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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ノースギア学院編

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328/363

最初からこうしていれば良かったよ

 

「いらっしゃいませーっ、2名様ですねっ。こちらへどうぞー」

「ぅぁっ、可愛い……」「ぅぁっ……ルクナちゃん……」


 何ヶ月経ったかわからないが、私はパンパンの従業員として精力的に働いていた。一応給金も発生しているようで、給料日にお金を戴いた。

 ヘルさんから聞いたが、ルゼル様はこの世界の女神様らしい。でも忙しいからこの世界に全然居ないと言われた。よくわからないが、その内来るだろう。


「いらっしゃいませーっ、1名様ですねっ、こちらへどうぞー」

「ぅぁっ、ルクナちゃん……あ、あの、これ良かったら……」


「すみませんプレゼントは受け取れないので、お気持ちだけ頂戴しておきますっ。ありがとうございますっ」

「ぅっ、ご、ごめんそうだったねっ! あはははっ、はぁ……」


 このお店の従業員は全員女子で、みんな優しいから良い環境のお店だと思う。

 ヘルさんと店長が怖いくらいで、みんな優しい。よくお菓子をくれる。仕事は慣れないが、良い経験だと思って一生懸命やっているからお客さんにも人気だ。でもまだ誰とも仲良く出来ていない。上辺だけの関係だ。


「ルクナちゃん、休憩どうぞ」

「はいっ」


 休憩所では従業員のみんなが賄いご飯を食べたりお化粧直しをして過ごしていて、賄いご飯が美味い。これだけを楽しみに毎日頑張っている。

 ……うーむ、このままで良いのだろうか……みんな心配しているはずだ……まぁ私が消えた次の日に召喚陣を使えば良いからそこはなんとかなる、かな。というか帰還転移で戻れるような気がしている……いや確実に戻れる確信がある。でもルゼル様に一言挨拶しておかないといけない気がしているので、ルゼル様待ちだ。

 あぁ帰りたい……今日はオムライスだぁ……おぅ、うめぇ……帰りてぇ……寂しい……うめぇ……帰りてぇ……


「ねぇねぇルクナちゃんっ、あっちの世界でもモテた?」

「あっそれ聞きたかったー。学校とかで絶対モテたよねっ?」

「あぁいえ、学院ではモテませんでした。パーティーのペアの誘い私だけゼロでしたよ」


「えぇーうそーこんなに可愛いのにっ!」

「でも可愛すぎて誘えないよっ! はぁーかわいいー」

「女子にはモテるのですが、男性からはなんとも……」


 私が異世界出身だと普通に受け入れているのは、この世界では普通なのかな?

 帝都と呼ばれたこの街は怖くてあまり歩いていない。近くの本屋さんに行くくらいだ。このお店にいればお金を使わず3食ご飯がタダでお布団で寝られるという夢のような空間なので本屋以外に外に用は無い。必要な物は収納指輪に入っているから。

 休日もあるが、部屋にこもって1人で作業をしていたら休みなんて直ぐ終わるし……誰も誘ってくれないし。所詮私はよそ者という事だ……何ヶ月も居るのに帝都の名所なんて1つも行った事が無いよ。だからみんなとも話が合わない……はぁ……なんだかなぁ……別の種類の孤独を経験出来る良い機会だと思えば良いか。


「さっきもプレゼント渡そうとしてた男子居たけど、ほんとにモテなかったの?」

「うーん……私の周りが男子を寄せ付けない精鋭だったので、そのせいかと」

「あーわかる。ルクナちゃんくらい可愛かったら女子達だけで楽しみたいもん」


「あっ、ヘル様お疲れ様でーす」「お疲れ様でーす」

「お疲れ様です……」

「お疲れさま。私も参加して良い?」


「もっちろんですよっ! 今ルクナちゃんにあっちでどれくらいモテたか聞いたんですけどっ、全然モテなかったみたいで2人で驚いていましたっ!」

「あら、周りの女子達が守っていたとか?」

「そうらしいですっ」


 ヘルさんはみんなに慕われていて、2人ともヘルさんと話していて凄く嬉しそうだった。

 私は少し苦手なので、にこにこして聞く側に徹しよう。

 ヘルさんってじーっと見るから怖いのよ。赤い瞳と目が合うとこう見透かされるというか変な感じなので、いつも閉じている心の扉にガチャリと鍵が掛かるのだ。


 この前、記念祭のパレードがあるからとみんなでお店から出て手を振った。そのパレードの中にヘルさんが居たので、隣に居たパンパンの人に何者か聞いてみたらこの国の皇女様だと嬉しそうに話してくれた。

 生まれながらの皇女……私のような隠し子ではなく、国民全てに認められた正統な皇女様。

 私が王女になる為に、どれだけの苦労を重ねているか……どれだけ無理をして……どれだけ泣いて……この人は、生まれながらに私が欲しい物を持っている……いや、よそう。


 私の話題から変わって雑談になったので、これ幸いとオムライスの続きを楽しもう。はぁ、美味い。ご飯は美味いんだよなぁ……みんな優しいけれど輪に入れないし、同年代が多いから怖いし。


「あぁそうだ、午後にアレスが来るわ」

「「えっ……」」


「みんなに言っておいてね」

「わかりましたっ」「お化粧直さなきゃっ」


 この2人はアレスって人が好きなのだね。恋する乙女の顔になった。ヘルさんも嬉しそうにしているし、きっとイケメンだ。ヘルさんってイケメン好きそうだもん。

 休憩も終わり、午後の接客は配膳係。注文を取って運ぶだけなのだが、メニューが多いので大変だ。


「はいっ、デラックスパンケーキとスイートパンケーキですねっ」

「ルクナちゃん……お持ち帰りしたいわぁ……」「ほんと可愛い……」


「オーダーお願いしまーす」

「はーい」


 ここの料理は特殊な魔導具を使っているので、オーダーしたら1分くらいで出来上がる。直ぐパンケーキが出来るとか1個欲しいわぁ……と思っていたらもう出来ていた。


「お待たせしましたーっ。デラックスパンケーキとスイートパンケーキでーす」

「ありがとうっ」「美味しそうー……あっ、あれもしかして……」


 ん? 急に店内が静かになった。みんなの視線を辿ると、カウンターに格好良い人が立っていた。へぇー、確かに格好良いから従業員達が騒ぐのも納得だ。

 たまに来るって噂の人で、カウンター周りの席は争奪戦になるらしい。カウンター席は特別な人と従業員だけが座れるプレミア席だとさっき凄い熱意で聞かされた。なので休憩時間はみんなカウンターに座ってアレスさんとお喋りするみたい。

 こっちの世界にもキラキラ持ちの人が居るんだなーという感想。だから耐性が無いと魅了される……しかもこの人、イシュラやローザよりも強いキラキラだ。私よりも強いって事はわかる。

 まぁ私はキラキラに慣れているし心も冷めているので魅了には掛かりません。どうでも良い。


「ご注文はお決まりですか?」

「……えっ? あっ、あの、これで」「わ、私もこれで」


「かしこまりましたー、渦メロンパンケーキお2つですねー」

「ラッキーだわぁ……」「あぁ……アレス様……」


 すげえな。オーダーを頼む時に少し目が合ったが、それよりも楽しそうなヘルさんに目が行った。あんな風に笑うんだな……


「ルクナちゃんっ、休憩どうぞっ」

「はいっ」

 カウンターに座って良いよと言われたが、あそこに座ったら休憩にならないのではないかと思う。仲良くも無い人と話したい気にはならん。

 休憩所は誰も居ない……みんなカウンターに座っているのだろう。

 誰も居ない休憩所も良いものだ。本屋さんで買った本を読もう。

 ……

 ……

「あれ? ルクナちゃん、カウンター行かないの?」

「はい、ここの方が良いので」

 ……

 ……よし、時間だ。あっ、出ようと思ったらヘルさんに出くわした。少し顔が赤い……ヘルさんも好きなのだね。

「……ルクナは、カウンターに行かないの?」

「はい。行きません」


 返事をした時にヘルさんの後ろから、アレスさんが顔を出した。「こんにちわっ」と笑顔で挨拶をされたので、こんにちわと表情を変えずに挨拶を返した。

 ……なに? 出口に立たれると困るのだが……あぁ私が避ければ良いのか。2人に道を譲ると、顔を見合わせてヘルさんが私の前に立った。また、じーっと見られる。それ、やめてくれん? 上手く隠しているようだけれど眼に魔力が集中してんのわかんのよ。

 ……ぜってー私の内面なんて視させねぇからな。なんで直接聞かねえんだよ……言いたい事があるなら言えよ。私の事情なんて何一つ知らんクセに。

 あーもう感情が安定しないっ!

 ダメだ、これ以上ここに居たら心無い事を言ってしまう。ここの従業員の人達って心に傷を抱えている人が多いらしいから、誰かを傷付けてしまう前に帰らないと……


「……なにか御用でしょうか?」

「アレスが話をしたいみたいなの。良い?」


「休憩時間は終わりました」

「それは大丈夫よ。他の子が入ったから」


「はぁ……わかりました」

「……ごめんね」


 拒否権は無いようなので、コクンと頷いて休憩所に戻った。椅子に座り、対面で隣り合う2人を見てお似合いだなーと思っていると、ふと気が付く。アレスさんって、男装している女の子だなぁって。

 私も同じように男装の時は魔導具を使っているからわかるよ。

 ふーん……強いな。私より強い女子って気になるけれど、なんかどこかで会った事があるような……


「初めまして、アレスです。ルクナちゃんは……ルゼルさんのところに居たんだよね?」

「……はい。でも気が付いたらここに居ました。ルゼル様に一言ご挨拶だけしたいのですが、連絡をする手段が無くて……」


「連絡なら、私が出来るけれど……なんの、挨拶を?」

「帰りますと言いたいだけです。ずっとルゼル様を待っていたのですが、お忙しいようなので……お伝えして戴けますか?」


 あー声を聞いて思い出した。ルゼル様をおかぁさんって呼んでいた人だ。って事はルゼル様の娘かぁ……私に探りを入れているのを見ると、不信感があるのかね。確かに怪しい人間だという自覚はあるよ。他世界の出身で、ルゼル様の屋敷に居た人間……でもよ、この人もなんでルゼル様の娘だと言わないで男装での自己紹介をしたんだ? それこそ私が不信感を持つのだが……ナメられている? 私がこの店で一番下っ端だから、私がどう思うなんて微塵も考えていないのだろう。

 ってさ、アレスさんも魔眼か何かで私を視やんでくれん? 絶対視させねえに決まってんだろぅ! ぉう?

 どう思っているかと聞かれたら普通に怒っていると答えるがねっ! めっちゃ腹立って来たからもう帰ろう。もう本当にどうでも良い。


「帰るって、他の世界から来たんだよね?」

「はい、帰る手段はあります」


「どうやって帰るの?」

「答える義理はありません」

「ルクナ、私達は貴女が心配で……」


「心配だからその眼で視るのですか?」

「えっ?」


「とぼけても無駄ですよ……アレスさんもその眼で視ないで下さい。不快です。なんなのですか? 私にこれ以上何をさせるつもりですか?」

「あの……」


「あー失礼しました今の質問は忘れて下さい。ヘルさん、短い間ですがお世話になりました。皆さんにもありがとうございましたとお伝え下さい。もう限界です」

「えっ、ちょっと待って……」


 そもそも、ルゼル様は迷宮で帰って良いって言っていたよな……都合良く思い出したわ!

 よし、帰ろう。ギッと睨み付けてから立ち上がり、部屋を目指す……店長の挨拶はまぁ、会いたくないから良いや。部屋に戻って、制服を脱いで畳んで……ノックをされたが引き留められたら困るので、神気を込めてーっ召喚陣と帰還転移と合成っ! 私って天才っ! とぅっ!


「帰還次元転移っ!」


 ばしゅんっと視界が変わり、懐かしの秘密基地っ! 天使像もあるし、デスちゃんも居るし……ん? デスちゃん?

『……えっ?』

「へ?」

 ──バシュンッ!


 ……消えた。転移したって事? 転移魔法使えたんだぁ……じゃあ待っていれば戻って来るかな?

 ……

 ……戻って来ない。ん? なんだこの黒い石……解析すると、裏転移石……裏世界へ行ける転移石。

 裏世界? それは裏の王が居た世界、だよね? なんでデスちゃんが持っていたの?

 これを使って行ってみた方が良いのか? そこにデスちゃんが居る可能性が高い。

 でも、なんでこれを持っていたの?

 えぇ? ぜんっぜんわかんないっ!


 とりあえず……デスちゃんは私が生きている事はわかったはずだし、一度家に帰って私無事だよーって言いに行かないと。


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