召喚の儀式をしてみよう
さて、侵入開始だ。
幽霊なお蔭で昼間から忍び込めるってかなり有利よね。
案内図を眺めると、図書館、ダンスホール、劇場が二つ、庭園など……設備が多いのは良い事だが王侯貴族が独占しているようにも見える……今度開催している時に見るとして、上に行ってみよう。
昇降機があるが、私一人では動きそうにないので階段を使う。
三階くらいまでは城というよりも、総合施設。貴族の役所って感じだ。
二階三階は各部署の人が忙しく働いていた。
ここに帝国の機能が集約しているのは楽だが危険だ。ここは出入りが激し過ぎる……警備も出入りしている人を全て把握していないだろうし、私が敵なら真っ先にここを爆破させるね。
四階は会議室かな、スルー。
五階、六階は客人を持て成す場所だね。ライズがこの階に居るから。
まぁここに重要な物は無さそうなのでスルー。
その上は王族のエリア……千年後とは違うから建て直したのかしらね。
……おっ、忘れていたが昨夜の女子の反応あり。まぁどうでも良いや。
宝物庫は王族エリアだがまだ行かない。
更に上は……二股に分かれていて、片方は立ち入り禁止で封印されているわね。
あやしーさー。封印をヒョイっと抜けて上がってみた。また封印、下り階段を降りてまた封印。上がってまた封印。
結構道のりが長いわね……最後の扉も封印されているが、すり抜ければ良いので頭を出してみた。
おーここは頑丈な部屋の中、かな。
床には淡く光る大きな魔法陣があり、他には何も無い。
魔法陣を確認しながら縁を歩いていく……一周してみての感想、真似できる。
魔法陣に使われている物は魔法金属の粉末……これを書くだけで何千万も費用が掛かっているし、何年も掛けて作った貴重な資料だ。
これの逆流をすれば良いとあるが、試しても成功するのか?
人も来なさそうだし普通の流れを試してみよう。
でも人が召喚されたら面倒だから、召喚対象の部分を書き換えておくか……便利な物、いやでも便利な物を運ぶ手段が無い……でもでも頑張ってデスちゃんまで運べば良いか。
後はここに召喚されるように……こんなもんかな。
よし、便利な物を召喚する術式に変えたので解析しながらいざ起動。
……
……結構神気使うな。
……魔法陣がピカッと光って、何か筒のような物が現れた。
何これ。
解析……水筒。
水筒て……素材はかなり良いが、可愛くないので部屋の隅に置いておく。
私でも使える事がわかったので、この召喚陣に頼らず自分で陣を組んでみよう。
この召喚魔法陣に私の汎用魔法陣を重ねるとあら不思議、複製できるのだ。
早速複製した魔法陣を空中に浮かべて起動……にゅるっとプラスチックで包まれたスライムが出て来た。
……何これ。解析しながら開けてみる。
あぁ細かいゴミをこのスライムで取るお掃除グッズなのね。
ライズにあげよう。
このプラスチックは稀に見掛けるが、ちきゅうのゴミだったのかしら?
ふむ、人で試したいが……まだダメか。
でも座標はこれで良いのか?
座標がわかる物が出たらアズサに確認、で良いか。
逆流は出来るが往復させて破損が無いかも試さないといけないし……あーやる事いっぱい。
でもアズサの為に頑張らないと。
最悪月に連行するしかないけれど。
……戻るか。水筒とスライムは……まぁせっかく神気を使った物だし持っていくか。
来た道を戻りながら考える……アズサはこっちに来てから三年くらい歳を取っているから、三年前の身体に戻す必要があるかもね。
座標は時間も書かれているし、もしこれを弄ったら大変な気がするもんなぁ。
……
……戻ってきた。
ライズの所に行こう。
『ライズー、開けてー』
「ん? ちょっと失礼……それ何? あれ? それもしかして、水筒?」
『デスちゃんに渡してねー。あっこれ、ちきゅうから召喚したの』
「はぁぁぁっ!?」
「ら、ライザ様どうされました?」
「……いや、なんでも、ない。デスちゃん、これ」
『? ママ、おかえり』
「ママ……?」
中に入ると、昨夜の女子が居た。
デスちゃんがソファーに座って、その対面に女子が居るからお話していたのかしらね。
「ルクナ、後で教えてっ、今メイリア皇女がデスちゃんと話したいって来ててさ……」
『ほいほい。メイリア皇女ねぇ……デスちゃん、どう?』
『きょうみ、ナイ』
「ライザ様? 誰と話しているんです?」
「あー、デスちゃんのママが来たから……えっ、行かないでよ。終わったから私も行くよ」
「……女神様が、来ているのですか!?」
「あ、もう広まってんの? 元はと言えば二人があんな所に居るからでしょ……えっ、ここでそんな暴露しないでよ……二人に会うの気まずいじゃん……」
「ライザ様っ、女神様が私を助けて下さったのですかっ!」
「いや、デスちゃんだよ。なに? はいはい。メイリア皇女、女神様はデスちゃんと帰るってさ。じゃあ私も行くね」
「待って下さいっ! ライザさまぁぁぁぁぁぁぁ!」
ライズが窓を開けたので、デスちゃんを抱えて窓から出たらライズも付いて来たので一緒に宿に向かった。
皇女とか面倒なのよね。ローザでさえ最初は嫌だったんだから。
『じゃあアズサの所に行こっかー』
「うん、メイリア皇女がお礼言ってたよ。伝えたからね」
『ママ、オカネ、くれなかった』
『うわっ、残念だねー。もう城に用は無いから行かないし会う事も無いからどうでも良いよ。デスちゃんには私からプレゼントするねっ』
『ママ、ありがと』
「はぁ……これからしつこいだろうなぁ……しばらく午前中にやるか」
『ところで聖女業って何してんの?』
「城のベッドに居る病人を治すだけだよ。普通は一日付きっきりだけど、私は前世の記憶で身体の構造とかわかるから直ぐ終わるんだ」
『ふーん。患者はいっぱい居るの?』
「居ないよ。帝国に申請して、大教会が承認したら治療を受けられるから週に二人とかそんなもん。有事の時に沢山働くからじゃない?」
その有事が魔王討伐ってやつねー。
じゃあ別に有事にさせなきゃ良いだけで……
『そうだ、勇者って迷い人?』
「あーうん、帝国が召喚した転移者だね。もう戻れないのによくやるよ」
ほうほう。じゃあその勇者はあの召喚魔法陣を使った訳ね。
良い実験台が出来たぞ……ふっふっふ。
宿に戻り、ライズが扉をノックすると……部屋の中からドタドタと音が聞こえて数分……
ガチャっとドアが開いた。
「お待たせっ! な、なに? ルクナ……顔怖いよ」
「ライザ様、おはようございます。どうされました?」
『……うん、とりあえず報告会を始めようか。いやその前に二人ともシャワー浴びてきて』
「……もしかして、夜、来た?」
『ううん、来ていないよ。二人とも寝ぐせ酷いからさ』
「そ、そっか。じゃあシャワー浴びてくるね」
「すみませんまた飲み過ぎちゃって……あっこの部屋で飲みましたよっ。片付けますねっ」
エイシャが真っ先に脱ぎ捨ててあったパンティを拾い、何事も無かったように振る舞っていた。
デスちゃんはベッドとソファーを見てから、自分の椅子を出して座っていた。見ていたから嫌だよね、わかるよ。
二人がシャワーから出た後……妙に気まずい雰囲気の中、報告会が始まった。




