デスちゃん可愛いわね
アズサに憑依して小休憩を挟みながら一日、無事王都に到着した。
一ヶ月くらい振りなので、王都は特に変わっていないだろうね。
王都の門の近くで憑依を解除した。
『アズサ、討伐者ギルドは入って直ぐで換金出来る場所は隣にあるよー』
「あぁ、うん、ありがと。ルクナはどこ行くの?」
『友達の様子を見に行こうと思って』
「ふーん、行ってらっしゃい。適当に宿取るから用事済んだら来てね」
『ママ、イッテらっしゃい』
じゃーねー。
アズサとデスちゃんは不用品を換金しに行ったので、私はライズの様子を見に行こう。
貴族街へ向かい、端っこのエリスタ家に到着……ライズは、居ないなぁ。また帝国かね。
ミナカの様子でも見るか……バレなければ良いよね?
こっそりオレイドス家に向かおう……まぁ私が見えるのはミナカだけなのだがね。
そろりそろり……門の陰から覗いてみた……おっ、居た居た。
おっ、ライズも居るなんて珍しい……ってなんか私と同じように門から覗く怪しい人が居るのだが……木の仮面を被って怪しいを通り越して不審者だ。
「……」
「どこへ行っていたのっ! 黙ってないで答えなさいっ!」
「ミナは私のせいで……」
「あなたは黙っていなさいっ! 私はミナカに聞いているのっ!」
あら珍しい、ミナカちゃんは怒られているのね。
あまり怒らない母親を怒らすなんて何をしたのかしら?
まぁそれよりも二人揃ってオレイドス家に居る場面を見られたのは喜ばしい事ね。ミナカの死角からそろりそろり……怪しい人もそろりそろりしてきたな。
「ごめんなさい……帰れなくなっちゃって……」
「どこに行っていたの?」
「……北の、迷宮」
「迷宮? 馬鹿にしているの? 正直に答えなさいっ!」
「だから、迷宮だってば……」
「……お父さんにバレたくなかったらこの子との付き合いはやめなさい」
「……」
「お母さんっ! ライズは悪くないっ! 私が悪いもんっ!」
「はっ、あなたは優しい子ね。呪い子と遊んであげるなんて」
「お母さんっ! ライズを悪く言わないでっ! 言わないでよぉっ!」
何の話? 迷宮に行ったの?
ミナカがこうも泣きながら荒ぶるのも珍しいから何か理由があるのだろうけれど、相変わらずライズの評価が低いなぁ……聖女ライザだと言っても信用してもらえなさそうね。
ミナカと母親が言い争っていると木の仮面の人が割って入った。
「……ミナカ様の母君、ライズ様を悪く言うのであれば黙ってはいられません」
「ちょっ、エイシャ……」
「なに? あなた何者?」
「私はエルメルンより来ましたエイシャと申します。ライズ様とミナカ様はエルメルンの王よりある任務を任されております。あなたが二人を悪く言うのであれば、エルメルンを敵に回すと同じ事」
「なに? 意味がわからないわ。衛兵を呼ぶわよ?」
「えぇ、ヴァン王国はエルメルンとの交流を望んでいる事はご存知ですか? それを母君が台無しにしたいというのならどうぞ。この紋章はエルメルンの使者の証……信用できないのなら今から城へ行きますか?」
「どういう事よ? もう何がなんだか……とにかくミナカから聞きますっ! 今日のところはお引き取り下さいっ!」
普通に考えて怪しい奴がエルメルンどうこうって喧嘩腰に言われて意味わかんないよね。
私は母親に同情するよ……
母親がミナカの手を引いて家の中に入っていった。中から大きな泣き声が聞こえ、ライズと怪しい人はその場に立ち尽くしていた。
……ミナカの気持ちもわかるので慰めてあげたいのだが、嫌われてしまったからなぁ……そうだ、アズサに頼んでなにかプレゼントでも送ろうっ。
早速アズサのところに行きたいのだが、この二人の行動が気になるよね。
じー……ぶっ、ライズの頭に枝刺さっているじゃん。取ってあげたいが触れないからそのままにしておこう。
「……ライズ様は、帰られないのですか?」
「私は何日も帰らなくたって心配はされないさ。ミナが居るから出て行かないだけ」
「そうですか……話には聞いていましたが、ここの子供は不便ですね」
「ははは、あれが親の普通の対応だよ。帰る?」
「いえ、王都に一泊していきます。ここの文化も興味がありますので」
「そう、良い宿あるから案内するよ」
「せっかくなので、ライズ様もご一緒しませんか?」
「えっ? いやいや大丈夫っ、家に帰るし」
「何日も帰らなくて大丈夫ならお願いします。エルメルンの英雄様と一夜を共にしたいのです」
「言い方よ。まぁ、断ったら家に来そうだから私も宿に行くよ」
ふむ、浮気か。
今すぐミナカに言いたいっ!
ライズが浮気しているぞー! どこぞの女と一泊だってよー! おーいミナー!
せっかくなので二人をストーキングしましょうか。
宿がわかれば話を盗み聞き出来るし。
……暇だし怪しい人を解析しよう。
エルフ族、能力は占術、星読み? 占術って事は……この人占い師なんじゃね?
えっ、エルメルンに行かなくてもこの人に占ってもらえば良いじゃんっ!
よしっ、宿を突き止めたらアズサに頼もうっ。
……
……
……おーここは徘徊で来た事がある高級宿だ。貴族御用達の宿で十階ぐらいあったはず。
……最上階の、鍵番は1010番ね。
二人が昇降機に乗ったところまで見送り、宿を出ようとしたところでアズサにばったり会った。
あっ、デスちゃん新しい帽子買って貰ってかっわいー。
「あっルクナ、ここに泊まるってよくわかったね」
『びっくりしたー。奮発したねー』
「ふっ、換金したから大金持ちよ」
『やっるー。じゃあさ、最上階が良いっ!』
『アズサ、下民、ミオロス』
「良いよ良いよそのつもり。受付済ますね」
『ほーい』
アズサが受付を済ませて鍵番を見せた。1011だから隣なのね。
早速昇降機に乗って十階へ。
「エレベーターなんてあるんだね」
『えれべーた? アズサの世界にもあるのね。ねぇねぇデスちゃーん、その帽子可愛いねー』
『アズサ、買っテくれた。ワタシ、オリコウさんシタ』
『お利口さんにしたから買ってくれたのね。偉いねー』
『ふふふ……ワタシ、エライ』
チーンとベルが鳴って十階に到着した。
豪華な絨毯にシャンデリアが素敵で、一応幽霊の私でもふかふかは堪能出来る。
……あっ誰にも見られないのならゴロゴロしよーっと。
ごろごろーごろごろーふかふかーごろごろー。
「恥ずかしいからやめなさい」
『誰も見えないもーん。ごろごろー』
「私が恥ずかしい気持ちになるのっ。あっこらデスちゃん真似しないのっ」
『ごろゴロー……ふかフカー……ママ、髪乱れた』
『縦ロールだから潰れるよねー……あっ』
ガチャっと扉が開いて木の仮面がこちらを見ていた……こわっ。
アズサがビクッとしながら木の仮面を見詰め、木の仮面もアズサをじーっと見詰めていた。
……デスちゃんが木の仮面の方を向いて、のっそり立ち上がって木の仮面を指差した。
『ママ、あのかめんコワイ』
「……人形?」
「……あっ、あはははははーすみませーん。はーい人形落としちゃったーあははははー」
『……すげえ苦し紛れだね』
──バッ! と振りむき睨まれた。こわっ。
アズサがデスちゃんを掴み木の仮面の隣の扉を開けてバタンッ! と扉を閉めた。
ちょっと、まだ入っていないから閉めないでよ。
まぁ幽霊だから扉くらいはすり抜けられるけれども。気持ちの問題ってのがあるのよ。
……木の仮面は隣の部屋番号を見るように顔を出し、すーっと戻って扉が閉まった。
警戒心が強いのかね?
……
……しばらく扉の前で待っていると、アズサの部屋が開いて手だけ出して早く来いと手招きした。
『睨まれたから悲しい』
「……ごめんて。早く来てよ」
『ルクナちゃんラブって言って』
「えっ、ここはやだ。中で言ってあげるから」
『こーこーがーいいーっ! じゃないとずっとここでごろごろするー。ごろごろー』
「……」
『ママ、わたしモ……ごろごろー』
デスちゃんが私の真似をしてゴロゴロし、隣の扉まで転がっていった。
その時またガチャっと扉が開き、木の仮面がぬっと出てきた。
でもアズサは扉を開いているだけだから隣の扉は死角なのよね。
というかアズサさん、呆れた顔で見ないでよ。
「やべっ、お湯沸かしてたんだった」
あっ扉を開けたまま奥に行ってしまった。
『デスちゃん、戻っておいでー』
『ママ、かめんコワイ』
「……魔導人形、かな?」
あっまずい、木の仮面がしゃがんでデスちゃんを食い入るように眺めている。
デスちゃんが立ち上がって私を見ながら木の仮面を指差した。
『デスちゃん、せっかくだから自己紹介したら?』
『こわいカメン、ワタシ、デスです……ぶふふっ、デスです』
「……私はエイシャ。デスちゃん?」
『ママもイルの』
「ママ?」
『ママ、抱っこ』
『もう甘えん坊なんだからー』
デスちゃんを持ち上げて抱っこすると、木の仮面がデスちゃんに合わせて上を向いた。
人形が宙に浮いているから普通に考えてめっちゃ怖いよね。でも木の仮面……エイシャも怖いから怖い同士仲良くなれそう。
「……そこに、ママが居るの?」
『ウン、ママ、スキ……ふふふフフフ、ママも、デスすき、ふふふふふふふふ……』
……扉が開いているから奥が見えるのだが、ライズが浮いているデスちゃんを見てめっちゃビビっている。
顔が引き攣って声にならない声でエイシャを呼んでいるが、エイシャはデスちゃんに釘付けだ。可愛いもんね。
あっ隣からアズサがひょこっと顔を出した。
アズサから見たら私がデスちゃんを抱っこして木の仮面の怪しいやつと喋っている状況なので、えーって顔で私を見ていた。ご近所付き合いは大事よ。
「ちょっと、なにしてんの? 早く入ってよ」
『お話しているから後で行くよ』
「……」
「そう? お茶淹れたから……って飲めないか。デスちゃんだけでも返してよ」
『えー私が抱っこするから良いじゃん』
『ママ、アズサ、ふくカッタ』
『えーデスちゃんの服? 私もみたーいっ!』
「じゃあ早く来てよ。ドールのお店あってさぁ結構買っちゃったんだよねー」
「……デスちゃん? あの人は、ママが見えるの?」
『ウン、ママみえる、トモダチ』
あとでエイシャに接触してみるか。
それよりも私はデスちゃんのファッションショーがしたい。
デスちゃんに手を振らせて、ふわーっと移動。
「っ、まさか……あっ、待ってっ!」
『おめかし、する。バイバイ』
「ママの名前っ、教えてっ!」
『? ママはママ……エイシャ、マタネ』
エイシャがデスちゃんを掴もうとしたので、ひょいっと上げて回避。
レディに触れるにはマナーがなっていないねぇ。
ちょっとデスちゃんが怒っちゃったじゃないの。
でも呪っちゃだめよ……あっエイシャが呪われて膝付いちゃった。
「ぅっ、くっ、これ、は……」
『エイシャ、テキ? 殺す?』
『敵じゃないから解除してあげて』
『ホント? ほんとにテキじゃナイ?』
「……あの時、の……ぁ、こえ、が……」
『うん、私はエイシャに用事があるんだ。だから解除して』
『……ママが、イウからトクベツ、ゆるす……エイシャ、ママに、おれい、シテ』
「ごほっ、ごほっ、あり、がとうございます」
『デスちゃん、いいこいいこ』
『ふふふフフフ……ママ、アズサ、まってる』
『ふふふ、早くおめかししたいんだねっ。行こっか』
「……」
早速アズサの部屋に入ってデスちゃんのファッションショーを楽しんだ。
私も負けじと小物を作りまくっていたら夜中になってしまったな。
うん、明日で良いや。




