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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ノースギア学院編

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329/363

ルクナとすれ違ったデスは……

 

 時間は少し戻り、ルクナと入れ違いになってしまったデスはルゼルの屋敷に転移していた。

 色々な花が咲く庭園を見渡したが、誰も居ない。

 下手に散策をして気に触るような事にならない為に、庭園の椅子に腰掛けた。


 ……しばらく待つが、庭園から見える廊下を歩く人も居ない。待つ事には慣れているからルゼルが来るまで待つ事にした。

 ルクナを直ぐに帰してくれたお礼をする為に、何をプレゼントするか考えながら。


『……』

 1ヶ月、2ヶ月と待っていたが誰も来ない。ここは本当にルゼルの屋敷なのかと思うくらい静寂に包まれていた。

 それでも転移した時に庭園でルクナが居た痕跡があったから間違いない。しかし本当に誰も来ないから逆にルクナを心配させているのではないかと不安になっていた。

 実際はルクナが召喚陣を帰還陣を合成させて帰ったから、心配はしていないのだが……

 それからまた待っていると、庭園に次元の乱れが起きて屋敷の主人が帰ってきた。直ぐに地面に正座をして頭を下げた。


『ぁー……やっと終わったぁ……ん?』

『この度は、申し訳ありませんでした。黒金様、お詫びにこちらをお受け取り下さい』


『…………ぁっ、ゃべ。ごほんっ、少し待っていてくれ』

『はい……』


 ルゼルが地面に正座しているデスを見た瞬間、何かを思い出したように足早に庭園から出て行き、しばらくしてメイド達が急に現れ屋敷を走り回っていた。

 デスは走るメイド達を眺めて、何か問題が起きたのかと思っていた。


『…………すまない。我とした事が失念していた』

『……? 何の、事でしょうか?』


『いやだから、ルクナの事だが……』

『い、いえ……主様を帰して戴きありがとうございました』


『……帰して?』

 ルゼルはルクナに出るなと言ってから出掛けてしまい、しばらくの間その事を忘れていた。そして帰した事に対して礼を言われて困惑している時……ヴヴヴ、ヴヴヴ、とルゼルに連絡が来た。


『あっ、やっと繋がった。おかぁさん今大丈夫?』

『今は来客中だが……どうした?』


『えっとごめんね、ルクナちゃんの事で相談があって……』

『ルクナ? 会ったのか?』


『うん。パンパンで働いていてさ……怒らせちゃったみたいで、居なくなっちゃったんだ……帰る手段があるって言っていたけれど、本当に帰れたのかなって……おかぁさんの所に居たりする?』

『……ちょっと整理させてくれ。なぜパンパンで働いていたんだ? 我は外に出るなと言っていた筈だ』


『え? あっ、なんかアテアちゃんが連れて来ちゃったみたいで……もしかして大事なお客さんだった?』

『……あぁ。ここで療養させるつもりだった……デス、すまない。ルクナに無理をさせてしまった』

『……謝るような事は、ありません。お心遣いに感謝致します』


 デスはどこかで働かされて怒って逃げるなんてルクナらしいなぁ……と思いながらメイドが淹れてくれた紅茶を飲んで、絶対的な強さの象徴である黒金がルクナに療養させようとしている事をおかしく感じていた。

 実際ルクナが帰っている事はわかっているので、最悪殺されても良いかぁとも思っている。


『そこに、ルクナちゃんが居るの?』

『いや、ルクナの従者が居る。デス、娘が同席しても良いか?』

『えぇ、黒金様のお子様と同席出来るだなんて光栄な事です』


『……本当にそう思っているのか? いやまぁありがとう。アスティ、来てくれ』

『わかった。あの、ヘルちゃんも良い? 責任感じていて……』


『あぁ、良いんじゃないか? 切るぞ。デス、椅子を用意しようか』

『いえ、黒金様のお屋敷に居られるだけで光栄ですのでここで充分でございます』


 地面に正座しているデスが断ると、ルゼルはデスを持ち上げ赤子を持つように抱っこをした。

 そして降ろされる事はなく、そのまま椅子に座りデスの頭を確認するように撫でていた。


『……よく出来ているな。あの歳でここまでやれるのは異常だぞ』

『主様は……いえ、お母様は拘りが強いので。この腕輪もお母様の作品なので是非……ふふふ、素敵です』


『流石に代金は払うぞ。これは……まさか魔法でこの細工を……はぁ、こんな事ばかりしているから寿命が無いんだ。しかし、良い仕事をしている』

『……はい、本当に……心の籠った物を作って戴けます。流石は黒金様ですね、寿命の事までわかるだなんて』


『まぁな……望むのなら、ここで療養しても良い』

『……どうして、そこまで気を向けて下さるのですか?』


『少しだけ記憶を視た。それだけだ』

『ふふふ……そうでしたか。お母様に、黒金様には甘えて良いと伝えておきます』


 ルクナは甘えるなんて畏れ多いと言うだろうが、デスは理解者が増えて素直に喜んだ。

 少し和やかになったところで、庭園に2人の少女がやって来た。ルクナよりも年上で、少し困った表情の銀髪の少女と落ち込んだ表情の金髪の少女だった。

 2人はルゼルが人形を抱いているのは初めて見たので驚いていたが、デスが笑ったのを見て向かいの椅子に座って挨拶をした。


「初めまして、アレスティアと申します」「ヘルトルーデと申します……」

『デスです。ママの、お友達?』

『ふふっ……』


「……えーと、違い、ますよ。おかぁさん、この方がルクナちゃんの従者さんで良いのかな?」

『あぁ、従者というよりルクナの娘だな』

『お友達じゃないなら、ママに、構わないで』


 デスは正の気が強い2人を見て、ルクナの友達にはなれないと判断していつもの口調で拒絶した。

 2人とも容姿端麗ではあったが、ルクナの方が可愛いと思っているのでお世辞すら言わずプイッとルゼルの胸に顔を向けた。それを見て2人は困惑していた。心のある人形に対してどう接したら良いかわからないからだが、話がちゃんと通じるかの不安が高かった。


「あの、療養って……ルクナは病気だったの、ですか?」

『…………』

『……くくくっ、デスはヘソを曲げてしまったようだな。我が答えよう……ん? なに? 友達じゃないから答えなくて良い、だそうだ』


「私、ルクナと仲良くしたかったけれど……全然心を開いてくれなくて……ちゃんと話がしたいのです」

『必要無い、ルクナはお前達に興味が無かっただけだ。だからルクナの事は忘れて日常に戻れ』


「でもっ……忘れられません……働いている時のあの笑顔は、どうしても忘れられない……お願いします……ルクナの気持ちが知りたいです……」

『そうは言ってもな、帰ったんだろ? 我が行く訳にもいかないし、デスを帰してしまったら絶対戻って来ない……なに? そもそもルクナが何者でどんな生き方をしていたかも知らないのに何言ってんだボケってデスが言っているからな? 我じゃないからな?』


 デスはルゼルと話したいので2人に帰って欲しかったが、どうしてもルクナと話したい様子だった。デスとルゼルが頼めば会ってくれるだろうが、ルクナの嫌がる事はしたくなかった。2人の様子を見るにルクナは相当怒っていたはずだから。


「「……」」

『……ヘル、どうせ魔眼を使ってもルクナの内面が視えなかったんだろ? 縁が無かっただけだ。深追いしても良い事なんてないから関わるな』


「でも……アスティ、どうしたら良いかな」

「うーん……ねぇ、おかぁさんがルクナちゃんを気に掛ける理由が知りたいんだけれど……何かあったの?」

『素直に応援したいと思っただけだぞ。質問には答えたから一旦退いてくれ。デスに話があるんだ』


「話が終わるまで待ちます……お願いします」

「おかぁさん……お願い」


 退けと言っても帰らないので、デスは2人を宝石の瞳で睨み付け……2人に聞こえるように喋った。

『黒金様、居ても構わないのでお話をお願いします』

急にデスが雰囲気を変えたのは拒絶の意味で、ルゼルは肩を竦める事で2人に黙っていろと伝えた。


『わかった……あの竜神……マリーナレドは何が目的なんだ? わざわざ迷宮まで作ってルクナを殺そうとしていたじゃないか』

「っ……」

『おかしいと思いましたが……やはりマリンの迷宮なのですね。恐らく、迷宮内で異界の天使の封印を解くつもりだったのでしょう。お母様が死ねば、異界の天使はお母様の能力を有して復活します。そうなれば誰も勝てませんが、お母様を迷宮に縛り付け迷宮の主として使役出来るのなら話は変わっていきます』


『ふむ、理論上は可能だが危険じゃないか? 異界の天使はそんな簡単なものではないし、天使は迷宮の外にあるだろ』

『良いのですよ。お母様を通じて世界を壊さないという命令だけすれば良い……ここからは私の妄想ですが、世界の団結を狙っているのではないかと思っています』


『団結をして良い事があるのか?』

『はい。沢山の想いの力を具現化した強力な神器……月の涙が欲しいのかと。竜神が拠点にする月の大聖堂で色々調べましたが、月の涙に関するものが多数出て来ました。月の涙があれば思うがままの事が出来るようです。本当かどうかは知りませんが』


『なるほど……もし、本当に月の涙が目的なら我が竜神を殺す事態になる。とだけ言っておこう』

『そうですか……ふふふふ、お母様には絶対に月の涙は作らないでと言っておきますね』


 デスはおろかルゼルも、ルクナなら月の涙を作ってしまうかも……と不安になってしまった。

 この話をルクナが聞いていたら、こっそり作るだろう。

 想いを集める道具を知っていて、錬金術での作り方が知っているのだから。


『あの性格なら……作るだろうなぁ……話は終わりだ。そうだ、パンパンに行ってみるか? パンケーキは美味いぞ』

『いえ、ノースギア支店には行った事がありますのでお気遣いなく』


『……ふふっ、そうか。デスの世界にもあるものな』

『まぁ、転勤があればお母様に偶然出会う事もありそうですね……ふふふふ』


わざとノースギアにパンパンの支店があると言ったのは、デスの優しさではなく嫌がらせだ。ルクナはノースギア支店には入らないだろうから。

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