流石私の娘だ
「さぁルクナっ、私を観光名所に案内しなさいっ!」
撮影会はいつもの感じなので割愛。撮影班とグニアは帰り、セイランが鼻息荒くわがままを言うので今から迷宮探索だと告げた。殴られた。
「マリンさんのお願いだから我慢して」
「我慢しきれなかったから殴っただけよ。怖いわ」
「一応聞くけれど、行く?」
「愚問ね。でも私を勇気付けて」
「守ってあげるから」
「……もぅ、仕方がないわね」
「……」
ライズよ、ミナと違い過ぎて引いているがセイランにバレているからね。
とりあえず海底の迷宮なのでセイランとライズには適応魔法を覚えさせた。月の大聖堂だとは告げずに図書館に直接転移して覚えさせたので、怪しまれたが、凄く怪しまれたが何も聞かないでと念を押しておいた。
『ルナ、海と繋げたから行くぞ』
マリンさんが海に入って行ったので、私も適応魔法を使って海にダイブ。視界が変わって暗い水の中……海底かな? 目の前には大きな海底洞窟があり、マリンさんが洞窟前に立っていた。
直ぐにデスちゃんが来て、ライズと泣きそうなセイランがやって来た。
「ルクナ、先に行くなんて酷いわ」
「ごめんごめん、ライズありがと」
「うん、良いの良いの。セイランは私が守るからルクナは攻略に専念して」
「ふふっ、了解。セイラン、大丈夫そう?」
「えぇ、このくらい平気よ。トイレに行きたいわ」
「はい、どこでもトイレ」
「……ルクナが私の下のお世話をしてくれるのね。最高だわ」
「ポジティブね。デスちゃん、セイランに乗って後方はお願いね」
『うん。マリン、人魚達邪魔』
『気にするでない。友に頼んだと言っただけだ』
迷宮の周囲に多数の反応があった。友好的ではなく、警戒されている感じだな。
人魚からしたら人間が入る時点で気に入らないかもね。マリンさんに話し掛ける人魚が居ないのは、巫女じゃないからか?
まっ、良いか。私から見たらマリンさんからのお願いだから人魚は関係無い。無視して入ろう。
「ではマリンさん、終わったら連絡しますね」
『あぁ、頼んだぞ。礼はするでな』
「期待していますねっ。行って来ます」
よしっ、行くか。洞窟に入ると迷宮に入った感覚がした……解析してみると死炎の迷宮と出た。嫌な予感……死とか強い言葉の迷宮って、ボスが強いのよね。即死魔法とか使われたら全滅は有り得るが、デスちゃんが居るから即死は無いと思う。
「……ルクナと迷宮に入るの久し振りね」
「そうねー。まだヴァンに居た頃だから2年前かな。あっ、見て見て変な魚」
「うわキモっ、よく触れるわね」
「可愛いじゃん。このギザ歯」
「それ魔物でしょ? 流石に素手は怖い」
キモい魚がゴキュゴキュ唸って愛くるしい。上層の魔物は弱いから噛まれても甘噛み程度の感触だし、ただ攻略するより楽しみたいのよ。そもそも女神の効果で攻撃的な魔物は寄って来ないし。
カラフルなイソギンチャクとか家で飼いたいし、帰りに持って帰ろうかしら。
「これとか水槽で飼いたくない?」
「そのヒトデは可愛いわね。でも魔物よ?」
「核を浄化すれば懐くのよ。ほれ持ってみて」
「えぇ……なんかぺろぺろされて変な感じ……ヒトデって舌あるの? 逆に怖いわ。ライズ持って」
「ひぃっ、ぺろぺろやだっ。ねちょねちょしてるぅ!」
「投げないでよ。帰りに持って帰るんだから」
「えぇ……核の浄化ってどうやるの?」
「ふみゅーってやったら出来るよ」
「そっか、ルクナしか出来ないのね」
上層はただの海底洞窟で、こっち矢の先導で進んでいる。この調子だと空気がある場所は無いのかしらね。海中戦闘は少し不安だから、人魚の一人でも頼めば良かったか。
「ところでマリンさんって何者? 人魚の女王様?」
「あぁ人魚から海神様と呼ばれていて、ノースギアの民から氷神様と呼ばれている神様だよ。前に話した天聖竜シャフェルの仲間だね」
「あぁ神様だったのね。じゃあ神様の友達のルクナは女神様なのね」
「あーまぁね。一応女神の仲間だよ」
「……否定しないなんておかしいわね。ライズ、ルクナは女神なの?」
「うん、幸運の女神様だよ。エルフの星占いでも女神って言われていたし、私がこの時代に居るのは女神の力だから」
『ママ、女神様だよ』
セイランが無言で私の尻をちねった。やめれ。
「教えてくれたからこれで許すわ」
「ありがと。神気って普通の魔力と違って異常な力だから帝国組には内緒にしてね」
「わかったわ。口止め料に私のお茶会に参加しなさい」
「はいはい。デスちゃん、そこの罠お願い」
『うん、トラップ破壊』
水に流される罠を解除した先に下へ続く階段を発見した。階段……? 海中なのに階段なんて必要か? 迷宮だから普通の法則は通用しないのだが、不自然だから気になる。
壁の素材も海の感じがしないから、元々地上にあった迷宮が移動してきたのかしら。それか迷宮核が地上のものとか。
「デスちゃん、なんか変じゃない?」
『多分、大昔に、迷宮核、海底に落ちて出来たと思う』
「やっぱりそうだよね。それなら人魚達が攻略出来ないのも納得か」
「地上と海は核が違うの?」
「一度地上に出来た場合は迷宮の型が固定されるのよ。死炎の迷宮って出たから、炎が出るのかしらね……炎かぁ……」
『ママ、私、炎大丈夫だよ』
あぁそうだ、昔は火に弱かったけれど今は私が魔改造したので全属性全天候対応汎用型兵器人形と化している。デスちゃんって最初から魂があるけれど、なんか予定より強過ぎるから凄い魂な気がするのよ。
聞いても秘密って言われるから良いけれど、心強いのは確か。
階段を降りると、水温がかなり上がった。なるほど、人魚はお風呂の温度でも火傷するからこの環境は酷だ。
適応魔法で快適だが、実際は熱過ぎるお風呂の温度……ここは海底火山みたいな場所だな。
「水が無い場所まで休憩は出来ないから、先へ進もう。セイラン、魔力大丈夫?」
「えぇ、まだ大丈夫よ。一時間したら口移しでお願い」
「休憩所が無いのは辛いなぁ……こっち矢、休憩所ってどこ?」
『あっち矢ー』
あっち……二層は広い海底火山帯。所々赤いマグマが見え、ボコボコと沸騰した温泉が湧き出ている。魔物は寄って来ないのが救いだが、環境が悪いほど適応魔法の消費が激しくなるので早いところ休憩所に行かないと。
──グロロロロロロ……
地震……いや、唸り声。階層のボスかな……私から逃げないのなら超位の魔物だぞ。二層で超位はまずいかも。
「みんな、警戒して。デスちゃん、見える?」
『……燃えてる骨の龍。結界、張る』
「解析……骨龍ビグロ。名持ちかぁ……弱点は光と氷。よっしゃ」
『ママ、海流ある。火山地帯だから、氷は駄目かも』
了解っと。白い魔法陣を三つ重ね、骨龍に向けて集束させるように魔力を凝縮させていく。
先ずはご挨拶。と言ってもご挨拶で終わりそうな力を込める。
「聖なる光が照らす栄光への道を、歩けるのは私だけ。この道は神道……邪なる者が歩いて良い場所ではない。神聖魔法・セイクレットロード」
白く輝く魔法陣から放たれた光の筋は肥大しながら骨龍を追うように伸びていき、逃げようとした骨龍を呑み込んでいった。
骨龍の唸り声は掻き消され、薄暗い海底火山帯が昼間のように明るく遠くまで見えた。二層は広いなぁ。
「……眩しいわね。仕留めたの?」
「いや、今の所半分削れたくらいじゃない? でも弱点だから身動き取れないと思うよ」
『ママ、トドメ、刺すね。シャイニングアロー』
デスちゃんがふわりと浮き上がり、巨大な……巨人が持つような光り輝く弓矢が現れ、デスちゃんの手の動きと共に弓矢がバーンと放たれた。
本当にビューンッ! って言うような一瞬の速さで私の魔法の中心に突き刺さり、二層を突き抜けるような巨大な柱が上がった。神聖魔法をぶっ飛ばす弓矢ってなに?
──グロロロロロ……
断末魔のような声が聞こえた気がするが、それよりもデスちゃんの火力に引いている。あれ? こんなに強いの?
それ神級魔法じゃね? シャイニングアローって嘘だろ? 絶対違う魔法でしょ。ねぇ、デスちゃん神化しているよね? ねぇ、あっプイってされた……こっち向いてー可愛いデスちゃーん。おっ、ニコッとしてくれた。良かった。
「「……」」
「デスちゃん、流石ねー。えらいえらい」
『ふふふふ……褒めてもらった』
「……おかしいわ。人形よね? おかしいで済む話じゃないわ」
「女神ルナの最高傑作だから不思議ではないのだよ。うん、デスちゃんは凄いのだ」
『わたし、凄い』
「ははは……自身無くすレベルだね……」
デスちゃんはセイランの肩に乗り、髪を整えながら嬉しいのを隠すように下を向いた。恥じらいのある女子アピールだなんて誰が教えたのかしらっ、私だよっ。流石は私の娘だ、うんうん。
骨龍のところに行ってみると、白化した魔石が転がっていたので回収しておいた。
骨は見事に浄化されて無くなっていたので、神級魔法の威力が伺える。
白化していた魔石は私の神聖魔法とデスちゃんの神級魔法で神魔石というものになっていた。神魔石を神眼で解析……高濃度の魔力と神気で変質した魔石。神武具の材料になる……神武具? 神剣とかかしら。あっ、エーテル・バスターの燃料にもなりそう。
「デスちゃん、凄いの出来た」
『ふふふ、女神と魔神の合作……ママ、それ誰かにあげちゃ駄目だよ』
「あげないよ。エーテル・バスター何回か撃てるからもう少し欲しいかも。神剣も作ってみたいしデスちゃんの強化にも使える」
『まだ、骨龍居るよ』
狩ろう。神魔石まじ欲しい。その為には先ず休憩所だな。
火山の麓を探すと小さな階段と扉があり、中に入ると水のない部屋になっていた。果物が成っている木が生えていて、湧き水もあるのでここが休憩室ね。よし、ちょっと休憩しようっ。




