始祖?
衝撃の事実が判明した。
『ふふふフフフ……』
『あ……が……がが……ががが』
『……あっ、アズサおはよー』
「……おえ、すっげぇ夢見た……ねぇルクナ、増えてる。やばいの増えてるっ!」
デスちゃんが作ったのは、数体の人形……どれも呪い人形なのだが、その中に私の呪いコレクションである五寸釘打たれ人形ゴス子ちゃんが居た。
もしかして、世に出回っている呪いの人形はデスちゃんが作ったのではないかと思った。
デスちゃんはこの子達を娘ではなく眷属と言ったのが気になったが、可愛いから気にしないでおこう。
『アズサ、デスちゃんが作ったんだよ』
『そうなの? デスちゃんすごっ』
『ふふふ、もっと、ホメテ』
『デスちゃん、この子達はどうするの?』
『せかい、ミセル、イッテ、らっしゃい』
『がが……ぎ』『が……がや』『か……か……か』
……窓が開いて、ゴス子ちゃん達はふんわり浮いて外に出て行った。
……飛べるのね。この頃は魔力があったから飛んだり喋れたりしたのだろう……後に呪いだけが残った感じかしら。
デスちゃんはまだまだ眷属を作るつもりらしい。
──コンコン。
ゴス子ちゃん達が旅立ったあと、扉がノックされた。
アズサが返事をして開けると、エイシャが居て一礼していた。
あら、木の仮面は外しているわね……いや化粧しなさいよ。
「えっと、どちらさま?」
「隣の部屋の者でエイシャと申します。昨日、ルクナ様がいらして……」
「えっ! あっ、とっ、失礼はありませんでしたっ!? 変な事されませんでしたっ!?」
「……ふふふっ、いえいえ大変お世話になりましたのでご挨拶に来ました。ルクナ様はいらっしゃいますか?」
「そうなんです? ルクナは、そこでデスちゃんとお話してますよ。ルクナー、お客さんだよ」
『じゃあここに座らせてー。お茶よろしくー』
「へいへい。あっ、良かったらどうぞ」
「では、お言葉に甘えまして……アズサさんで、よろしいですか?」
「ぅわっ、すみませんアズサですっ! 名乗らなくてすみませんっ!」
「お気になさらないで下さい。ではお邪魔致します」
エイシャをテーブルに座らせると、窓際に座るデスちゃんがエイシャをじーっと見詰めていた。
まだ根に持っているのかしらね。
エイシャは気にしている様子で、デスちゃんに一礼していた。
「デスちゃん、昨日はごめんね」
『きにしてない、なんで、こわいカメン、してない?』
「顔に傷があって、ルクナ様に治してもらったから外したの」
『ふーん、じゃあ、こわいカメン、ちょうだい』
「ごめんね。精霊樹の仮面だから、あげられないの」
『じゃあイイ、寝る』
デスちゃんは眠かったけれどアズサに眷属を見てもらいたかったから起きていたのね。
ふんわり浮き上がってベッドにゴロン……動かなくなった。
「……ねぇルクナ、デスちゃんって寝るの?」
『うん、魔力を使い過ぎたら省エネルギーモードになるの。呼んだら起きるよ』
「じゃあ寝かせてあげようか。エイシャさん、お茶でもどうぞ」
「すみませんありがとうございます」
「ルクナがライズって子には話したか聞いてます」
「いえ、まだです。ライズ様は学院に行かれました。ミナカ様が心配なのでしょう」
あら、直ぐに言うと思ったが……何か思惑があるのかしら。
まぁいいや、アズサにエイシャの説明でもしておこう。
こしょこしょ。占い師なのよー。こしょこしょ。
「……エイシャさん、お願いがあります」
「なんでしょうか」
「恋愛運を占って下さ……っ! 痛い痛い痛いっ! なにすんのっ! 抜け駆けとかじゃないしっ! ばかって言うなやっ!」
「……」
「言っておくけどね。私だって寂しいの。人肌恋しいの。イケメン騎士とかに抱かれたいの。は? 結局顔かって? そうだよ! 超美少女に言われたくねえわっ! あ? 化粧? どこに売ってんの? えっ? 一緒に? …………ほんと? じゃあ行くわ。エイシャさん、買い物行きません?」
「へっ? まぁ、ご迷惑でなければ……では身支度をしてきます。宿泊の延長もしますので、一階にて待ち合わせましょう」
二人には買い物に行ってもらおう。化粧品大人買いして来いと言ってあるので私が付いて行かなくても良いかな。
デスちゃんの隣にゴロンしていると、アズサが服を選んで少し嬉しそうだった。
『アズサ、私はデスちゃんと寝ているから色々買い物しておいでー。夜とかエイシャさんと飲みにでも行ってきて良いよ』
「えっ来ないの? 飲みにって言われても治安悪そうだしちゃんと帰るよ」
『ここの五階にバーがあるからそこで良いじゃん。行く前に化粧してあげるから』
「そうなの? 行きたーい。じゃあエイシャさんに聞いてみるっ」
『ほいほい、おやすみー』
「行ってきまーすっ!」
アズサは出て行き、この部屋は私とデスちゃんだけ。
幽霊だから眠くないので、デスちゃんに魔力補給……ちゅー。
『ママ、おはよ』
『おはよ。寝ていて良いよ』
『ママは、ねない?』
『うん、この身体は眠れないのよ。まぁライズがこの部屋に来るかもしれないから居るよ』
『カッテに、入る? 殺す?』
『ううん、私の友達だから殺さないでね』
『ワカッタ、デス、見てる』
『うん、いいこいいこ』
エイシャはライズに私の事を言っていないと言うが、ライズは謎の人形を持つ人間が気になっているだろうね。
ミナカの様子を見に行っただけならそろそろエイシャの所に来る筈で、エイシャが隣の人間と出掛ける事なんてそれこそ謎だと思うはず。
だから私だったら取る行動に、ライズも行き着く筈なのよ。
──コンコン。
……部屋の中心に歪みが発生し、黒いローブの少女……ライズが転移してきた。
ライズは辺りを見渡し、ベッドでライズを見ているデスちゃんと目が合い硬直した。
……
……
……デスちゃんはお利口さんなのでライズを見ているだけ。
ライズはそーっと目を逸らし、テーブルに視線を落とした。
そこには私のメッセージが書かれている。
勝手に部屋に入るなんて失礼ね。と。
「……ルクナ? 居るの?」
『デスちゃん、手招きしてみて』
「──ひっ」
デスちゃんがライズに手招きすると、少し後ずさってから恐る恐るデスちゃんに近付いた。
『デスちゃん、抱っこしてもらったら?』
『うん、ライズ、だっこ』
「だ、だっこ……わ、わかった……君は、ルクナ?」
『チガウ、デスです……ぶふふ、ママ、そこ』
「やっぱり、ルクナだったのか……探したよ」
ライズは少し安心したのかデスちゃんを抱っこして頭を撫でると……デスちゃんがキリキリ笑って、ライズの顔が引き攣っていた。
人形苦手なのね。ならばライズの家に呪い人形を派遣しよう。
とりあえずテーブルに座らせ、魔法の腕を作ってお茶を淹れた。
文字の会話はテンポが悪いから、やっぱり直接喋りたいなー。
「……ありがとう。あのさ、ミナに会ってやってくれない? ルクナに言った事、後悔してるみたいで」
『後悔するくらいなら言わなきゃ良かったのに。会っても良いけれど、今まで通り一緒には居られないからね』
「……どうして? 一緒に居られないの?」
『北の迷宮で私が見える人に出会ったの。その人の望みを叶えるつもりだから』
「望みって?」
『元の世界に返してあげたいんだ。迷い人なの』
「……そうなんだ……迷い人なら帝国に行くの?」
『うん。迷い人は安全だからとりあえずね。三日後に出発するから』
一緒に居られない辺りからライズが落ち込んでしまったのだが、私もいつまでもこうしていられないし早く月に行ってみたいのよ。
「……ルクナ、もう一度戦ってくれない?」
『やーだ』
「……戦ってよ。ルクナに勝ちたいもん」
『気分じゃないの。魔法教えてあげるから勘弁して。ついでに頼み事もあるから聞いて』
「魔法? なに頼むのさ」
『手出して』
今まで私の魔法は教えなかった。
別に教えなくても戦いの中で見て覚えていたから。
でも何故か魔陣武器を使わなかったのよね。隠し玉なのか、まだそこまで至っていないのか。
でももう少しで勇者をぶっ倒すし、その頃には魔陣武器を使っていた……もしかして私が教えるって事なのかしらと思ったから教えてみる事にしたのだ。
魔法の手でライズの手を包み、ライズの魔力を使って一振りの白い剣を作ってあげた。
「魔法剣? でも、構造が違う……? なんの魔法?」
『魔法陣で作った武器で魔陣武器。極めればこんな事も出来る』
結構な時間を掛けて剣を軸に手甲、鎧と形成し、やがて全身鎧になった。
ライズの魔力を使ってやったので強制的にやり方を覚えさせた。
これである程度使えるようになるけれど、練習は必要だからなぁ……行き詰まったらまた強制装備させよう。
「……うぇっ難し過ぎ……これ、強過ぎない? ルクナはこれ何分で出来るの?」
『今は三秒かなー』
「さんっ!? あー、もう遠いなぁ……こんなバカみたいな魔法使えるなんて反則だよ」
『ライズなら私を直ぐに追い抜くよ。ミナにも教えてあげてね』
「こんな難しいの私じゃ教え切れない。ルクナが教えてあげてよ」
『やーだ。ミナは聖女ライザの弟子で一番の親友。その関係が好きなの。だからミナの事はお願いね』
「……まるで別れの挨拶じゃないか」
『ふふ、しばらくは居るつもりだからね。そうだ、お願いがあるの』
「こんな凄い魔法教えてもらったら断れないね。なに?」
『金術を知りたい。エリスタ本家の秘術でしょ?』
ライズが少し考えるようにして、あぁあれか……と呟いた。
一応エリスタ本家には忍び込んで文献やらを物色したけれど、口伝の秘術みたいでわからなかった。
それに結界も多くて骨が折れるのよ、骨無いけれど。
「わかった。一回見た事あるからやってみる……でも金が大量に必要だよ」
『金ね。一キロくらいはあるけれど何キロくらい?』
「熟練すれば少なくて済むんだけどね……十キロあればデスちゃんくらいの大きさは出来ると思う」
『わかった。金を集めておくよ』
「私の方でも集めてみるよ。この魔法の価値は計り知れないし……」
『ほいほい。そろそろアズサとエイシャが帰って来るけれど、せっかくだから挨拶してって』
「いや、明日にするよ。今日はルクナに会えただけで胸がいっぱいなんだ」
『そんな事言ってどうせ魔陣武器を試したくて堪らないだけでしょ』
ライズはバレたかーと舌を出して笑った。
こういう時は可愛いのに、普段無表情だから取っ付きにくいのよね。
ライズはまた明日来ると言って、転移で帰って行った。
……
……
……おい。
デスちゃん返せよ。
寂しいじゃねえか。
知らねえぞ、家族が呪われても。




