別荘って憧れるよね
ライズが泣き終わった頃にグニアがやって来た。
グニアには女神通信で説明してあるので、直ぐにライズに抱き付いていた。
……ライズ、さっきまで泣いていたのにデレデレすな。なんか複雑だろうに。
「ルクナ様っ、おかえりなさいませっ! ライズ様っお久しぶりでございますっ!」
「グニアさんお久しぶりですっ! いやぁいつ会っても可愛いですねっ!」
「もぅっ、ライズ様の方が素敵ですよっ。ルクナ様からライズ様もカタログに参加出来ると聞いて嬉しくて嬉しくてっ! 是非みんなで撮りましょっ!」
「お手柔らかにお願いしますね」
「いやいや私はライズから学ぶ気満々だからねっ。グニア、実はライズってモデルとか歌を歌うプロだったんだよ」
「本当ですかっ! もっと楽しみになってきましたっ! 私とセイラン様はほとんど独学なので是非ご教授をっ!」
「独学でこのカタログ作れる方が凄すぎるよ……天才すぎん?」
まぁローザ、イシュラ、セイラン、グニアが集結したら大体の事は出来るからね。帝国には行かないからローザとイシュラには会わないけれど、アルセイアには会わせたいよなぁ。恋人自慢したいから。
ところでセイランは何用で帰って来たのかしらね。
と考えていると、ルクナリンクに連絡が来た。ウォーエルか……
「おかぁさん、どしたの?」
『ルクナ、そこに誰が居るの? ありえない魔力を掴んだの』
「ライズだよー。十歳の」
『……いつ来てくれるの?』
「セイランの家に行ってから、明日撮影会をして……あー、明日はノースギアで撮影会するのと、今日は家に泊まるから呼ぶね」
『そう……楽しみにしている。ルクナ、愛しているわ』
「らびゅー。じゃあねー。という事でグニアさん、ノースギアでの撮影になったのでよろしく」
「了解いたしましたっ。でも撮影班の移動はどうしましょうか……」
「あっ、私が送るよ。ルクナ、場所わからないから後で連れてって」
集団で転移出来るって凄いよね。私は二、三人が限界だし。それでも十分凄いのだが……
それからお菓子作りを終えておめかしして三人でオレイドス家に向かった。
玄関前で仁王立ちで待っていたセイランは少し不機嫌なご様子。
「やぁセイラン、ご機嫌ななめだね」
「歓迎するわ。家に父が居たというだけだから気にしないで」
「……ルクナ、オレイドス家ってこんなに繁栄するの?」
「法を司る家にランクアップしたのよ。そのせいで私はオレイドス家を憎んでいるのだけれど、セイランは別って感じ」
「ルクナが私だけ好きならそれで良いわ。私の庭に行きましょ」
「セイラン様っ、お手伝いいたしますっ!」
セイランとグニアを先頭に、セイランの庭……あぁ私がアルセイア王女に初めて会った場所ね。
ここの芝生に座った思い出が蘇るよ。
懐かしい思い出だなぁ。懐かしいので芝生に正座してみると、ライズも隣に正座した。
「……ルクナ、思い出すからやめなさい」
「いやぁここまで来たんだなぁって。ただの平民だったのに今は王族よりも大事にされる立場じゃん?」
「そうね。ライズ、ルクナ・レド・ノースマキナはこの国にとっても重要な人物なのよ。ヴァン王妃から絶対不可侵宣言もされて、ヴァン王国の女子全員から注目されているわ。聖女ライザの再来ってね」
「やっぱりルクナは凄いんですねぇ……私の功績は全部ルクナのお蔭なので、聖女ライザって思っているほど大した事ないですよ」
「それが大した事なのよ。歴代最強の聖女ライザは近隣諸国で最高の褒め言葉よ。みんなの憧れツートップが並んで私の家にいるだけで自分を誇りに思うわ。今日は写真を撮りまくるから覚悟してちょうだい」
「あっ、明日ノースギアでカタログの撮影会あるから行くでしょ? 私とライズが表紙の」
「絶対に行くわ。それなら準備しないと……ルクナママに新作を披露しないといけない……忙しいわねぇっ!」
「今日はライズと私の家に行くから、明日迎えに来るね」
テーブルにお菓子を並べて軽いお茶会をしながら、明日の打ち合わせを始めた。セイランにも元プロだと伝えたら目を輝かせてライズの話を聞いていた。私たちよりも熟練しているのは確かだからね。
そうこうしていると、私達の元にメイドさんがやって来た。
「お嬢様、奥様がルクナ様にご挨拶をと申されています。宜しいでしょうか?」
「えぇ、構わないわよ。私はみんなに奉仕しないといけないからお母様のお世話はそちらでお願いね」
「了解いたしました」
……メイドさんの表情が固い。セイランとは仲が良いとは言えないので、フランさんとミレイさんが辞めた後に入ったメイドさんかしらね。それでもオレイドス公爵家のメイドなので上位メイドな筈。
私が観察していると、セイランがため息混じりに教えてくれた。
「……みんな私を恐れているわ。私の影響力が大きくなり過ぎてねぇー。そうそう、フランとミレイの事お願いね」
「もっちろん。そうだ、私とライズでセイランとグニアのメイドやってあげるよ」
「えっ、私も? まぁ、可愛いなぁって思ってたから着たいけど……」
「……グニア、今日は私たちが主役よっ!」
「はいっ! 幸せですっ!」
魔法で衝立を作ってドレスをスポッと脱いでいつものメイド服をスポッと装着。ライズもスポッとメイド服を着させた。
ふむ……ライズのスカートを捲ってみると、太ももまでの白いタイツに白いガーターベルト……我ながら良い仕事をした。
衝立を外すと、カメラを持ったセイランとグニアがパシャパシャ写真を撮り、ライズと二人でポーズ。私も写真撮ろっと。
「ルクナ、なんか幸せ」
「私も。あとで家に行ったら着せ替えタイムだねー。おかぁさんも来るから紹介するよ」
「絶対美人でしょ」
「まぁね。私より良い女だから惚れても良いよ」
「ライズ様そのポーズ最高ですっ! 流石はアイドルっ!」
「最高……ルクナ、今日泊まりに行って良い?」
「……ごほんっ、少し、良いかしら?」
「あぁお母様、みんな、一旦挨拶しましょ。ライズ、私の母よ」
「お、お邪魔してます……」「マーガレット様ご機嫌ようっ」
セイランママ……マーガレット・オレイドスだっけか。ヴァン王妃の友達であり、以前私をセイランから引き離した苦手な相手だ。
前は平民として会ったが、今回はルクナ・レド・ノースマキナとして会う。真っ直ぐ私を見る目は真剣そのもので、どこか親戚のババァを思わせる雰囲気を纏っていた。
「セイラン、楽しいお茶会にお邪魔しちゃってごめんなさいね。ルクナ・レド・ノースマキナさん、貴女をパーティーに招待したいの」
「あら、お誘い戴けるなんて嬉しいです。ですが私は未成年の平民なので、親の同意が必要になります」
「……では、親御さんを紹介して戴けるかしら?」
「他国の貴族になりますので……ノースギアにいらして戴き、先ずはノースギア王とアズリーナ王女と面談して、了解が得られれば母である氷神巫女ウォル・ノースマキナを紹介出来ます。母はノースギアの民でさえ簡単に会える方ではありませんから」
「……セイランからも、お願いしてもらえる?」
「お母様、ルクナはセイランに会いに来たのであってセイラン・オレイドスではないわ。オレイドス家としてお願いなんてしてルクナに嫌われるのは絶対に嫌」
そんな事されたら逃げるからねっ!
それはそうと何故パーティー? 断られるとわかっているのに。これは建前で本音があるとか?
セイランの機嫌がひん曲がってきたので、出来れば家に戻って欲しいのだが。
「公爵家として、ルクナ・レド・ノースマキナさんを歓迎しないといけないのよ。彼女の立場はわかっているわよね?」
「えぇ。元大聖女で絶対不可侵氷神巫女様の娘、そしてローザクレイル皇女とアルセイア王女とステラ王女の親友であり私とグニアのメイドよ。ルクナの影響力は計り知れないわね」
「本来は王国に来た時点で歓迎会が行われるのよ。はぁ……惜しいわね。わかった、王妃様の絶対不可侵だから深追いはやめる。でも質問はさせて、合成魔導士クルルと貴女は同一人物で間違いないの?」
「そう思っても良いですよ。因みにクルルの母でありルクナの育ての親である死神アズライナとアズリーナ王女は同一人物なので、ヴァン王国はアズリーナ王女を迫害した責任を問われますがどうお考えですか?」
「……その可能性を考えていたのだけれど、まさかそこまで教えてくれるなんて……ミラ王妃も危惧していたわ。公式に謝罪なんて出来るのか……と」
「ふんっ、アズリーナ王女は氷神巫女の娘を守る為にこの国に来ました。ですが誰も殺していないのに死神と迫害されて、辛い目に合いました。私とアズリーナ王女を危険な目に遭わせたこの国に、母は良い印象を持っていません」
きっとこれが聞きたかったのだろうが、セイランパパは未だに何も言っていないんだな。仲悪い? 仲悪いならセイランが気の毒というか、貴族の夫婦なんて大概そんなに仲良くないイメージだがね。
別に言っても公表出来ないから言うけれど、もし国民に知られたら批判が止まないだろうね。
ギアナ帝国とヴァン王国の英雄の育ての親であるノースギア次期女王を迫害したのだから、戦争が起こっても仕方がない。
悩め悩めっ。ほっほっほ。
グニアが微妙な表情をしていたので、肩を抱き寄せて何かあったら拐ってあげるねと言っておいた。もし主犯のマグリット家が解体したらグニアはもらうからなっ。
「アズリーナ王女は、なんて言っているかわかる?」
「はい、大きな問題が解決した後に圧力は掛けるみたいです」
「……そう。問題、とは?」
「アズリーナ王女は次期ノースギア王最有力なので、早くて来年にはアズリーナ女王になるのですよ。そのせいで忙しくて忙しくて」
そこで初めてセイランママが頭を抱えた。
セイランがルクナ姫と言っているが無視しておこう。
「まずいわ……とてもまずい……ミラ王妃に、会ってくれないかしら」
「申し訳ありませんが、アルセイアの頼みじゃないと城には行きません。そうそう、アズリーナ女王を説得する方法が一つあります。聞きたいですか?」
「是非、お願い出来る?」
「えぇ、私は優しいので無償で教えましょう。アルセイア・ヴァン・シンドラを女王にする事です」
「っ……そんな簡単な事ではないのよ」
「知っています。ですがアズリーナ女王、アルセイア女王となれば必然的にローザクレイル女王への道が開けます。三国女王は歴史的に見ても珍しいですし、三人は仲良しですよ。私から推薦しても良いですし……もしあの王子が国王になったら私はこの国から完全撤退します」
「困るわ。私を拐いなさい」
ローザは病気の時に王位継承権を放棄している。
だから女王になりたいと思ってもむずいのよねぇ……私が大聖女で居続ければその道は開けたが、ローザは私の犠牲で女王になるのは納得しない。実力主義の帝国で、実力はあるのだが反対派の意見がうるさいから。
「ミラ王妃に相談してみるわ……ルクナさん、本当にありがとう。お礼は後日、ステラ邸に届けるわ。一応聞くけれど……欲しいものとか、ある?」
「うーーん……欲しいものは特に……あっ、オレイドスの温泉が出る土地で空きってありますか? 購入したいので斡旋してもらえると嬉しいです」
「あら、それなら良い場所があるわ。せっかくだからプレゼントさせてちょうだい」
「じゃあ場所を見てから決めたいので今から行きません?」
「今から? 魔導馬車で1週間は掛かるわよ?」
「地図さえあれば行けますよ。セイラン、ライズ」
「地図はあるわ。お母様、ラーポートよね」「はいはい」
「えっ? ちょっ! えぇぇぇ!」
セイランママのところに集合して、ライズが紫色の魔法陣を展開した瞬間にバシュンと景色が変わった。




