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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ノースギア編

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255/427

お金が貯まったら旅行に行きたいよねっ

 

 何日経ったのかはわからないが、私とアズサは三層でお宝探しに励んでいた。

 一応アズサも四層に到達はしたのだが、洞窟の狭い道や地底湖の多い四層は危険が多いのはもちろん魔素が濃いのでアズサが長居出来ない問題が発生。なので三層で何か良い魔導具や防具が無いかなーと天使の輪を使ったら結構宝箱を見付けて、楽しくなってしまっていた。


『もう一度やるよー。秘剣・清流』


 ただお宝探しをするのではつまらないので、魔物を見つけてはアズサに技を教えていた。

 最近また格が上がったのか、少しの時間だけ憑依出来るようになったのでアズサに憑依して技を出して身体で覚えさせるという事をやっていた。

 そのせいなのか、アズサは格段に強くなったと思う。下位の探索者レベルだったのが、上位を軽く超えるくらいになったのよね。元々素質はあったけれど師が居なかったから伸び悩んでいたのよ。


「なるほど……全ての動きを曲線にするのね」

『うん、水のように動くと防御しにくいから』


「ところで最近対人戦の技ばかりだね」

『うん、アズサが狙われているからね』


「凄い事サラっと言うね。妬まれてるって事?」

『うん、見下していたソロの迷い人が宝箱ポンポン見付けたら腹立つしょ』


 最近宝箱を見付け過ぎて目を付けられているのよね。

 ここの迷宮の宝箱は、一年に一個見付けられたら遊んで暮らせるレベルだ。

 それを一日に何個も見付けたら妬み嫉みが凄いのは当然で、もちろん小分けにして売ってはいるが収納袋や収納鞄に入りきらなくなってきていた。

 新しい収納魔導具が欲しいのだが、三層では中々見付けられないし町の魔導具店は人気商品なので手に入らない。

 浮遊霊の情報収集はお手の物なので、アズサがそろそろ狙われるかも知れないのよね。


「でも全然声掛けられないよ?」

『そりゃ私が存在感を薄くする術を掛けているからね。それも限界があるから、一ヶ月くらいは迷宮に居ない方が良さそうなのよ。だから一旦別の街で収納魔導具探しに行かない?』


「そうだね。流石にお宝見付け過ぎだから換金もしたいし、王都行く?」

『んー……流石に換金はそこだよね。一応帝国にも行ってみよっか。何かあったら憑依して逃げれば良いし』


「じゃあ帝国行くならエルメルンも行かない? ルクナの探してる魔導具とか掘り出し物であるかもしれないし、占って貰った方が早いかもよ? 私ももう一度占って貰いたいし」

『じゃあそうしよっか。アズサの身体でも結界移動で王都には一日くらいで行けるし』


「……怖いから普通に行かない?」

『普通に行くとここから王都なんて早くて半月は掛かるんだよ? 見慣れた風景を半月とか耐えられないし、帝国に行ったらのんびりでも良いけれどさ』


 結界移動は三層でよくやるのだが、最初アズサは怖くて一回お漏ら……げふんっ、憑依と言ってもアズサの意識はあるから私の感覚でやるのはマジで怖いらしい。

 でもエリスタと王都を何年も往復した私は耐えられないのよね。そこは我慢してもらうよ。


「ルクナは頑固だからなぁ……良いけど、美味しいご飯は食べさせてもらうからねっ」

『もちろん、指咥えて見てあげるよ。じゃあそこの地面の下にあるお宝でも取って行こっか』


「それ先に言ってよ。入るかなぁ……」

『じゃあ掘るねー。ほいっほいっ』


「しかも金だし……これ期待しても良いかな?」

『開けて開けてっ』


 宝箱のランクは良い方なので、ここいらで有用な魔導具が出てくれるのを祈るか……

 オープンッ! いつものように解析しながら中身を確認していく。

 ……砂の鎧、土魔法耐性……いらない。

 ……砂のマント、砂地で隠れられる……まぁまぁ当たり。

 ……大地のスコップ、サクサク掘れる……いらない。

 ……ほーむべーかりー、どこでもパンが焼ける……当たり。

 ……魔法書マジックイーター、魔力を食べる魔法?

「あっ、四層で使える?」

『あぁ魔素が濃いところで有効なのかな? 要検証だね』

 ……大地の剣、ゴーレム族特攻……うーん。

 ……茶色いジャージ、イモい一品……アズサに着て貰おう。

「……やだよ」

『なんで?』

 ……呪いの剣、呪われているので浄化……あっ、これ聖剣だ。

 後はお金や宝石だった。


「……凄いの出たね」

『うん、ほーむべーかりーって凄いね』


「うん、それじゃなくて聖剣の話ね」

『これ魔法斬れるくらいの能力しか無いじゃん。どこでも出来立てのパンだよ? 羨ましいわぁ』


「材料揃えて入れる手間を考えたら苦痛でしょ。聖剣って初めて見たし魔法斬れるなんて凄いじゃん」

『えーっ! 勝手にパン出てこないの? じゃあいらなーい。その聖剣はアズサが使えば? そろそろその剣も替え時でしょ』


 ミスリル銀の剣も三層に居たら直ぐ駄目になるし、聖剣なら長持ちしそうだからね。見る人が見ないと聖剣なんてわからないし、少しくらい戦力強化は出来たかな。


「丁度買おうと思ってたから節約になりそうだね。誰かさんが直ぐ剣ダメにするから」

『でもだけどだって、魔法剣に耐えられる良い剣が無いの。魔陣武器は結構魔力使うのよ?』


「ルクナが調子こいてオーバーキルするのが原因だからね。あっ、収納入らないし……」

『じゃあ加工するからいらない防具とか出して……あぁっ!』


「おわっ、なにっ! なんかあった?」

『あぁいや……アズサに憑依して幽霊の声が聞こえる魔導具を自分で作った方が早いかもって』


「魔導具って作れるもんなの?」

『あっちでは有名な魔導具職人でデザイナーなのよ』


 信じていない顔してんな。私が聖女って言った時も信じていないし、本体があるというのは信じているみたいだが……


「ルクナってさ、聖女で姫で魔導具職人でデザイナーとかその年でどんな人生よ」

『好きな事を好きなようにやっていたら幽霊になった』


「うん、そもそも幽霊じゃないでしょ。魔法使う幽霊とかおかしいし、霊格が上がったら神様なんだよ?」

『そなの? じゃあ私は女神なのね。さぁ崇めなさい』


「ジャージじゃなきゃ女神で納得するけどね。女神ってもっと世界の事知っているでしょ」

『それは偏見だよ。そもそもこの世界に女神なんて居ないし』


「えっ、そうなの? 神様居ないの?」

『竜の神様っぽいのは居たよ。殺しちゃったけれど』


 引かないでよ。シャフェルと戦った時なんてそんな事考える余裕なんて無かったし、後から神様かもって思っただけだもん。

 竜神を取り込んだ私とイシュラとローザは女神様という事かしらと思ったが、二人は大地龍ガイアがベースだから龍人なのよね。私はなんか色々ごちゃ混ぜ死にかけ美少女なので、幽霊になって初めて女神とか天使とかの部類になったと推測している。


 とりあえずいらない物を組み合わせて繋げて可愛い人形を作った。金髪縦ロールのお嬢様で無駄に豪華なドレスを着たルクナちゃん特製……呪怨人形デスちゃん。

 指や膝など関節はボール関節なので細やかな動きが出来るし、目は最高級の宝石を使用しているから怪しい眼差し。

 皮膚は柔らかい素材を使用しているからたまに笑う……これは意図せぬ挙動だが可愛いからまぁ良いだろう。


『……わた、死、デス、です……ぶふっ……デスです……ぶふふっ』

「……」

『おぉ……可愛い』


『アズ……あそ……ぼ』

「ルクナ、これは置いていこう」

『ダメだよ。アズサを友達だと思っているもん。良かったね、二人目の友達だよ?』


『トモ……ダチ……アズ、トモダチ』

「あれ? 私、幽霊と呪い人形しか友達いないの? 涙出てきた」

『デスちゃんはなんとっ! 私が触れる人形なのだっ!』


『……ママ、抱っこ』

「怖いっ! 浮いてるっ! こっち見て笑ってるっ!」

『はぁ〜我ながら可愛い子を作ってしまった。私って天才』


 デスちゃんはケタケタ笑いながらふんわり浮いてアズサの肩に乗った。嬉しそうに笑ってもう……可愛い帽子でも作ろうかな。


「なんで大量の物からこんなに小さくなるの? ねぇデスちゃん耳ふーふーしないでケタケタ笑わないで」

『ふふふ……ふーふー……たの、しい、たの……しい………………………………あずさ、私の事捨てないでね』


「──ひぃっ! ルクナッ! デスちゃんはルクナが持っててっ!」

『ん? アズサの事大好きみたいだから良いじゃん。頼りになるよ』

『マモノ、ハッケン』


 デスちゃんが浮き上がってサソリの魔物に向かって小さな手を向けると、小さな黒い魔法陣が発生した。

 中からギュインとおぞましい黒い手が伸びてサソリに絡み付くと、バキッ、ゴキュっと硬い殻を粉砕しながら呑み込んでいく……

 アズサはぶるぶる震えて後ずさり、腰が抜けたのかその場にぺたりと尻もちをついた。


『闇特化にし過ぎたかなぁ……光を伸ばして天使にしてあげた方が良いかしらね』

「るく、な……食べてる、魔物、食べてる……」


『燃費が悪いのよねー』

「私の、事、た、食べない、よね?」

『げぷっ、マズ……アズ、タベナイ……ホカノニンゲン、タベル』


『デスちゃん、人間は食べない方が良いよ。討伐されちゃうから』

『タベナイ。ママゼッタイ』

「うぅぅ……怖いぃ……」


『デスちゃん、調整するからおいでー』

『ママ………………………………やっぱり人間食べたい』


 デスちゃんの頭を撫でて、光魔法を注入……ちゅー……ちゅー……均等にはなったかな。

 流石に人間を食べるのはダメよね……魔物を食べているところを見られたら討伐対象だし……陽の光で魔力の補給が出来るようにすれば良いか。帝国にある太陽石でも探すかね。


『アズサー、帝国に太陽石っていう魔石があって、それなら陽の光で魔力補給が出来るのよ』

「……いや、そもそもこんな……あぁいやこんな可愛いデスちゃん作らなきゃ……あーごめんてっ! デスちゃん睨まないでっ! ああああぁぁぁぁぁあぁああやっぱり怖いわぁぁぁぁぁぁ」

『アズ……デスのコト、キライ? キライ、なの? カナ、シイ……』


『あーデスちゃん泣いちゃったじゃん』

『カナ、シイ……アズ、キライに、ならナイデ……』

「……涙はどういう原理ですか……ルクナ、やっぱりルクナは女神かもね……わかった、嫌いじゃないから。デスちゃん、嫌いじゃないよ」


『……キライジャナイ、だめ……モウ、ヒトコエ』

『嫌いじゃないは物足りないってさ』

「……デスちゃん、す、すきだよー」


 ……デスちゃんがニタァと笑いながらふんわりと浮き、アズサの肩に乗った。縦ロールを整えながら、チラチラとアズサを見ては口元を抑えて笑っちゃって可愛いわね。

 無事仲直りしたようなので出るとしよう。

 転移石を起動し、バシュンと景色が変わりいつもの転移陣の広場に到着した。

 アズサが出ようと歩き出したところで数名の探索者が前に立ち……ギョッとした顔をした。

 デスちゃんがケタケタ笑って探索者達を眺め、アズサに耳打ちして楽しそうね。

 アズサは探索者達を親の仇のような目で睨んでいた。デスちゃんの事自慢しちゃってもうっ。


「……なに?」

「あ、いや……それ、なんだ?」


「……私の友達」

『アズ、コイツラ、おもしろい、カオだね』

「「「──ひっ」」」


 デスちゃんを見て大の男達が後ずさりながらドン引きしている光景は中々見られるものではない。

 普通に考えて肩に人形乗せている女はやべえ奴だからね。

 アズサは血走った目で周りの探索者達を睨むと、みんな一歩下がった。

 良いね良いね、やけになった人間は強いぞ。人はプライドを捨てる瞬間が一番強くなれるのだ。


「……私に構わないで。もし、私の邪魔をするなら……」

『ふふ、うふふふふふ! 全員………………殺すよ?』


 ──ドッ! デスちゃんから闇の魔力が吹き出し、全員が金縛りに遭ったように動かなくなった。次第に耐えられなくなった人から震えが止まらなくなり、失禁する人が出始めたところでアズサがデスちゃんの頭を撫でた。


「デスちゃん、こいつら弱いからあんまり虐めちゃダメだよ」

『あははははハハハハッ! ヨワイヨワイッ! アズ、もうイコ? この雑魚達には飽きた』


「「「…………」」」


 アズサが歩き出すと、前に居た探索者は震えながら後ろに下がり道を開けた。

 デスちゃんは嬉しそうに小さな手を叩いて、周りに呪いを振り撒いて可愛いわね。

 この呪いは……アズサの事を話したり調べたりすると怖い怖いになるのね。

 怖い怖いの度合いは……まぁ、強い人は耐えられる。

 デスちゃん……友達想いの良いこになって……お母さんは嬉しいよ。

 感動しているとアズサはそのまま迷宮を出て、早歩きで町の出口へと向かってしまったので追いかけた。


「……ルクナ、今すぐ結界移動で王都に向かおう」

『あら良いの? みんな見ているよ?』


「一刻も早く離れたい。もう心がもたない」

『ほいほい。デスちゃんしっかり掴まってねー』

『うふふふふふふふふ……』


 アズサに憑依し、踏み込んでジャーンプッ!

 さらばだファイアロッドの諸君。また会おう。


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