ダイヤロスト
リリとモニカちゃんに見送られ、ウォーエルと一緒に休憩室を出た。
ふかふかな絨毯の階段を降りて、これまた豪華なダンスホールのような広場に圧倒された。
熟練の職人が作ったような大きなシャンデリアが高い天井にドンっと存在感を発揮していて、周りの壁には何千個あるかわからない宝石が散りばめられていた。
「このダンスホール、欲しいわね」
「うん、すっごい綺麗。これが迷宮とか変な感じ……誰か住んでいそう」
「そうねぇ……ここまで来るのは初めてだから、驚きだわ」
「あれがダイヤロストかな?」
「えぇ……そろそろ来るわ」
「うん。ここは勿体ないけれど、最初から飛ばすよ」
赤い魔法陣を三つ展開……ははっ、女神になった影響か合成時間が恐ろしく速い。
詠唱破棄も出来るから、これなら負担が少ないよ。
更にウォーエルが増幅魔法陣をダイヤロストの周囲に…何個あるのよ。
『来た、か……』
奥の岩が浮き上がり、形を変えていった。
岩が重なった人型……ゴーレムになった。でも、一撃で終わらせる。
「悪いね。終末の炎」
魔法陣が輝くとダイヤロストを中心に青い炎の柱が上がり、増幅魔法陣によって爆発をしながら柱がどんどん太くなっていく。
「ルクナ、こっちに来ているわ」
「おかぁさんが増幅魔法陣出し過ぎたせいじゃない?」
「わたくしのせいでは無いわよ。壁の宝石、これは魔力を乱すものね」
「えー、仕掛け付きのボス部屋って最悪……」
「でも効いているみたいよ。ダイヤロストの力が減っていくわ」
「それなら良いけれど……あのシャンデリアからも魔力出ていない?」
前は青い炎で見えないのだが、天輪を起動しているので周囲の魔力の流れがわかる。
確かにダイヤロストはこのまま行けば消えるのだが、壁の宝石やシャンデリアから魔力が出てダイヤロストに向かっているのよ。
「まずいわね。宝石とシャンデリアを壊さないと死なないわ。あのシャンデリア欲しかったのに」
「同意見。そろそろ炎が終わるから、二手に別れて壁を攻撃しよう。シャンデリアは頑張って収納」
青い炎が白くなり、消えていった跡に残ったのは……青い、核?
それに魔力弾を打ち込むが弾かれた。
そんな簡単に行かないかと思いながらウォーエルと頷きあって壁を攻撃していく。
おいおい、魔法が吸収されるぞ。氷を出したら青い宝石が吸収して、炎を出したら赤い宝石が吸収してしまう。
無属性なら、壊れるが硬いっ!
「あら、困ったわね」
「おかぁさんっ! 無属性なら壊れるっ!」
「でも硬いわ。わたくしはシャンデリアを狙う」
「よろしくっ!」
ウォーエルがふっと消えて、シャンデリアの上に乗っていた。
短距離転移は見える範囲までなら転移出来る戦闘向きの技……あれ羨ましい。
『女神と不死、か……形状変化』
壁をハンマーでゴンゴンしていると、魔力の流れが変わった。
ダイヤロストの方を見ると青い全身鎧の騎士になっていた……氷の鎧、いやこれは氷の鎧と言っていいのか……魔陣武器の類いだぞ……
片手で持つ巨大な大剣が冷気を纏い、青白くなっていく……背中がゾワっとする程の冷気……あっまずい、ちょー強い。
「決闘をお望みかしらね。よしっ今回は壁を壊す物理特化……神鋼の重戦士っ!」
わー……女神の影響ってほんと凄い。
魔法陣に乗ったら直ぐに魔陣武器が出る。
今回は重苦しい全身鎧を装備して、ダイヤロストの大剣に負けない戦斧ルクナアクスを持った。
斧を横凪に振るうと、斬撃が壁まで到達する……よっしゃっ!
天輪を起動して上の様子を探るとウォーエルさんが悩み中……それ壊してくれないと永遠に戦う羽目になりそうだから早くしてね。
『我が名は蒼星を守護に持つ蒼星騎士ダイヤロストッ! 貴公の名を訊こうっ!』
「えっ……あー、えーっと! わが名は野良女神ルクナ・レド・ノースマキナっ! 母と共に貴殿を討ちに来た!」
「……」
『面白い。女神に挑むのは初めてだ。決闘を受けようっ!』
「ぉぅっ、いざ尋常に勝負っ!」
お互いに構え、緊張の糸がピンと張っている状態なのだが……こんな奴だっけ? という事に頭がいっぱいで集中出来ない。
そもそもライズの記憶で見た氷霜王ダイヤロストは騎士では無くてフロストダイヤモンドの身体を持った大きなゴーレム型の魔物だった。
蒼星ってなんだよ、そもそもこんなハッキリ喋らねえし……ウォーエルさん、ダイヤロストに気を取られて手が止まっていますよ。わかるよ、誰だこいつって思っているのでしょ?
『氷を警戒しているところをみると、貴公は我を知っているようだが』
「えぇ、一度召喚で呼び出された姿を見た事がある。前はフロストダイヤモンドの身体だったけれど?」
『顕現が不完全だったのだ。この部屋の魔力で本来の姿を保っているが、説明は不要みたいだな』
「勝負が着く前にこの部屋の宝石が無くなる方が早いかもね」
『安心したまえ。あれは再生する』
「は? まじ?」
構えたまま移動して壊した宝石を見ると、奥から新しい宝石が出てきている……おいおいまじか。
ウォーエルが側まで転移してきて、宝石を見て小さくため息を吐いた。
「ルクナ、シャンデリアも再生するけれど再生中は魔力が行かない。わたくしはシャンデリアを攻撃し続けながら増幅魔法陣を壁に設置していくから、存分に暴れなさい」
「わかった。力でねじ伏せるよ」
ウォーエルは再びシャンデリアまで転移していき、攻撃を加え始めた。
正面突破で攻略するしか無いのかねぇ……
『相談は済んだようだな。さぁ、殺し合おうぞ』
「私も、久し振りに暴れたかったんだ。行くよ」
先ずはダイヤロストの前まで距離を詰め、大きく振りかぶって全力で斧を振り下ろす。
ダイヤロストは斧に合わせるように下から掬い上げるように大剣を振るった。
ガキィンッ! と耳の奥が痛い程の衝突音が鳴り、一瞬の拮抗……その時、兜で覆われたダイヤロストの目と合った気がした。
喜び、その一点の感情だけが見えた。
『フハハハハッ! 剣を止められたのは初めてだっ! 蒼星覇斬っ!』
斧を弾かれたと思ったら、青い剣閃が目の前に来ていた。
避け切れない……斧を盾にして大剣を受けながら後方に飛んで態勢を立て直し、斧を槍に変えて魔力を込めて思い切りぶん投げた。
その間に赤い魔法陣を重ねていく。
「炎爆葬!」
炎の弾を撃ち出し、連続して爆発させながら重戦士を解除。反応速度が悪過ぎてだめだから機動力があって広範囲攻撃型……ボマーかな。
『氷宴』
やばっ、爆発が凍るとか馬鹿じゃん。
でも技を使わないと防げないのなら効果があるはずっ。
軽鎧にゴーグル、両手にルクナボムを持っていざっ!
「ほいっ、ほいほいほいほいっ!」
魔力の塊であるルクナボムを投げて魔力爆発をさせると、ダイヤロストの動きが少し止まる。ついでに近くの宝石が砕けるからこれが最適解か? 投げまくろうっ!
ほいほいほいほいほいっ。
『多彩な攻撃、見事。リフレクトシールド』
「えっ? ぬわぁぁぁぁぁ!」
ルクナボムが跳ね返されて私が爆発に巻き込まれた。
ダメージは無いが、気持ち的に心にダメージが行くね。
あの盾に当たる前に爆発させるっ! 爆風が跳ね返されたぜっ!
それなら全方位爆発っ!
部屋ごと吹っ飛ばす勢いで百個以上爆弾を生成。
『なに……』
「はっはっはー! 吹っ飛びやがれっ! 百連爆破っ!」
──ボボボボボッ!
魔力爆発なので花火みたいにはならないのだが、部屋全体を攻撃出来たのはデカい。
この爆弾は一個が上位の上の方の威力なので、普通の人なら跡形も無く消し飛ぶ。
これでほとんどの宝石は壊せたのではないか?
『見事……破壊の女神だったのか』
ウォーエルが増幅してくれたお蔭でダイヤロストの青い鎧が砕け、隙間から煙が出ている。
宝石からの魔力補給も極端に遅いし、シャンデリアからの供給も無い……
……それなのに、なんで鎧が修復していくんだ?
再生能力はそんなに早くないはず……魔力の供給元が無いのになんで?
それって……
「……回復魔法?」
『流石は女神だ。我が剣は邪悪を滅し、聖なる氷で傷を癒す聖剣……この剣が折れぬ限り、我は戦い続ける事が出来る。我が剣は騎士の誇りであり、命だ』
「命……じゃあ、その剣を折れば私の勝ち?」
『そうだ。この蒼聖剣を折れるのなら、な』
……ウォーエルさん、シャンデリアに腰掛けて足をぷらーんぷらーんしてさ、疲れたからって観戦モードに入らないでよ。
はいはい、わかっていますとも。
ダイヤロストは一騎打ちをお望みだから大人として身を引いているのね。
「やってやるよ。魔陣合成・紅の戦乙女」
炎の魔陣武器を合成した。
深紅の鎧に炎の翼を広げ、深紅の大剣を装備した。
やってやろうじゃねえかっ!
自慢の剣をバッキバキに折ってやるよっ!




