楽しい会になりそうね
公爵が私の足にしがみついてウザかったので一旦客間で話す事にした。
私の足にしがみついた時にモニカちゃんが公爵を本気で蹴っていたせいで血が流れているのだが、誰も心配していなかった。
「文句は王様に言って下さいよ。今だに私を気まずいぼっち飯に誘うのですから」
「だってルクナせんせの話題になったら不機嫌になるんだぜ? この前こんな話したーとかグッズ手に入れたーとか言ったら良い歳こいて嫉妬するんだぜ? 文句言ったらボコボコにされるよっ」
「公爵様も良い歳こいてマウント取るから王様が怒るのですよ。そもそもルクナのグッズは激レアで王様も持っていないのに推しの自慢を聞かされる身にもなったらどうです? それに私の前でクルルのぬいぐるみ抱くとか娘の評価駄々下がりですよ」
「お父様マジきもい」
『公爵、キモイぞ』
「ぅっ、ぐっ……だっ、だって自慢したいんだもんっ!」
泣きながらだもんとか言うなよ。笑っちゃうだろ。
自慢する相手が王とか友達居ねえだろ。モニカちゃんとデスちゃんドン引きだしライズも小声で居た居たこういう人懐かしいとか言っているし……この光景をセイランが見たら確実に公爵の心折ろうとするぞ。
「モニカちゃん、今日うち来る? 彼女の歓迎会をするからママも張り切っていてさー」
「行くぅーっ! お父様、お泊まりしにいくから」
「えぇ……俺も行きたーい……でもウォル様に殺される……絶対殺される……あっ、紹介がおくれたけどノーザン公爵です」
「初めまして、ライズ・エリスタです」
「エリスタ……ライズ、って……? ねぇせんせ、この方って……もしかして……すっごい人だよね?」
「ん? 凄い人? エリスタってノースギアで聞かない名前だからなぁ……え? 俺も知ってる?」
デスちゃんが耳打ちすると、モニカちゃんがパァッと笑顔になって大ファンですと言ってライズと握手。おいライズ、可愛いからって鼻の下伸ばすな。モニカちゃんが私とライズの間にグイグイと尻を入れて座り、ご満悦な表情を浮かべていた。ライズ……今、尻触っただろ。目を逸らすな。
モニカちゃんは私が過去に遊びに行っているのは知っているので、直ぐに聖女ライザだとわかったのだろう。一方公爵はライズが誰なのかわからないご様子。教えてって目で訴えているけれど、知りたいなら聞けばという視線を返しておいた。
モニカちゃんは早速収納リングから聖女ライザの本を出して、ペンと本をライズに差し出した。
「あのっ、あのっ、サイン下さいっ」
「もちろんっ、ん? この本……へぇー、バスカード家ってまだあるんだ。監修のルーってルクナ?」
「そうそう。ライズと会う前に書いた本だから読まない方が良いよ。ちょっと先も書いてあるし」
「気になるけど読まない方が良いね。はい、どうぞ」
「ありがとうございますっ! せんせっ、せんせっ、夢みたいっ!」
「良かったねぇー。じゃあ公爵様、モニカちゃんは連れて行きますね」
「ちょっ! ちょっと待ってっ! 全然わかんないっ! きっと王様のところ行くよね? その前に知りたいっ!」
「お父様うるさい。わからない方がおかしい。早くサーレスの事教えてよ。せんせと喋りたいだけでしょ」
「……ぐすん。サーレスは早いとこせんせに謝罪したいみたい……もちろん王様にも言ったみたいだけど、せんせって王様にアレ見せたでしょ? あのせいでめっちゃ怒ってんのよ」
アレと言えば私に支給された寝床と思わしきサーレス公爵自慢の倉庫だね。今もあるのかしら。あるなら私の家として誰かを招待したくなるわね。
というか王は私の為に怒ってくれているのか……めっちゃ嬉しいじゃん。じゃあ王の機嫌を直すには私が許す程度で済むのか? でもサーレスは私が王の孫だって知らんじゃん。
とりあえずライズにさらっと教えて倉庫を見せてあげると嫌そうな顔をした。
「こんな事されて別に許さなくても良いんじゃない? 典型的な王侯貴族だよ」
「アズリーナ王女がサーレスに世話になっているから面倒なのよね。かと言ってアズリーナ王女と行きたくないし……あっ、そうかっ! 王様とサーレスに行けば良いのか」
「あぁっ、なるほど。流石せんせだね。でも王様忙しいよ?」
「可愛い私のわがままなら聞きますよ。試しに今日王様も招待しますし」
「えぇー俺も行きたいぃー」
「えぇ……行きたいならモニカちゃんを説得して下さい。あとお土産はママと王様に高級なお酒と神殿巫女達に高級なお菓子と私達子供組に高級なジュースですが用意出来ますか?」
「お土産は秘蔵のものがあるよっ! モニカっ! どうかお願いしますっ!」
おぉ、土下座だ。
プライド捨てて娘に本気のお願いだ。
モニカちゃんがおっさんの熱量に引いている。一応カンナさんも居るのだが、遠い目で公爵を見ていた。他人事のように見ているが、カンナさんは強制連行だからね。人手が足りんから。
「……」
「あっ、そうだ服装自由だからジャージで良いからね。カンナさんはクレイル兄さんとお揃いの赤ジャージで良いですね」
「えっ……私も行くんですか……」
「用事があるのなら構いませんよ。私を入れてメイドは5人なので大変だなーって思っただけです。公爵様の面倒は見られないので酔っ払ったらボコボコにされる覚悟は持って下さいね。まじでヤバい方が来るので」
「ぅ……ウォル様より怖いの? ……でも行きたいが勝っています……モニカ様お願いします」
「……お父様、貸し3つだよ」
「契約書でもなんでも書きます。ありがたき幸せ……」
まぁひと段落したので城に行こう。モニカちゃんは公爵と話があるみたいなので、再びライズと2人で出掛ける。
城に行く途中でルクナリンクを起動……出るかなぁ……
『ルクナ? どうしたの?』
「あっアズリーナ王女、今日うちで友達の歓迎会があるけれど来る? 王様も誘うよ」
『あら、丁度お父様と居るのよ』
「あっ、今向かっているから行って良い?」
『えぇ。丁度会議が終わったところで休憩していたから大丈夫よ』
「ほーい。後でねー」
ふむ、アズ母と王は二人だとどんな話をするのだろう……気になるさー。
「ルクナ、なんか凄い面子のパーティーじゃない?」
「うん、非公式だけれど聖女ライザの歓迎会だからねー。そりゃ面子は凄いさ」
「私って凄いんだねぇー……」
「獄炎の魔王を討伐した伝説は今も語り継がれているよ」
「いやいやいや倒したのルクナじゃんっ!」
「まぁ歴史なんてそんなもんよ。それ以上に沢山の人を救っているのだから最強聖女ライザの名前は揺るがんよ」
納得いかない様子のライズを宥めながら、真王都を通り白銀城に到着した。
受付でルクナが来たと伝えると、話が通っていたみたいで直ぐに案内された。
「お邪魔しまーす。こんにちは王様、アズリーナ王女」
「あぁ、座ってくれ」「ルクナ、元気そうねっ」
ソファに座ると、対面にニコニコ笑うアズ母と無表情の王……孫が遊びに来たんだから少しは笑え。
「私の大親友が遊びに来てくれたので紹介しに来ましたっ」
「初めまして、ライズ・エリスタです」
「……エリスタ?」「えっ……ライズ・エリスタって……」
「ふふふー、なんとっ! 彼女が聖女ライザなのですっ!」
「……ん? 聖女ライザ? どういう事だ?」
「あぁ色々ありまして、私が過去から連れて来ました。ウォルママが張り切って今頃私の家で料理をしているので本人で間違いないです」
「……そうか、茶を出そう」「……あっ、お父様私がやります」
「1週間くらい滞在するので今日は歓迎会をします。時間があったら私の家に来て下さいねっ」
「……あぁ、わかった。アズ、行くぞ」「へ? は、はいっ!」
アズって呼ぶのね。母もアズって呼ばれてびっくりしてんじゃん。
王がふわふわなお菓子を出してくれたので、ライズと一緒にティータイム。
今日は王妃は居ないのかしらね。
「あぁそうだ、このお菓子まだあります? 氷神様も居るので」
「「は?」」
「お菓子大好きなんでよろしくお願いしますね。後はノーザン公爵様とモニカちゃん、神殿巫女のみんなくらいかな。あっ、服装自由なのでジャージで良いですから」
「る、ルクナ? 氷神様って?」
「最近友達になって家に居るのよ。自由な方だからあんまり気にしなくて良いから」
「気にするだろ……いやもうウォル様も居るなら行かないと駄目なんじゃないか?」
「わ、私も準備手伝うわっ!」
あぁそう? じゃあ行こうか。
王妃は視察で居ないみたいなので、そのまま4人で城の一階に降りると城の人達が騒めいた。
そりゃそうか、王が私と手を繋いで歩いているのだから。
ご満悦ですよ。なんかドヤ感凄いわ。ライズっ、写真撮ってっ!
「そうだ王様、ぼっち飯は飽きたのでサーレスに一緒に行きません? 王様と二人で行けばビビりますよ」
「……ふむ、その方が良いか。アズ、公務は頼んだ」
「え……私も行きたいですよ……」
「ライズも行こー。座っているだけで良いから」
「うん、楽しそうだから良いよ。サーレスまで送って行くし」
「明日はリューメイ魔導具店で撮影会をするので気が向いたら来て下さいねっ」
「明日か……考えておく」
予定を伝えておけば少しくらい来てくれるだろう。来るなら変装してねと伝え、道行く人達に注目されながらマイホームに到着した。
中に入るとみんな来ているみたいで、エントランスが会場になっていた。
下の広場と階段を少し上がった先が上の広場なのだが、下の広場ではフランさんとミレイさんがテーブルの準備をしていて奥のキッチンに神殿巫女達とサエさんが居た。
上の広場はウォーエルとマリンさんとデスちゃんが既に酒盛りをしていたのだが、ウォーエルはモニカちゃんを抱っこしていてマリンさんはどこからか拾ってきた死んだ目のエリちゃんを抱っこしていた。
そのウォーエルとマリンさんの間にメイド服を着たオッサンが立っていて、ニコニコしながらお酌をしていた。髭は剃ってくれ……まじきもい。
「……王様、とりあえず上の広場に行きましょうか……」
「……くっ、くくっ、変態過ぎんだろ……ぐっ、くく……」
あっ、王がツボった。
やるねぇ公爵さん。




