惚れ直すわぁ……
全力で行くぞおらぁっ!
深紅の大剣に赤い魔法陣をベタベタに貼り付け、近付くだけで消し炭になるほどの超高温の太陽のような炎の兵器を振りかぶってー!
「うぅぉぉぉりゃぁぁぁぁ! 神技・ソルブレイドッ!」
『受けてたとう、蒼星覇王剣!』
魔法陣を全て起動しながら全力で振り下ろすっ!
深紅の大剣が膨張した棒付き太陽と、氷が凝縮した鋭利な一撃が衝突した。
水蒸気が大量に発生し、視界が真っ白の中で互いに追撃。
ぶん回すように振るうと微かにジュッと剣が熔けたような音がした。
このまま押し切るっ!
横をすれ違うように胴体を狙い、さらに急旋回して太もも部分に攻撃。
バランスを崩したっ!
棒付き太陽を更に肥大させてダイヤロストよりも遥かに大きく、もっと、もっと大きくっ!
「その身に刻めっ! 神技・ソルブレイクッ!」
『ぬおぉぉぉ!』
直撃。
間違いなく完璧に入った。
天輪で感じるダイヤロストは、上半身から胴体が溶けていっているのがわかる。
完全に消えるまでソルブレイクを維持しないと……ウォーエルは炎無効化で大丈夫だと思うが、真上だから熱くないのか? と思ったら真後ろに居て氷の壁で防御していた。
下半身も溶けた時に限界が来て、太陽が消えた。
深紅の大剣はボロボロに崩れ落ち、深紅の鎧も砕け散った。
「はぁ、はぁ、この剣を、砕けば……」
ダイヤロストの反応は消えている……倒せた、か。
調子こいたから身体中が痛いぞ……一歩一歩が重い。
神殺の剣を出して、ボロボロに朽ちた蒼聖剣の前に来た。
蒼聖剣はあと一撃加えればポキッといきそうなくらいに細く、剣とも呼べない形状になっていた。
神殺の剣の切先を細い部分に当てて、力を込める……
「ルクナッ! まだよ!」
「へ?」
パキッと折れたと思ったが、柔らかいゴムを押したような……ウォーエルの声に少し焦り、振りかぶってもう一度斬り付けた。
斬り付けたのだが、断てずに剣が伸びた……?
『……リザ、レクション』
伸びた剣から聖なる力……?
はぁぁぁっ!?
嘘だろ! 確かに死んだぞっ!
神殺の剣でベシベシ斬っているのだがビョンビョン伸びる。どうなってんだよ……斬れねえ。
あー斬れねえ。
ベシベシ。
あー斬れねえ。
……んだよこれ、剣じゃねえだろ。
これが核とかずっと命をぶん回してだんだろ?
絶対馬鹿だろこいつ。
「ルクナッ、回復するわ」
「おかぁさーんっ! これ物理無効になってるーっ! おかしいこいつやだもぅーーーー!」
「魔法は?」
「魔力切れたぁーー! 完全回復まで五分だからおねがーーーいっ!」
「五分で回復する方がおかしいわよ……わかったからジタバタしないの」
「だってだってだってっ! 馬鹿だよこいつっ! 核で戦ってんだよっ! なんかすっげー悔しいぃ」
斬れないから寝っ転がってジタバタしているとウォーエルが私の手を持って、端っこまで引き摺ってくれた。
その間にボロボロの剣は溶け出し、水銀のように丸くなっていた。
ぎゅーってしてー。
生身の身体が不便なの。
幽霊時代はどんなに動いても痛くも痒くもなかったの。
どんな攻撃もすり抜けるから最強の名を欲しいままにしていたせいで不便なの。
痛いの。
身体が痛いのーー。
「もぅ、可愛いわね。五分経ったら起きるのよ……あと四分三十秒ね」
「ふぐぅ……ママ、頑張って」
「……元気が出たわ。一分延長してあげる」
「らびゅー」
私の頭を撫で、ウォーエルは部屋の中心で白銀の魔法陣を展開した。
魔法陣を使うなんて珍しい……張り切ってくれているのかな。
魔法陣が輝き、手には……指輪?
いや違う……ナックルダスターだっ!
身体の態勢を変えてっと、座椅子を出してっと、お茶を出してっと……
お菓子は無いが我慢しよう……っ!
ウォーエルさんが今チラリと私を見て、チョキを自分の目に向けてから私に向かってチョキを向けた……みーてーるーぞーの合図だ……ごめんなちゃい。まだ魔力回復中なの。
ダイヤロストは形を変え、また同じ騎士の姿だが……剣がさっきよりも小さい。私の攻撃はちゃんと効いているということかしら?
『子供の女神でも、ここまで強いものなのか……危うく死に掛けた』
「あら、本当は死んでいるのではなくて?」
『フハハハッ! 女神の母だけあるなっ! 確かに我は死んでいる。だが、我が志は絶えていないっ!』
「その志とやらをわたくし達は知らないわ。教えてくれる?」
『愚問。我と戦えばわかる』
「あらあら、娘はわからなかったみたいよ。騎士なら言葉で伝えないと……モテないわ。氷結界」
……細かい氷の粒が一定間隔で配置された。しかもこの部屋いっぱいに……もちろん私の目の前にもある……つんつん。ちべたい。
『我が剣は万物を断つ至高の刃! 蒼星断裂剣!』
ダイヤロストの乱撃が飛び交い、壁まで届いた斬撃は宝石を潰していた。
ウォーエルは歩きながら斬撃が当たる寸前でふっと消え、転移を繰り返してダイヤロストの横に立った。
まるでお散歩中に会った知人に軽い挨拶をするように腕を上げ、ダイヤロストの身体にコツンと拳を付けると……
──ドゴォンッ! 鼓膜を響かす轟音と共に、ダイヤロストが吹っ飛んでいた。
「……暑苦しいわね。主のいない騎士はなぜこうも面倒なのかしら」
ウォーエルが腰に手を置いて、ダイヤロストを見下ろすようにアゴを上げた。
ウォーエルさまぁーーーー! 素敵よぉぉぉ! 写真写真っ! 私はウォーエルさまを写真に収める役目があるのよっ!
『なん、だ、その力……ただの不死者ではないな』
「そうね。エルフが千年生きるとハイエルフになるように、人は寿命を超えては長く生きると仙人になると云われているわ。女神を娘に持つ仙女って、最高じゃない?」
『……警戒すべきは、こちらだったか』
「そうでもないわ。女神の一撃の方が強いのよ。体感したでしょ? 神級魔法を」
『あぁ……だが、荒削りだ』
「だから良いのよ。あと二分で貴方は死ぬわ」
『その根拠は?』
「わたくしの娘がやる気を出すのよ。それまで遊びましょ」
ダイヤロストが起き上がった瞬間、笑顔のウォーエルが懐に転移……トンッと軽く飛んでダイヤロストの顎に拳を当てた。
──ドゴォンッ! 触れた瞬間には巨体が真上に吹っ飛んでいて、更に上に転移したウォーエルが拳で迎え……爆音と共にダイアロストが急降下。
だが地面に触れる前に真横に転移した仙女様が少し振りかぶって殴った。
──ボゴォン!
壁にめり込む青い騎士が可哀想に見えてきた。
痛そうに手を払い、腰に手を置く仙女様に惚れ直してしまうよ……
なに? 人差し指を立てた……あと一分って事?
はいはい片付けますよ。
「よし、回復したかなー」
腕をぶんぶん回して準備運動。
今回は……壁の宝石を使うか。
駆け足で壁に触れながら宝石の魔力を吸収していく。目指すは千個っ!
おーりゃー。
──ドゴォンッ!
壁がビリビリと悲鳴を上げるように軋むとか、迷宮が壊れないかと心配になるよ。
恐らくウォーエルの仙術は、私の魔力と気を合わせた魔気発勁の最上位版……氷魔法の他にこんな隠し玉を持っているなんて、素敵過ぎる。おまけに短距離転移も使えて、可愛くて、色気があって、完璧過ぎるよ……
「そろそろ終わりね。時間切れよ」
『まだ、まだだ……我が剣は折れてはいない!』
「騎士道なんてどうでも良いわ。わたくしが興味あるのは娘だけよ……影縛りの術」
『な、に、動けん……』
「楽しかったわー、蒼星の騎士さん。見せて頂戴、わたくしの女神様」
「おっけー! 方向よーしっ! 出力よーしっ! 発射準備完了っ!」
──キィィィィィィィィン!
宝石の魔力を吸収した神透器エーテルバスターが甲高い音を立てて輝き、迷宮の壁が高出力に耐えきれずにヒビが発生していく……
もう、ロックオンしたから逃げられないよっ!
さぁ仙女様っ、私の後ろという特等席にいらっしゃいっ!
『……ハハハハッ! 面白いっ! 迎え討とうぞっ!』
ボコボコの鎧になったダイヤロストが剣を構え、最大級の力を練り始めた。
もう、遅いよ。
「食いやがれっ! 神滅魔法! エーテル・ラストリア!」
──カッ! と視界が真っ白に染まり、大量の魔力が神気に変換され直線上に放たれた。
神の一撃は理をねじ曲げ、破壊を求めれば思うがままに破壊し尽くす。
宝石という大量の魔力タンクのお蔭か、試し撃ちの時の何十倍もの威力を出していた。
『────っ!』
「女神じゃなければ、負けていたかもね。バイバイ」
そして光が収まり、ダイヤロストが居た方向には何も無かった。
迷宮の壁さえも破壊して、真っ黒い空間だけが残っていた。
「……凄いわね。迷宮の裏まで壊すなんて……」
「ふぅ……強かったー……」
……疲れた。
その場に座って黒い空間を眺めていると、ウォーエルに後ろから抱き締められてほっぺにチューしてくれた。
「自慢の娘だわ……女神よ? 女神様なのよ? 凄過ぎるわ」
「えへへ、私だって仙女様がおかぁさんとか自慢過ぎるよ」
「わたくしの女神様」
「私の仙女様」
「はぁ……さいっこうねっ」
「うんっ! でもこれ大丈夫なのかな? 落ちたら戻れなくなる?」
黒い空間を解析すると、虚無と出た。虚無とか幽霊時代の私の夜時間みたいで怖い。
ウォーエルもよくわからないみたいで二人で眺めていると、最初にダイヤロストが居た場所の奥が開いた。扉があったのね。
「恐らく核がある部屋ね。二人を呼びましょうか」
「うんっ、嬉しいなぁ……おかぁさんと一緒に戦えたなんて……正直女神化していなかったら倒せていないかも……」
「そうねぇ……わたくしだけでは決定打に欠けていたから、神位の魔法が使えたのは大きいわ。確か地下には神器もあったと思う」
「楽しみだなぁー。どんなお宝があるのだろっ」
休憩室に戻る為に扉を開けると、すぐ目の前にリリとモニカちゃんが居てびっくりした。
「ルクナッ! どうだったっ!? 凄い音だったけれどっ!」
「勝ったよー。みんなで最深部に行こー」
「神級の魔物なんでしょ? せんせすごーいっ! ウォーエル様もすごーいっ!」
「ケガは? どこも痛くない? 正直に言って?」
「大丈夫だよ。おかぁさんがめちゃんこ凄くて攻撃に専念出来たし。話は屋敷に戻ってからっ、ね?」
モニカちゃんを抱き締めてモニカ成分を補給した後……半壊した舞台に戻ると、モニカちゃんはキラキラと私を見ていてリリはドン引きしていた。
そして、最深部……この迷宮の核があるであろう扉を開けて、私とウォーエルを先頭に中に入った。
中には……
……
……
……ん?
「えっ……」
「あら……」
「ど、どうしたの?」
部屋の中心には七色に光る大きな核があった。
それはまぁ良い。
その横には……大きなベッドがあり、明らかに文明の先の先を行くような機械やら、豪華な家具が置いてあった。
それも、まぁ、良いとしてよ。
『ぁ……ママ、久し振り』
すっっっごい、見覚えのある人形がこたつに入りながら雑誌を読んでいた。




