仲間は多い方が良いよね
夜、ライズと一緒に錬金術書を盗みに行った。
警報が鳴ったと思うが騎士団の詰所で鳴ったみたいなので、大きな騒ぎにはならなかった。
直ぐ側で見ていたが、荒らされた形跡は無いから誤報という事で片付けられた。
『ライズー、誤報で片付けられたよー』
「ありがと。これ凄いね。本物だ」
『読まない時は収納鞄に入れておいてね。一応呪本だから』
「うん、そうする。ルクナも読みたい時に言ってね」
『うん、じゃあアズサの所に戻るね』
「うん……あのさ、死んでないってどういう事? 本当は生きてるの?」
『ミナには言わないでね。本当は生きているけれど、魂だけ飛ばされたんだ。その内戻るつもり』
「……戻ったら、会いに来てくれる?」
『ごめんね、戻ったら会いに行けないと思う』
「……そっか」
すまんね。私には戻らなきゃいけない場所がある。
ここは居心地は良いが、やっぱり本体に戻りたい。
もしあれから一年経っていたら、みんな泣いていると思うし。
「言いたくなかったら言わなくて良いけど、どこに帰るの?」
『私の身体はノースギアの迷宮の中にある。そこは普通じゃ行けないから、月の力を借りて行くつもり。他に方法があれば良いけれどね』
「その時は、送ってくよ」
『お願いね。世界樹がその入口だから、世界樹まで送ってくれたら良いよ』
「……でもノースギアは、近いよね?」
『うん、ノースギアはね。時代が違うとしたら?』
「……」
『ふふっ、そういう事。じゃあ明日ね』
アズサには言っているから、ライズだけ言わないってのも可哀想だからね。
ミナカには、ちゃんとお別れしないと……生まれ変わって私を襲う女になってしまう。
もう手遅れだと思うが、やれる事はしないとね。
もう一度城の様子でも見て行くかね。
……
……城に到着したが、夜中だから静かだな。
見回りの騎士がいるくらい。ついでにアークイリアでも見に行くかね。
階段を上がって王族の住むエリアに到着。
えーっと、この部屋かな。
にゅるっと扉をすり抜けると、少し明るい。まだ起きているなんて悪い子ね。
部屋の真ん中で目を閉じて精神統一をしていたので、目の前に座った。
……
……
……寝ていないよね?
……
……目を開けたな。
「ぁ……」
『やっほー。ルクナちゃんだよー』
「……さっきは、悪かったわ。なんか凄いムカついていたの」
『不甲斐ない奴らばかりだなーって?』
「……そうね。強い人が居なくて苛立つのに、いざ強い人が現れると認められないって……笑っちゃうよね」
『ばかだねー。それを一緒に笑ってくれる人は居る?』
「……居ない。ルクナの言葉で目が覚めたというか、私って一人なんだな……って」
『じゃあどうするの?』
「えっ?」
『一人なんだってわかったら、どうするの? それで終わり?』
アークイリアは下を向いて、涙を流した。
強がっちゃって、なんか重なるなぁ。
「どうせ、誰も友達になってくれない。それで終わりよ」
『ふーん。アークイリアは笑わないしキッチリし過ぎているから息が詰まるかもねー』
「はっ、そうよ。私は国民の模範でいなければならないの」
『友達居ないくせにー?』
「う、うるさいわねっ! 居なくても模範になれるわっ!」
『ぷぷっ開き直ってやんの』
「くっ……腹立つ幽霊ね……」
『ふっふっふ、アークイリアがどんなに怒っても私には指一本触れられない。悔しかったら殴ってみたら? ほれほれー』
めっちゃ殴ってきたが、スカッスカッと空を切った。
相当悔しいのね。
「はぁ、はぁ、腹立つ……」
『あー酷い王女だねー。私は君を抱き締めたいってのに殴るだなんて』
「抱き……あれ凄く恥ずかしかったっ! まるで私が子供じゃないっ!」
『だってあの時しか抱き締められなかったんだもん。私には身体が無いから』
「だからって……別の場所でやれば良いでしょっ!」
『ほんと? 良いの? じゃあさっ、また憑依するから明日遊びに行こっ。迎えに来るからっ』
「は? 嫌に決まってんでしょ」
『えーっ! 別の場所なら抱き締めて良いって言ったもんっ! 言ったもんっ!』
ベッドに上がって駄々っ子全開でぱたぱた……幽霊だから無音なのだが、ベッドの上なので寝るに寝られない状況を作ってあげよう。
「……どいてよ。寝られないじゃない」
『じゃあ一緒に寝る?』
「いやよ。幽霊と寝るだなんて嫌だし気が散るから帰ってよ」
『帰るってどこに?』
「さっきの子のところよ。友達なのでしょ?」
『友達だけれど帰る場所じゃないよ。幽霊だから寝ないし……アークイリアは友達が居ないから私がここに居ても問題無くない?』
「あっ思い出したわ。あなたの事は見えないし聞こえない。さっ寝よ」
私の上にドカッと横になった。
そんな事されたら憑依しちゃうぞ。
……
……あっ、本当に寝やがった。
まぁ良いや、アズサのところに戻ろう。
……
……
……誰も居ない。
……デスちゃんはまだミナカの家かしらね。
……
……アズサとエイシャは朝に帰って来た。
「るくなぁ……ごめん……回復、して……」
「すみ、ません……また、飲み過ぎ、ました……」
『あのさ……まぁ良いや、ダブルヒール』
「はぁ〜〜ありがとっ」
「ありがとうございます」
ダメ人間とダメになりつつあるエルフは帝国に行ってもこの調子なのだろうね。
エイシャは一度エルメルンに帰ってハイエルフに私の事を報告した。
幸運の女神という事で、精霊神とは違う形で歓迎したいと言われたが断った。
断る事も想定して、エイシャは私の側に居るらしい。つまりアズサと共に行動するので……まぁ、仲良くなって良かったね。
『今日は朝から帝国に行くから、二人部屋でも良いから良い宿にしてね』
「うんっ。帝国も楽しみっ。ねーエイシャっ」
「えぇ、楽しみね。アズサっ」
『……イライラするから私の前ではいちゃいちゃしないでね』
「わかってるって。ライズちゃんはいつ来るの?」
『もうすぐ来るよ。私はデスちゃんに帝国に行くって言いに行くから、とりあえず二人ともシャワー浴びて化粧しておいて』
「はーい」
「了解です」
ったく、デスちゃんのところに行くか。
あっその前に、迎えに行くと言ったのでアークイリアに会いに行こう。
……
……城に到着して、部屋を覗いてみた。
あら、居るじゃない。
「遅い」
『ごめんごめん。行こっか』
なんだ、用意も終わって行く気満々じゃん。
軍服かと思ったが普通の服も着るのね。
早速行こう。
「どこに行くの?」
『先ずは友達の家に行って、その後は友達が泊まっている宿に行くから』
「……わざと友達って言葉使っていない?」
『うん』
「腹立つ幽霊ね」
『短気な王女ね』
「誰のせいよ」
『私のせいよ』
罵り合いながらオレイドス家に到着し、デスちゃんに帝国に行く事を伝えた。
『ミナ、がくいん、デス居ないと、泣く』
『じゃあお留守番する?』
『うん、ミナのふくと、ケンゾク、作る』
『いいこいいこ。帰ったら遊ぼ』
『うん、ママ、ダイスキ』
『えへへ、可愛いなぁ……じゃあね』
親離れが始まっている。
泣きそうだ。
人形は心の成長が早いのだろうか……
門で待っていたアークイリアと共にアズサの泊まっている宿に到着した。
『アズサー、私の友達のリアちゃん。短気だけれど良い子だよ』
「ルクナが見えるなんて幸運だねー。私アズサ、よろしくリアちゃん」
「私はエイシャ、よろしくリアちゃん」
「リア、ちゃん……」
「……ルクナ、もしかして連れてくの?」
『うん。友達居ないから口は硬いよ』
「……ルクナ、誰と誰が友達だって?」
『私とリアちゃん。ライズ、憑依させてー』
「あっ、うん、良いよ」
ライズに憑依して、アークイリアを抱き締めてあげた。ジタバタすんな。キスマーク付けんぞ。
「リアちゃんお待たせ、私が恋しかった?」
「んなわけ無いでしょっ、離れてっ、恥ずかしいからっ」
「やーだ。私はしつこい女なの。ねぇリアちゃん……聞いて」
「……なによ」
「来てくれてありがと。すっごい嬉しいっ」
「……はぁ、わかったから離れて」
「やーだ。私の事も抱き締めてよ。じゃないとちゅーしちゃうぞー」
「それは本当にやめてっ、わかったからっ。抱き締めるからっ」
抱き締め返してくれたので、離れていいこいいこ。
あっ、アークイリアの顔が赤い。ふふふっ、嬉しいのに素直じゃないねぇ。
はーあ、短気な王女を捕まえるほど私は飢えているのか……自重しないと……
「ちょっとライズの化粧するから待ってねー」
「はぁ……調子狂うわ……あなた達はヴァン国民? じゃなさそうね」
「私は流れ者の探索者だよ」
「私はエルメルンの占い師」
「……接点がよくわからないわね」
「私は死に掛けているところをルクナに助けられたの」
「私はハイエルフ様よりルクナ様のお側にいるように命じられているの」
「アズサは良いとして、ルクナ様?」
「ルクナ様は幽霊ではなくて、女神様よ」
「もっとましな嘘を言いなさい。寝癖を直さない女神なんて居ない」
「それはライズだからっ。あっ、粉が目に入ったじゃんっ! うぉぉぉぉぉぉ!」
化粧も終わったので、憑依解除。
憑依は便利だが、やり過ぎると人肌恋しいが暴走しそうで怖い。
現にさっきとかライズの身体でチューしようとしてしまった。
ライズは嬉しそうだったがミナカに怒られる……あっ先にミナカにチューすれば良いのか。
宿をチェックアウトして、王都の外にやってきた。
「じゃあ準備良い?」
「準備? 何を準備するの?」
『今から帝国に行くのよ。アズサーお小遣いちょうだい』
「良いよ。いくら?」
『一億』
「はーい、また稼ごうね」
『ほいほい。ライズに渡しておいて。じゃあしゅぱーつ』
ライズが転移魔法を起動して、すぐに景色が変わって帝国に到着。
アークイリアは固まっていたが、アズサとエイシャに任せよう。
『ほいじゃあアズサとエイシャは拠点をよろしく。私とリアちゃんとライズでショッピングに行こうっ!』
「「「おー!」」」
「えっ……ちょっ、ちょっと待ってっ!」
『はいはいリアちゃんは歩きながら説明するから、迷子にならないようにライズと手を繋いで』
「私が迷子になるように言わないで。ちゃんと説明しなさいよ」
『帝都に買い物をしに来たからリアちゃんも誘ったのよ』
「だからっ、なんで帝都に居るのよっ! おかしいでしょ!」
『びっくりだねー。でも大丈夫、ちゃんとお家に帰るから』
「状況を理解しようとするだけでいっぱいいっぱいよ……ライズ、貴女が転移魔法を使ったのよね?」
「うんそうだけど、帝国ではライズって呼ばないで」
「えっ? どういう事よ」
「ライザって呼んで。知っているでしょ、帝国のライザ」
「ん? 帝国の、ライザ? って……ん?」
『彼女が聖女ライザだよ』
「………………………………一旦整理しましょう」
まぁ適当に説明したらなんとなく理解してくれたから、まぁなんとか話を合わせてくれ。
『ライズー宝石屋さんとかに行きたーい』
「そこの大通りにそれっぽいのあるから行こっか。リアちゃん、何か買いたいものある? アズサが奢るって」
「特に無いわよ。買いたい物があるのでしょ、付き合うわ」
『リアちゃんには私がプレゼントをしてあげるねっ』
「はっ、幽霊が何をくれるのかしらね」
「ルクナのプレゼントっていつもエグいよね。入るよー」
「いらっしゃいませー」
「私は適当に見ているわ」
『ほーい』
「選んで良いよー」
入った所は一階は素材関係で二階が貴金属。高いのはガラスのショーケースに飾られているのは千年前とそんなに変わらない。
ふーむ……変わらないのは良い事だ。
さて、物色しよう。
一階の素材屋は薬草もあるから嬉しいなぁ……妖精国産もある。
『ライズッ、これとこれとこれとこれっ!』
「あー……私は買う物無いし憑依して良いよ。ルクナなら安心して身体を預けられるし、よく寝れるんだ」
あら優しい。
さては腕時計が欲しいのね。
良いだろう私の大人買いを見せてやるっ。
「お姉さんっ、これとこれとこれとこれ、後は……これとこれと、太陽石ってありますか?」
「太陽石、ですか? えーどのようなものでしょうか……」
「赤くて陽の光に当たったら温かくなる石です」
「あぁ暖炉石ですかね……えーと、これですか?」
「これですっ! これの大きいの下さいっ! あと、銀円石と銀水晶を六個ずつお願いしますっ!」
「あっ……銀水晶は侯爵様以上の承認がないと……」
ライズのカバンをガサゴソ……あった聖女証。もっと可愛い入れ物に入れなさいよ……あっそうだ、ライズの物を可愛くするのも私の使命よね。
「ほいっ、これは使えますか?」
「っ……ライザ様っ! これは失礼しましたっ! もちろんですっ!」
「ただのお客さんとして来ているので気にしないで下さいねっ」
人差し指でシーってやりながらウインクすると、お姉さんはうんうんうんと頷いて何やら色紙を持って来た。
「あの……ライザ様、さ、サイン……戴けたら……」
「良いですよー。お姉さんのお名前は?」
「シオンですっ」
シオンさんねー。私がいつも書いているサインのように……素敵な笑顔のシオンさんへ、ライザ(はぁと)っと。
聖女ライザが書いたという証明に、即席の魔力印鑑を押してっと。
「はーい、どうぞっ」
「わぁっ! ありがとうございますっ! 家宝にしますっ!」
「もぅ大げさですねー。家宝にするなら豪華な額が必要ですよっ」
「ふふふっそうですねっ。ライザ様って凄い気さくな方だったんですねっ。近寄り難くて無口って噂は嘘だとわかりましたっ!」
「聖女の時は喋らないようにしています。それは何故だかわかりますかっ?」
「それは聖女の規律ですねっ」
「いいえ違いますっ、ミステリアスな女を演じているのですっ! 謎の聖女って格好良くないですか?」
「格好良いですっ! 無口な噂以上に戦う聖女とか超美少女とか沢山あるんですよっ!」
「えーもっと聞きたーい。今度私の友達と一緒にご飯行きません?」
「行きたいですっ! ぜひっ!」
シオンさんと喋っていると、アークイリアが呆れた様子で仁王立ちしていた。
もう見終わって暇なのね。はいはい。
「シオンさん、私の友達のリアちゃんですっ。めっちゃ美人じゃないですか? スタイル良過ぎて嫉妬ですよっ」
「えっ、ちょっとやめてよ……」
「いや凄い美人だなって思ってたんですよっ。リアちゃんっ何食べたらこんなに美人になれるの……嫉妬だわぁ」
「えっ、いや、普通よ?」
「普通? リアちゃんの普通が知りたーいー。はいシオンさんも一緒にっ」
「「しーりーたーいーっ」」
「ったく、調子狂うわ……ふふ、何よその顔」
「あっリアちゃんが笑ったー。シオンさんっ、リアちゃんが笑うとみんなが幸せになるんですっ。今日は良い日ですよっ」
「ほんと、良い日ですねっ! あっ店長っ! ライザ様がいらしたので店番お願いしますっ!」
「ふふっ、なによそれ」
……
……
……店主さんがお茶を出してくれたせいで、気が付いたら薄暗くなっていた。
何時間居たのだろう……無事買い物は出来たから良いか。
宿は魔力を辿ればわかるので、アークイリアと帝都を出て憑依を解除。
ライズに王都まで送ってもらった。
『ライズっ今日はありがとっ!』
「うん、私も見ていて楽しかった。リアちゃんもルクナに付き合ってくれてありがと」
「ううん、私も楽しかった。今日会ったばかりの人とも友達になれたし……二人とも、ありがと」
『ふふふー、そういえばリアちゃんって門限あるの?』
「……あるわよ。きっと騎士達が王都を走り回っているかもね」
「部屋まで、送る?」
「あー大丈夫。怒られてくるわ、じゃあね」
「待って。少し時間ちょうだい」
「時間?」
「……っと、はい。これ使って」
あーこれは切り札だな。
聖女ライザからの手紙……内容は友達の王女を連れ出してごめーんねってやつだ。
「もう、気を使わないでよ」
「聖女ライザと友達のリアちゃんは、これがあれば堂々と遊びに行ける。絶対使ってね……ルクナの為に」
「わかった……ありがと」
『ライズーありがとー。今度誰かに憑依してチューしてあげるねー』
「いや、いいよ」
『えーしよーよー。私がどれだけ飢えているのか語らせたら止まらないよ?』
「ルクナがしたいだけじゃない」
『そうだよ。リアちゃんもする? ちゅっちゅー』
鼻で笑うなや。
アークイリアと別れ、ライズにまた明日と言ってからオレイドス家に忍び込んでデスちゃんと遊んだ。
そして次の日、我慢出来なくなったのでライズに憑依してミナカにチューをした。
あれー逆だよなー……と思ってミナカに憑依してライズに本気チューをした。
そして、何故か二人に怒られた。




