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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ノースギア学院編

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314/363

東へ

ある程度は書けたのですが、順番が変になっていたらすみません。

 

 天気は快晴、気温はちょうど良く風が気持ちいい。

 雪も無いし、オレイドス領に居るみたいでやはり東はノースギアっぽくない感じよね。


 そう、来ましたよ。東に。

 友達と来たかったが何かあると悪いので1人で領土に入った。

 一応サーレス夫妻にも連絡はしてある。アズ母経由だがね。

 私の目的はサーレスの街に行く事もあるが、先ずはヴァルヒートの近く……ヒナタの過ごした街を見たい。

 変装はバッチリだ……いやいつものぐるぐる眼鏡なのだがね。サーレス領の人にはルクナの普段着なんて浸透していないでしょ。


 ……ヴァルヒートの力はサーレス領に入った時に感じるようになった。

 これがヴァルヒートの言う縁が出来るという事なのだろう。

 サーレス領に行くというのは言ったが何処に行くとは言っていない。今頃サーレスの街で私の歓迎準備でもしているのだろうか……あーいつ過去に行こうかなぁ……これ終わったらにするか。


「ようこそエンテ温泉街へ! おや? お嬢ちゃん親御さんは?」

「1人で来ました。観光案内所は……あそこですね。失礼します」


「お、おう……気を付けてな……?」


 ……エンテ温泉街。ここがヒナタの過ごした街……歴史は古く、パンフレットには千年以上もあると書いてあるのでここで間違いないと思う。

 温泉の効能は場所によって違うようで、火山に近い方が効能は良いみたい。

 みんなで来たいなぁ……温泉好きだし。会いたいなぁ……1人だとちょっと寂しい。

 とりあえず宿でも取るかなぁ……良さそうな宿で上位レド証を見せたらすんなり宿が取れた。流石はサーレス領、レドに優しいね。

 次は……図書館か。


「すみません、歴史書等が読みたくて来たのですが、図書館は何処にありますか?」

「あぁ大通りのここ」


「ありがとうございます」

「迷子にならんようになー」


 図書館はわかりやすいところにあったので、直ぐに資料を読む事にした。当時の資料は……んー………………無いな。

 そりゃ千年前だしなぁ……魔の山警備隊の記録も図書館になんて無いだろうし。

 はぁ……前世の記憶なんてそう簡単に蘇る訳ないよなぁ……千年前のウォーエルとどんな風に接していたのか知りたかったが、仕方がない。


「ぁっ……」

「ん?」


 ……黒髪の女子が入ってきて、私を見て声を上げた。

 んー? なんか見た事があるというか、私の神気を感じる……もしかして、ローザの言っていた信頼出来る迷い人ってこの人か? 多分前に会っているのだろうが、思い出せんな。

 じーっと見つめ合っているが、私に何か用かしら?

 私の視線を受けて、気まずそうにゆっくりと近付いてきた。


「……大聖女ルクナ様、ですか?」

「元ね。ここには何の用事で?」


「慰安旅行というか、迷宮攻略のお祝いに温泉に行こうという事になりまして……みんなで来ました。腕輪が反応してもしかしてと思いまして辿ってみたら……あの、ローザ皇女はこれについて詳しく教えてくれなくて、ルクナ様に直接聞いてと言われていました。ずっと船酔いみたいで、外せなくなっちゃったし……どうしたら良いか……」

「外せない? んー? なるほど、ローザの仕業か。ちょっと頭触るよ」


 おでこに手を当てて、神気の流れを良くしてみた。

 うん、楽になったみたい。

 強制的に眷属にしてみたが、成功したみたい。これで私を裏切れないから色々喋れるわね。まぁしばらくは様子見するが……この人の名前すら知らんし。


「わっ、すごい……ありがとうございますっ! すっごい楽ですっ!」

「私の力が強すぎて酔っていたみたいね。一応馴染んだみたいだし、これでいつでも帰れるか……ねえ、名前は?」


「あっ、すみません。サエです……森崎佐江。腕も治してもらったのにお礼も出来ずに申し訳ありません……」

「サエさんね。あれはイシュラのせいだから気にしないで。平気で腕吹っ飛ばすんだもん」


「イシュラ様は妖精国の王子様ですから仕方ないですよ……」

「……? あぁ、そうだったね。座ったら?」


 サエは少し髪を整えてから私の前に座り、頭を下げた。以前妖精国に忍び込んでイシュラに腕を吹っ飛ばされた女子で、私が腕をくっ付けてあげたのだ。今は後遺症も無いみたいだが、少し前の事なので忘れていた。

 日本人という人種は黒髪黒目だからよく顔を見ないと見分けが付かない場合があるのよね。顔の系統だいたい一緒だし……私がじーっと見詰めていると、居心地悪そうに視線を逸らした。


「あの……この腕輪の事を知りたいんですが……」

「今はお守り程度に思って。ねぇ、取引しない?」


「取引……なにを、ですか?」

「迷い人達の情報を教えてくれたら、貴女の望みを叶えてあげる。なんでも良いよ。お金持ちでも貴族になりたいでも良いし、故郷に帰りたいでも美味しい物や旅行でもなんでも良い。あっ、恋人が欲しいは難しいかも」

「…………故郷って?」


 そこはニコリと笑っておいた。図書館で話し込んでも仕方がないので、というかお腹が空いたのでサエを連れて近くの喫茶店に入った。


「他の迷い人は何しているの?」

「えっと、温泉に入ったり買い物に行ったり……してると思います」


「……仲良い人は?」

「前に妖精国で失敗してから……私をよく思わない人が陰口言うようになって……体調も良くなくて、仲良い人はもう居ないです……あっ、ローザ皇女は別ですよ」


「そっか。じゃあサエさんが死のうがみんな気にしないって事で良いのね」

「そう、でしょうね。ははは、同郷なのに冷たいですよね」


「どうせ他人でしょ? こっちから見ても他人なんだから、1人で勝手に帰っても構わなくない? 私に付くのなら月に行く以外で日本に帰る方法を教えてあげるよ?」

「本当ですかっ!」


「うん。私に付くで良いのかな?」

「もちろんですっ!」


 軽くご飯を食べて雑談していると、迷い人のグループが近くを通った。

 サエと私を見付け、ヒソヒソして遠巻きに観察しているようだ。

 元大聖女と一緒に居るとわかったかしらね。でも話し掛けて来ないところを見ると、サエが嫌われている事が伺える……でもどうしてこんなに嫌われるのか? まぁ理由なんて無いのかも知れないし、わかったところでどうでも良いか。


「ここの旧街道の温泉に行きたいから一緒に行かない?」

「あっ、はい。どうせ1人なんで良いですよ」


「そっ、じゃあ行こうか。死の山に近いから魔物が出るみたいだけれど、サエさんなら大丈夫でしょ」

「まぁ、調子良いですし……でも私サポート型なので戦えませんよ?」


「大丈夫大丈夫、私から離れなければ魔物来ないから」

「魔物来ないって聖女って凄いですね」


「まぁこれでも超位魔物なら倒せるからね。そういえばフライ使えるよね? 町を出たら空から行こ」

「はい」


 町から出て、パンフレットを見ながら結界移動で旧温泉を目指して行く。

 死の山は円状になった山脈の真ん中にある赤黒い山。まるでヴァルヒートがそのまま山になったような色をしているらしい。氷神結界の濃いところだから魔素が凄いというか、普通の人は山脈にすら近付けないだろう。


「旧温泉の近くに遺跡みたいなところがあるから、そこでちょっと調べ物があるのよね」

「そう、ですか。あの……良いんですか?」


「あぁ付けられている事? 別に良いよ、私は用事無いし」

「……いつもそんな感じなんですか? 毅然としてるっていうか、帝国に関心無いっていうか」


「私のお母さんが帝国を恨んでいるんだ。帝国に仲間を殺されているから」

「そう、だったんですね。でもそれならどうして帝国で聖女を?」


「最近までお母さんがノースギアで氷神巫女をやっているって知らなかったんだ。知っていたら帝国に恩なんて売らなかったし、ローザも治さなかった……まぁこれも運命ってやつ?」

「そうですか……じゃあもう帝国には来ないんですか?」


「行くよ。ローザと友達になっちゃったし、大親友のアルセイア王女も居るし、あぁあとイシュラも居るし……おっ、あそこかな」

「……なんか、凄い世界ですよね。あっ、魔物が逃げてく」


 エリスタの私の家みたいなボロボロの町並みに降り立った。

 ……

 ……あっ、ここだわ。ヒナタが住んでいたところ……おっ、ここを曲がって、真っ直ぐ、真っ直ぐ、曲がって……ボロボロの像がある家……


「あった……ここかぁ……へぇー、覚えているというか教えてくれた感覚かなぁ……」

「ボロボロですね。全部一緒に見えます」

 繋がった感覚と共に、懐かしい気持ちにおそわれた。ここでヒナタは過ごしたわけか……ここで結婚して、子供を産んで、元気に過ごして…………いない。いや、違う。


「…………っ! はっ、はは、ははは、まじか」

「……? どう、しました?」


「ヒナタはライズから金術を引き継いでいた……だからヴァルヒートを完全に封印する為にここに来た……ふふっ、そう、そうか」


 ボロボロの像に触れると、粉々に崩れ去り……中に入っていた金色の指輪を指に嵌めた。

 その瞬間、術式が私の中に入ってきた……ふふっ、ふふふ。ヒナタ、ありがとう。

 この指輪には、ヒナタの組んだ封印金術が入っていた。

 ヒナタしか使えない術だったが、私にも使えるようだ。やっぱり私は、ヒナタの生まれ変わりなのだろうね。


「……っ! ルクナ様、来ました」

「んー? あぁ迷い人達ね」


「大聖女ルクナ様、何故こんなところにいらっしゃるのですか?」

「それは私の自由でしょ? それに大聖女は引退したからただのルクナだよ」


「今でもルクナ様を求める声は多くあります。帝国に戻ってはくれませんか? 魔王の事もありますし」


 この人は迷い人のリーダー的存在かな? 黒髪の気の強そうな目が印象的で、名前はサエが小声でアサミと教えてくれた。

 その後ろにも数名……仲間を呼んでいる様子だが、増えられると邪魔なのよね。まぁ目的は達したから良いけれど。


「ふふっ、ごめんね。私を帝国に行かせたいのなら、ノースギア王に氷神巫女との謁見をさせてもらって了解を得ないと駄目なのよ。帝国の迷い人はノースギア王に会う事すら難しいから、諦めた方が良いよ」

「そう簡単に諦めるなんて出来ません。ルクナ様が居れば魔王討伐の活路が見出せると聞きました。是非とも私達を助けて下さい。お願いします」


「「お願いしますっ!」」

「だから先ずはノースギア王に言って。私は大聖女よりも難しい立場になっちゃったから、私の判断で帝国の手伝いは出来ないの。それに……あぁちょっと待って」


 そうだそうだ、迷い人とかどうでも良い話題があるんだった。

 みんなを待たせてルクナリンクを起動して、ウォーエルを呼んだ。

 ……

 ……

『あらルクナ、今度はどんな良い報告かしら?』

「ねぇねぇねぇ聞いて聞いてっ! 今エンテの町に居るんだけれど、ヒナタの家で面白い物を見付けたのっ!」


『家がわかるなんて流石はわたくしの娘ね。直接聞きたいから迎えに来てくれる?』

「うんっ! あっ、また戻ってくるのでお茶でも飲んでごゆっくり」

「えっ、ルクナ様?」

「「──っ! 消えた……」」


 サエにお茶を渡して氷神神殿に直接転移。

 既に私と出掛ける気満々で私のプレゼントした服に着替えていたウォーエルに抱き付いた。


「ヒナタはただヴァルヒートを監視していた訳じゃなかった。ライズから封印金術を受け継いでいたんだ」

「なんですって……じゃあ、金術で封印しようと?」


「そう。家の地下に封印された場所があって、封印に使う大量の金がある。ヒナタは、本気でヴァルヒートを封印しようとしていた。お母さんと一緒に世界を回りたかったから……ヴァルヒートが邪魔だった」


「……ヒナ。わたくしのせいで、そんな事を……でも……」

「うん、志半ばでヒナタは死んだ。悔しかったんだろうね、術式を遺していたくらいだし」


「病死したと聞いた時、頭が真っ白になったわ……今でも、思い出すのが辛い……」

「ん? 病死?」


「えぇ……心臓の病と聞いたわ」


 ……病死じゃない……ヒナタは、殺されている。

 でも、それを聞いてウォーエルは冷静でいられないかも……

 いや、どうすっかなぁ……この情報はまだ保留の方が良いか。


「……あっ、せっかくだから家に行かない? 丁度帝国の迷い人が接触してきてさ、お母さんが追い払った方が楽しいかも」

「あら、殺して良いの?」


「今の帝国と喧嘩したら面倒よ? ボコボコにして帝国の迷い人が氷神巫女を怒らせたと知れ渡った方が色々情報が得られると思うし」

「じゃあ巫女服に着替えるわ。ルクナがくれた服を汚したくないもの」


「終わったら温泉入ろうねー」

「ふふっ、そうね」


 着替えを待ってから、転移陣に乗って2人でヒナタの家の前に戻って来た。

 そこには前よりも迷い人の数は増えていて、ウォーエルが仮面越しに笑った気がした。


「サエさん、お待たせ。お母さん、こちらは協力者のサエさん。サエさん、私の母です」

「は、初めまして森崎佐江ですっ!」

「よろしく。貴女は味方、で良いのかしら?」


「はいっ!」

 サエが返事をした時、不穏な空気になったな。

 裏切り者みたいな雰囲気……同郷だろうと他人なのにね。どうするかなんて自由でしょ。

 キンッと張り詰めた空気になった……徐々に気温が下がり、ウォーエルが場を支配し始めた。

 もう、ウォーエルの魔力は周囲に拡散されたから迷い人達に勝ち目は無い……この時点で分かるくらい力の差は歴然だ。天と地とはこのことだね……はは……マリンさんからもらった力を試したいのかしら。


「じゃあ他の者は邪魔だから帰りなさい。これ以上居たら命の保証は出来ないわ」

「わっ、私達は帝国の勇者ですっ! ルクナ様にご助力を……っ!」


「わたくし、帝国とは因縁があるの。わたくしの前に居るだけでも気分が悪いわ……氷結」

「ぐっ……あっ……」


 迷い人達の首に氷の首輪が嵌められた……もう一撃で殺せるじゃん。

 だめよ殺しちゃ。


「お母さん、殺したらめっだよ」

「わかっているわよ。にしてもこれが勇者だなんて期待外れね。これじゃノースギア王に全員で挑んでも勝てないじゃない」


「まだ中位迷宮程度だからね。この世界の理と違う力じゃないと魔王にあまりダメージが入らないみたいよ」

「ふーん……エーテルバスターは?」


「……まぁ、入るだろうけれど……帝国の預言者は知らないでしょ」

「そうねー、エルフ族は精霊信仰だから。とりあえず貴女達は帰りなさい」


「「「……」」」

 威圧を放ったら喋られないじゃないのよ。

 動けない人も居るのでは?


「ところでサエさん、この人達と一緒に居づらいでしょうし私達と来ますか?」

「へ? 良いんです?」


「はい。むしろ来てくれないと目的を達成出来ないのですよ。ローザには言っておきますので。氷壁」


 迷い人との間に氷の壁を作って、ヒナタの家があった場所の床に手を当てて錬金術を起動。すると魔法陣が浮かび上がり、地下への階段が現れた。

 ウォーエルの手を引いて階段を降りると、大量の金塊や迷宮産の武器や防具が沢山置いてあった。


「……ヒナは、一人で集めたのかしらね」

「仲間と一緒に集めたと思うよ。ほら、写真がある」


「……ふふっ、楽しそうね」

 仲間達と酒場で乾杯をしている写真を見て、ウォーエルの頬を涙が伝っていた。

 写真を見るだけで、素顔で過ごせる仲間達がいたってわかったんだから。

 ……なんだか、胸が熱い。写真の中のヒナタにお礼を言われた気がした。


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