよ」
「お気に召された物があれば買って参りますっ!」
「いや、大丈夫よ。ルナ様の欲しい物は私が買うから」
『今繊細だからきょわいの。同世代の視線がきょわいの』
「話を聞く限りじゃ断り無しに魔眼で視るのはマナー違反だよねー。あっちの常識なんて知らんけど」
「あの、女神様はどちらに?」
「貴方じゃ見えないわよ。ライズ、夕食食べていく?」
『あっちじゃ普通なのかもね。城の探索したいから食べて来て良いよー』
「うん、食べたい。ナナの部屋泊まって良い?」
「良いの? 嬉しいっ! カイルス、貴方がここに居ると男嫌いのルナ様が近くに来られないの。離れてくれる?」
「し、失礼しましたっ! ですが姫様と女神様の護衛をと……」
『そういえば私も姫様みたいなもんよね。ライズー、ノースギアでの私の扱いどうだった?』
「あーアレねぇ……腫れ物を扱うみたいで嫌だったな。いきなり祈られると困るよね?」
今も国民から手を振られて笑顔で返すナナリーを見て、自然とため息が漏れた。
素直にいいなぁ……って思う。可愛い子供とか嬉しそうに手を振ってさ……私の時なんて親が子供の頭を下げさせて泣いていて、次にその子に会った時は怖がって泣きながら頭を下げられたよ。私が泣きたいさ。
絵に描いたような姫って憎いなぁ……いや羨ましいなぁって思うが、日頃の行いなのはわかっているのだよ。
人見知りを直せたらなぁ……いや羨ましいと思うのはこの瞬間だけな訳で、普段はどうでも良いって思っているから別に良いやって思うのが駄目なのよね。
「護衛なんて失礼な事を言わないで。ルナ様はこの世で一番お強い方なのよ」
「も、申し訳ありませんっ!」
『己の葛藤に打ち勝ったよ』
「開き直ったね。とりあえず今更だけど筋肉痛治してくれない?」
「とりあえず歓迎会なんてしないでね。ルナ様は騒がしいのが苦手なの。報告に行ってくれる?」
「はっ!」
『えー弱っているライズを見てニヤニヤしているルクナちゃんの純朴な気持ちはどうするのさ』
「穢れまくりな素直な気持ちは純朴をかすった程度だよ。私の回復魔法全く効かないとか何したのさ」
「ルナさまっ、会談が終わったら私は完全にルナ様のものになりますっ」
『回復反射ってあるのよ。じゃあナナリーちゃんウチ来る?』
「解除してよ……てか私もルクナの家住みたい」
「行きますっ! なんでもしますっ!」
『ライズが住んじゃうと私の歴史が変わるのよ。一応ライズって私のご先祖様よ? 回復反射解除」
「ヒール……あーやっと治ったぁ……それ教えてね」
城が見えたがその前にナイトクラウン騎士団があるエリアに入り、大きな門をくぐった。城の人の通学とか大変だなぁと思いながら歩いていると、城から騎士を連れた女子が歩いて来て胸に拳を当てて敬礼をした。うん? ちょっと性格の悪い感じが私のタイプだな……私やライズくらいだから妹かしら。
「お姉様、待ち切れずに来てしまいました。エイラ・エル・クラウンと申しますっ! そちらの方が女神様でしょうか?」
「いいえ、彼女は私の友達よ。ルナ様はエイラの目の前にいらっしゃるわ」
『めっちゃ可愛いねぇー。ちょっと性格悪そうなところがまた良いね』
エイラちゃんが上の方を見ながら私に手を差し伸べたので、神気を込めた手で握手してみた。
「──っ! 女神様、なのですか……なんと神々しい温もり……あっ……」
「ルナ様のご慈悲に感謝してね。普通は触ってもくれないわ」
『ライズ、これやればご飯食べられるかもっ、私天才だわ』
「途中でストンとすり抜けるに1ゴルド」
「お姉様、どうすれば女神様とお話が出来るのでしょうか……」
「ルナ様の気が向いたら話せるわ」
『神気を口から喉に込めて胃を通って……うんこまで神気を込め続けないとどこでもトイレが使えないじゃん』
「ふっ、私の勝ちだね」
「……? ご友人はルナ様とどんなお話を?」
「……神の力について話しているわ」
『今お金無いもんっ。代わりにチューしてしんぜようっ。ちゅー……すり抜けたわ』
「期待した私の純情返して。ナナ、怖いから血走った眼で見ないでよ」
おぉ凄い眼だ……まだ神気を込めても手しか触れないから、いや手で触れるだけ素晴らしい。ナナリーの頭をなでなですると、鼻の穴が広がった。妹の手前だらしない顔が出来ないけれど我慢出来ない感じがそそるね。
「……貴女、お名前は?」
「ライザだよ。よろしく」
『ナナリーちゃん、エイラちゃんと仲良いの?』
「うーん、あんまりですね。エイラは兄を慕っていますし……兄弟多いんですよ」
「ライザ……? お姉様と対等に話すなんて……どこの貴族?」
「聖女ライザと言えばわかる?」
『ふーん、エイラちゃんも姫騎士なの?』
「まぁそうなりますね。貴族や有力者達に人気ですよ」
「──なっ! 貴女が聖女ライザなのっ!? もっと大人だと思ったわっ!」
「よく言われるね」
『モテそうねー。ナナリーちゃんって婚約者居るの?』
「いませんよ。試練が終わってから縁談とか始まるので……ルナ様と出会わなかったら今頃誰かと婚約していました」
「お姉様っ! 聖女ライザとご友人だなんてどうして言ってくださらないのですっ、パーティーの準備を急がないとっ!」
「パーティーなんてしないわよ。報告会だけして解散するわ」
『1人っ子だから憧れたけれど、世の中の兄弟や姉妹って思っているほど仲良くないよね』
「そんなもんじゃない? リアちゃんの兄妹も仲悪いし、ミナもそんなにだよ」
おっ、ナナリーとエイラちゃんがパーティーをやるやらないで言い合いになっているな。やれやれー喧嘩しろー。
「何を言っているのですか? 我が国の士気を高める好機なのですよっ! 女神様と聖女ライザが来てくださっているのに何もしないおつもりですかっ!」
「来てくださるだけで申し訳ないと思っているのに私達の都合で貴重な時間を使わせる訳にはいかないわ」
「それでも歓迎しないのは失礼ですっ! お姉様は何もわかっていないわっ!」
「私の優先順位はルナ様が一番なの。今後の予定はお父様に伝えてあるし、了承してくれたわ」
「それなら私がお父様に進言してきますっ! お兄様の為でもあるのにっ!」
エイラちゃんはぷんすか怒って城に走って行った。ナナリーのため息が普段の様子を物語っている。
客人の前でキレんなよというのが感想だ。
『ところで、女神っぽい事ってどんな事?』
「女神パレスは聖山マリウスを輝かせた伝説がありますが……光るだけとかルナ様なら余裕ですし、それ以上ならなんでも良いかと」
「ルクナならあの山ぶっ壊すよね。女神パレスって戦いの神でしょ? 魔陣の鎧で良いんじゃない?」
『じゃあ戦乙女になってエイラちゃんをボコボコにすれば良いのね』
「武勇伝に改変されるのでやらない方が良いかと……先ずは私がルナ様の力を見せますので、それ次第になりますね」
「あんな子も嫌いじゃないけどねー。あぁそういえばここの王子からお見合い写真送られて来てたわ。送り返したけど」
聖女ブランドって千年経っても人気よね。私も縁談が嫌で引退したし、そもそも聖女試験受けていないし。
城に入ると直ぐに公爵の居る間に通された。ナイトクラウン公国だから公爵だが、王国と公国の違いなんて知らんな。勉強していないからねっ!
豪華な鎧を着たオジサンが座っていて、部屋の横には横並びに色々なオジサンが立っていた。きっと豪華なオジに近い程偉いのだろう。
エイラちゃんと他の兄弟達? は豪華なオジサンの後ろに控えている。10人くらい居るが多くね? 子沢山というよりも端に立っているのはお母さんらしき人が3人……つまり第一夫人やら第二夫人やらで派閥がありそう。どれがナナ母だ?
ナナリーが部屋の中央で跪き、次いで迷宮で会ったお姉さん魔法使いと戦士のお姉さんが後ろに跪いた。待っていたのね。
「公爵様、私ナナリー・エル・クラウンは女神の試練を終え帰還しました。こちらが迷宮核です」
「「「おぉ……」」」
オジサン達が唸るのはその大きさだ。赤ちゃんよりも大きいから、一目で超位迷宮だとわかる。エイラちゃんが悔しそうに顔を歪ませていた。
至近距離に私が居ると思っていないのかぶつぶつと文句を言っている。そのお口をお口で塞いでやろうか?
「ナナリー、ご苦労であった。これにて終わりたいと思ったが、願いがあると聞いている」
「はい。今回この迷宮を攻略する際、女神ルナ様にご助力戴きました。私の願いは、女神ルナ様の騎士として生きる事です」
……オジサン達がざわめいて、「なんと……」「女神様だって……」などなど結構わざとらしいわね。事前に聞いていたくせにと思うがこういうものだから仕方がない。
「女神の騎士と言うが、それを証明出来るのか?」
「はい。女神ルナ様の加護を授かり、力を得ました……しかしここでは狭いので外で力を見せたいのですが、よろしいでしょうか?」
「あぁ、女神の力を示せたら望む通りにしよう」
ナナオジは立ち上がり、みんなそろって城の訓練場へ。
やや台詞っぽいのは対抗勢力も居るからだろうねー。パフォーマンスは大事だし、きっとナナリーの願いは了承済みでみんなを納得させる為ね。エイラちゃんは納得しないだろうけれど。
因みに後ろで棒立ちのライズに誰も突っ込まないのは私のボッチスキルを付与しているからだ。
『ねぇライズ、ナナリーちゃんが機動天使になったら相手してあげたら?』
「えー、ルクナと遊んでたせいで訓練してないからルクナブレイクで死ぬよ?」
『私のせいにしないでよ。そういえばあの迷宮の核と宝箱収納に入れっぱだわ』
「あーあの時の? 核は誰に使うの?」
『2つあるから、1個はセイランにあげてもう1個は親友にあげるかな。ライズはこの前取り込んだばかりだから危険よね』
「私はアレで充分だよ。あっ、エイラちゃんがキョロキョロしてるから私の事探してそうだね」
神気でぼっち性能を上げているせいで本気で探さないと見つからない。居るという認識はあるけれど何処にいるかわからないからまぁ良いやって気持ちになるから、エイラちゃんがライズを探しているのは素直に凄いと思う。
訓練場に到着すると、早速ナナリーが力を解放した。
身体が浮き上がり、純白のロボみたいな魔陣の鎧を身にまとうと全員絶句していた。
「「「……」」」
そりゃビビるよね。迷宮に行って帰ってきたら10メートル超の鎧を着てそれを超える大剣を持っていたら……ナナリーがこちらを見ているので、立体魔法陣を作成し戦乙女の鎧を着て、顔は空洞なので仮面を被って白い翼を飾りにしながら空中に立った。
お付きの魔法使いと戦士が跪いて祈りを捧げると、私が女神だと認識したようでナナオジも跪いて祈りを捧げていた。
「ルナ様、ありがとうございます」
『なんか的でも作る? 魔法合成・巨人氷像』
ナナリーを超える大きさの氷像を作ると、ナナリーが大剣を構え……
「神技・ルクナブレイクッ!」
簡単に一刀両断。
氷が崩れ、貴族達が急いで後退した時にルクナブレイドを出して切先をナナリーに向けた。
『よーし、撃ち込んで良いよ』
「はいっ! 神技・ルクナブレイクッ!」
『おぉー練度が上がっているねぇっ。結構練習した? もういっかいっ!』
「毎日ルナ様の事を考えていますからっ! ルクナブレイクッ!」
『連発出来そうねっ! 3連撃っ!』
「はいっ! 3連ルクナブレイクッ!」
巨大な剣の一撃を防ぐ度にオジサンが吹き飛ぶ衝撃波が発生して、訓練場も荒れ放題。ナナオジは腕を組んで立っているから、まぁお強いのでしょうね。
これだけやれば良いかしら。土魔法で訓練場を整地して、すちゃっと着地。
ナナリーが起動天使を解除して私に敬礼をしたので、私も戦乙女を解除した。
『こんなんで良い?』
「ルナ様、私の為にありがとうございました。公爵様、これが女神ルナ様に授かった力です」
「……うそ、うそよ……こんな力……お姉様のくせに……」
「……驚いたな。ナナリー、本当に女神の騎士になったのだな……」
「はい。準備が出来次第女神ルナ様のお住まいに身を置くつもりです」
「そう、か。ここはお前の家だから、いつでも帰って来て良いからな」
「お父様……感謝いたします」
「それと、女神ルナに聞きたい事があるのだが……女神パレスと交流はあるのか?」
「無いそうです。ルナ様はこの世界を守る竜神達と友達ですが、それ以外の神に会った事は無いと」
「竜神が居るのか……では、女神パレスは存在するか?」
「「「──っ!」」」
そんな質問しても良いのかしら。存在はしないと思うけれど、居ないと確定している訳でもないし。
「……神の痕跡を辿って、何もなければ存在しないと仰っています」
「では、痕跡を辿って欲しい。そして聖山マリウスの調査をお願いしたい……魔物が出たのだ」
「魔物が……ですがルナ様が聖山の調査をするとルナ様の聖山になってしまいます」
「そうか……それでは国民に悪いな。詳しい話は自室でしたいが……どうだろう?」
「良いそうですが、人数が多いとルナ様が嫌がるので同席出来るのは最少人数でお願いします」
「わかった。では夕食後で良いか? よし、解散しよう」
かいさーん。
ナナオジが城に戻っていくと貴族達も戻って行き、残ったのは兄弟達だった。
兄弟達はナナリーがどうやって女神の力を得たか気になるが、女神が何処に居るのかわからないから困っている感じだった。
『ナナリーちゃん、なんかすんなり認められたわね』
「そうですね。流れは打ち合わせ通りなので、ルナ様のお蔭で面倒な人達を黙らせる事が出来ました。でも聖山の調査は良いのですか?」
『うん、迷宮化していたら面白そうじゃない?』
「面白いですけど、攻略するんですか?」
『しないよ。それはナイトクラウンの仕事だもん。あっ、夕食本体で食べたいから包んでくれたら嬉しいな』
「もちろんです。私の部屋に行きましょうか」
ナナリーが城に向かおうとすると、エイラちゃんが前に立ちはだかった。ふむ、良いねその悔しさに満ちた眼。嫌いな姉が注目されて腹立って仕方がないって顔がまた良いね。
ナナリーもドヤ顔をしているから、火に油を注いでいるわ。良いぞーやれやれー。
「……お姉様、その力はどうやって手に入れたのですか?」
「ルナ様に戴いた力よ。少し休みたいからもう良い?」
「いいえ駄目ですっ! その力はナイトクラウンの為に使うべきですっ!」
「いいえ、ルナ様の力はルナ様の為だけに使う。ルナ様はそれ以外を望まない」
「声も聞こえないのに信じられると思っているのですかっ! 本当は女神なんて居ないのでしょうっ!」
「はぁ……別に信じる信じないは自由よ。お父様は形だけでも信じてくれているからそれで良いじゃない。兄弟が多いから私が居なくなっても誰も困らないし」
「……お父様とどんな取引をしたの? あの迷宮核は幾らで買ったの?」
「……? 何を言っているの?」
「聖女ライザから買ったのでしょ? そうよ、そうに違いないわっ! あの騎士も聖女ライザよね? 何が目的なのっ!」
エイラちゃんの妄想が爆発しているわね。ライズをぼっちスキル全開にしていた事が仇になったか。ナナリーが対峙した戦乙女は聖女ライザで、迷宮核も聖女ライザが持っていた物を買った。ナナリーの機動天使はスルーされているが、きっと聖女ライザから教わったものだと言いたいのだろう。
ナナリーは私に迷惑かけまいとしているから1人で悩んでいるが、別に国を出るからどうでも良くない? と思っているのは私だけだろう。ライズも困った顔をしているし、こんな事で私が神気を出して顕現したらナナリーの罪悪感が凄くなってしまうよね。
「つまり、私は帝国へ行って聖女ライザに取り入って攻略をせずに迷宮核を手に入れたと」
「えぇそうよっ! お兄様方もそう思いますよねっ!」
「まぁ……そう考えられない事もないが……」
「はっ、お兄様方も私と同意見ですね。嘘吐きは重罪ですが、国民に周知していない今ならまだ間に合いますよ? 正直に言ってもらえますか?」
「ふぅん……全員エイラと同じ意見という事で……良いのですか?」
「「「……」」」
ナナリーが殺気を撒き散らしながら兄弟達を冷めた目で見詰めると、皆が口を閉ざした。
閉ざしたのは私がナナリーの後ろで神気を垂れ流しにしているからで、エイラ以外喋りたくても怖くて喋れないからだ。
私が手助けしてしまったからナナリーの拳が強く握られた……お礼は身体で返してもらおう。
ライズがナナリーの隣に立ったので、優しい私はぼっちスキルを解除してあげようかしら。
……あっ、騎士の精霊だ。ナイトクラウンだから騎士なのかな……全身鎧で私の膝くらいの身長だから可愛いわね。お持ち帰りしちゃ駄目かしら。
「私は聖女ライザ。家族の問題に口出しするつもりは無かったけど、友達を嘘吐き呼ばわりするのは見過ごせない」
「聖女ライザ……貴女、本当に聖女ライザなの?」
「は? これが聖女証だけど、これでも嘘だと言うのなら君を庇えないよ」
「偽造なんて簡単でしょ?」
あっ、珍しい精霊に気を取られていたらエイラがマジヤバな事を言ったぞ。
周りの兄弟もギョッとした目で見ているが私の神気で喋れない。
聖女に無礼を働いたら一般人なら重罪、貴族なら家がヤバくなり、王族なら良くて遠くに飛ばされる。
聖女証を出してしまったので、ライズは聖女としてこの場に立ってしまった。
あーあ、今は兄弟達と騎士達が聞いただけで大丈夫だが……
「一大事と来てみたがなんの騒ぎだ……ナナリー、エイラ、これはどういう状況だ?」
「お父様っ! この者達を罰して下さいっ!」
私の神気でナナオジを釣ってしまったじゃないか。
騎士の精霊がナナオジの方に行ったので私も行こう。ナナオジとナナリーの間に立ったので、しゃがんで話し掛けてみた。
「罰する? 何があったんだ?」
『精霊さん、こんにちは』
『あぁやはり視えるのか。女神がなんの用だ?』
「迷宮を攻略したと嘘を吐き帝国で迷宮核を仕入れ、偽物の聖女を連れて来た罪ですっ!」
『観光だよっ。ねぇねぇ女神パレスって知っている?』
『あぁ……それは我が友の事だな。昔、あの山に封印されてしまったのだ。それ以来封印を解く方法を探しているが……見つからなくてな』
封印……精霊でも解けない封印、か。友達を助ける為に長い間ここに居たのか……あの山に封印されているから聖山になったのかしら。気になる……気になるから今から行きたい。
「……どういう事だ? ナナリーが嘘だったと言ったのか? ナナリー、説明してくれ」
『そうなんだぁ……私が手助けしようか?』
『……良いのか? 何も返す事は出来ないぞ』
「……エイラと兄弟達が私を嘘吐き呼ばわりしているだけです。全員エイラと同意見だそうで、心底がっかりしています……それに、私の友である聖女ライザを侮辱しました。私は兄弟全員を大教会に訴えようと思います」
「「「──っ!」」」
「っ! なんだとっ!」
『良いよ良いよ。友達とあの山に行く予定だったから一緒に行こ。ライズー、ナナリーちゃーん、女神パレスはあの山に封印されているみたいだから今から行こー』
「空気読みなよ……ルクナらしいけどさぁ……ナナ、行くよ」
「ルナ様……流石です……お父様、この話はまた今度にしましょう。ルナ様が女神パレスが封印されている場所を掴みましたので行って参ります」
「は? 封印だと? 俺も行って構わないか?」
『良いよー、めんどいからナナパパだけね』
よーし山登りしよー。
エイラが何か言おうとしていたがちょっと黙っていてね。圧力を掛けると兄弟達は膝を付いて動けなくなった。
すまんね、楽しく山登りしたいのよ。




