海底観光したいのだが
家に帰ると、工房でマリンさんが自慢げに青い指輪を見せてきた。
おー、マリンゴールドこと神海金で指輪を作ったのか。無駄に神気が入って強力な神具になっていた。
後ろに力を込め過ぎた指輪の残骸があったが、ウォーエルがご機嫌に回収していた。それ一個で街一つ消し飛ぶから遊びに使っちゃダメよ。
『ルナ、褒めるがいい』
「流石ですねっ。上手ですっ」
『ほっほっほ。まぁ上手くできたのじゃが……これに嵌められる宝石に心当たりはないかいな?』
「神海金に合わせられる宝石、ですか……」
試しに普通の宝石を近付けてみたが、磁石が反発するように離れてしまう。
海からとれる宝石ってなんだ? 石だとだめか?
『真珠なら出来るのじゃが、普通と思ってのう……』
「そうは言っても思い付かないですね……宝石みたいな真珠とか?」
『……なるほど。人魚達に聞いてみるか……ルナ、行くぞ』
「えっ? 私も?」
ヒョイっと抱き抱えられ、マリンさんの砂浜に向かっているのだが……えっ、やだなんか怖い。
砂浜に足を踏み入れると、ズブズブと沈んでいく……えっ、まじ怖い。適応魔法は使ったが砂が全身にぃぃ!
……
……
『ルナ、着いたぞ』
「……は、はい……あっ……ここが海底、ですか?」
『あぁ。ここは海底にあるわらわの部屋じゃ。海底神殿の奥にあるで、外に出れば巫女が待機しておる』
「海底神殿……中々ロマンな場所ですね」
石造りの部屋で、壁のライトが幻想的だが砂浜があるだけの移動の為の部屋だった。マリンさんが私を抱えながら外に出ると、祭壇のようなところで巫女服のような出立ちの女性が座って祈るように目を閉じていた。
マリンさんが近付くと、女性がゆっくりと目を開けて深々と礼をした。
水色の髪に水色の瞳が綺麗なお姉さんで、真珠のネックレスやサンゴの飾りなどが凄い綺麗。ウォーエルと同じ立場の人なのだろうと思うほど、纏う空気が似ていた。
「海神様、ようこそおいで下さいました。おや? そちらの者は?」
『あぁ、紹介する。わらわの友、女神ルナだ。ルナ、海神巫女マーリヤだ』
「初めまして、ルナです」
「海神様のご友人でしたか。てっきり宴のご馳走かと思ってしまいました」
『食べたら怒るぞ』
「まさか。冗談ですよ」
『なぁマーリヤ、真珠について聞きたいのじゃが……』
「……何か異変が?」
『いや、この神海金の指輪に合う宝石がないか聞きに来たじゃよ。まぁ見てくれ』
「……神海金? なっ……これはっ! 海神様のお力が凄いですっ!」
『わらわが作ったからなっ』
「…………えっ?」
『どうじゃ? 上手く出来たと思わんか?』
……マーリヤさんの目から涙が流れた。自慢したかったのだろうが、作ったって言ったら悲しむじゃんね。
マリンさんに視線を向けると、ふんっと鼻息を掛けられた。黙っていろということね。はいはい。
「海神様……どうして、お作りに、なられたのですか?」
『世話になっている者に褒美をやりたいのじゃが、鱗よりも心の籠った物をあげたいと思ったのだ。どうだマーリヤ、いるかいな?』
「い、戴けるの、ですか……本当に、よろしいのですか?」
『あぁ、じゃが宝石を付けた方が可愛いと言われてな……心当たりはあるか?』
「しょ、少々お待ちをっ、気が動転していまして……戴ける……海神様から贈り物を……あぁ至福の時にございます……」
『完成したらな。で? わかるかいな?』
マーリヤさんは目を閉じて……何やら祈りを捧げるように指輪を持った手を胸に当てた。
そして、ゆっくりと目を開けて私の方を見た。
「……占いの結果、ルナ様がお持ちと出ました」
『そうか……ルナ、出せ』
「いやぁ……どれでしょうねぇ……」
持っていると言われてもねぇ……種類が多過ぎて一個一個試すの? 面倒……いやマーリヤさんの真っ直ぐな視線が痛いので真面目に探そう。
宝石って言われても普通の宝石じゃないと思うし、普通じゃないものをとりあえず出そう。
カエデちゃんにもらったうんこ型の精霊石……眉間に皺を寄せて首を横に振った。
世界樹の樹液を固めた物体……嫌そうな顔で首を横に振った。
異世界のガラス玉……違う。
光る骨、なんかの目玉、呪われた物体、うーん……あっ、これか?
「っ、それですっ!」
『ルナ、もっと小さいのは無いのかいな?』
「迷宮核って最小でこんなもんですよ? 神気分解……あぁ出来ました」
『ほっほっほ、わらわが買い取ろう。ルナ、付けてくれぬか? これは失敗したくないでな』
「じゃあ一緒にやりましょうか。錬金っと。ここに嵌めて下さい」
ふむ、マリンさん作の虹色に光る迷宮核の宝石が付いた指輪……お金じゃ買えないだろうね。
マリンさんはうんうんと頷いてマーリヤさんに指輪を渡してさっさと帰った。私の家に到着……また指輪作りを再開するみたいなので小分けにした迷宮核を何個か渡すと満足そうに胸元から青く光る綺麗な真珠を手渡してきた。
『ルナに似合うと思って深海で採ってきたエンシェントパールじゃが、これで間に合うか?』
「は、はいっ! すっごく嬉しいですっ!」
『ほっほっほ。次はウォルに作ってやろう』
「ありがとうございますお姉様っ。ルクナ、ありがとねっ」
……マリンさんとウォーエルは並んで座って作業を始めたので、ここはウォーエルに任せよう。
さて、そろそろライズ達は話が終わったかなーとは思ったが、放置されたのは根に持っているのでまた後で。
手のひらサイズの大きなエンシェントパールを眺めつつ、手帳を開いて予定を確認……
……ふむ。特に無い。
誰かに会いに行こうか、ライズ達のところに行くか……うーん、その前に行かなきゃいけないところがあるからそこに行こうかな。




