夢はいつも、私を悩ませる
……あぁ、この感覚はいつもの夢だ。
私の先祖、ライズ・エリスタの記憶を辿る旅。
いつも記憶は飛び飛びで、年代がバラバラ。前はライズが子供時代で、ミナカ・オレイドスに出会った時期だった。
今日もそこら辺の時代かな? ミナカが子供だし……
本当にセイランそっくりというか、まんまセイランだから感情移入してしまう。
ライズはホウキを持っているから、どうやら家の前の掃除をしているみたいだ。
一応貴族の家だから庭もある立派な作りでメイドも居る。でも家の掃除はライズの仕事だったな。
「ライズ・エリスタ、私に……魔法を、教えて欲しい。教えてくれるのなら、私、なんでもする」
「……なんで私なのさ。なんでもって無理言うかもしれないよ」
「……うん、覚悟の上」
「くくっ覚悟、ねぇ。呪い子に魔法を教わろうとするなんて君は変わり者だね。虐められても助けないよ」
ライズは呪い子と呼ばれていた。黒髪で生まれ、まともな魔法を使えないライズを周りは蔑んだ。
当時エリスタは貴族として良い身分だったが、それは本家の話でライズが生まれた分家のエリスタは下級の貴族。その末席のライズは良い標的だった訳だ。それに、前髪を下ろして顔があまり見えないようにしていた。ライズはサダ子風とか言っていたから、誰かの真似かな。
そんな見た目が陰湿なライズに頼み事をするのは、余程追い詰められている証拠。ミナカは目に涙を溜めながら震えていた……多分ライズと話すのも嫌なのかもしれない。
話しているのを見られただけで嫌われる……だからライズは孤立を選んでいた。いや、孤高と言った方が良いか……もうすぐ、帝国で聖女ライザと呼ばれるのだから。
「私も、落ちこぼれだから……」
「ふふふっ、まるで私が落ちこぼれみたいな言い草だね。オレイドス家は宮廷魔導士の家系だっけ? 良い家庭教師が居ると思うけど?」
「……だめなの。全然、上手くならない……才能無いって、言われたし……宮廷魔導士になれないって……」
「別に宮廷魔導士にならなくても仕事なんて沢山ある。どうして呪い子に頭を下げてまで上達したい?」
「……家族を見返したい。あなたなら、気持ちがわかるよね?」
「わかるよ。この髪のせいで家族にまで気味悪がられているくらいだし。じゃあ、君は何をしてくれる? なんでもって子供の君にできる事なんてあるの?」
「……」
「言っておくけど、私はお金に興味無いし欲しい物は自分で手に入れる。他を当たって」
ライズがミナカにしっしとやり、ホウキで家の前を掃いているがミナカは帰らない。ライズの事をじっと見ているだけだった……ライズも時折チラリと見るが、早く帰れよくらいにしか思っていないよね。
にしてもライズって私と性格そっくりだな。セイランにも同じ事を言ったし、ライズの言いたい事がよくわかる。自分と関わると、良い未来は無い。特に貴族社会では……
少しの間沈黙が流れていると、二人に近付く人達が居た。ライズは気が付いているがいつも通りだった。
「おい、あれミナカじゃないか? なんで呪い子と一緒に?」
「呪い子が何かしたんじゃないのか? あれ絶対怒ってるぞ」
「俺達が解決してやろうぜっ」
「お前ミナカの事好きだもんな」
「ちっ、ちげえしっ! 困ってるかもしれないだろ」
「はははそうだな。おーいミナカ、どうしたんだー?」
ミナカは声を掛けられてビクッと肩が跳ねた。それはライズと話していただけで嫌われた人を見ていたからか。
ライズはミナカの様子を見て、いつもの事かと声を掛けた三人組に向き合った。
何も言わずに見詰めるライズに、三人組は少しビビっていた。
「な、なんだよ……」
「おい呪い子、こっち見んな。ミナカ、何か嫌な事されたんだろ?」
「いや……私は……」
「大丈夫。俺達がやっつけてやるから。おい呪い子、ミナカに酷い事したんだろっ! 謝れよっ!」
「やめてよっ……お願い……」
「お前何か脅したのか? 何しやがったんだよっ!」
うん、美少女は得だね。とりあえず味方になってくれるから。
ライズも同じ思いだろうねー。まぁこれでミナカに付きまとわれなくなるなら良いかと思うし。
「……ごめんね。借りていたこれ、返すよ」
「えっ……」
ライズがポケットの中で魔法を発動し、青い髪飾り作ってミナカに手渡した。
ミナカはそれを訳もわからないまま受け取ってしまい、ライズは掃除を切り上げ庭に入って行ったのだが……三人組は髪飾りに気を取られて声を掛けられなかった。
凄えなー、私より年下なのにあのクオリティは流石だ……少々荒いが子供ならオレイドス家の家宝と言われても信じてしまうね。
「ミナカ……それ、なに?」
「……えっ? あっ、いや……違うこれは……」
「すっげぇー! これ絶対マジックアイテムだよな?」
「でもなんで呪い子にこんな凄えもん貸したんだ?」
「……」
ミナカはライズが何も無いポケットから出したのを見てしまったみたいだな。当時指輪型の収納魔導具なんて出回っていないから、単純に魔法で作ったようにしか見えなかっただろう。
「はぁ……やっぱり王国はだるいなぁ。大教会で就任式しないと婆さんうるさそうだなぁ……ふふっ、私が聖女とかウケる」
庭の掃除も終わってからホウキを地面に置くと土に還り、ライズの足元に紫色の魔法陣が発生しバシュンと転移した。
……あれ? 私、残されちゃった? あれ? 私も転移するんじゃないの?
「ライズッ! えっ……消え……えっ……?」
あーあ、見られちゃったじゃんねー。
気を抜くからだよ。
私と違って魔力感知は弱いみたいだし……というかなんで私は置いていかれた?
おーいライズー私も大教会行きたーい。
「大、教会? ライズは、大教会に、行ったの?」
そうそう。
聖女の就任式があるからねー。
「聖女!? ライズは聖女になるのっ!?」
……えっ?
「えっ?」
……は? なんで?
「ど、どう、したの?」
……えっ、今、私に喋った?
「……ぅん。あなたはライズの、友達?」
……
私の体はいつも通りスケスケで、ミナカに触ろうとするとすり抜ける。幽霊みたいな状態なのだが、今回ライズに置いていかれてしまった……これはどういう状況だ?
ねぇミナカ、私はルクナだよっ。よろしくねっ。
「ルクナ? よろ、しく」
会話が、出来た……?
私の独り言を聞ける人が現れた訳か……でも違う時代だと聞こえなかった訳だし……あ〜わかんね〜……
喋れば会話出来るが、思っている状態だと声は聞こえないから幽霊状態の私がここに存在しているって事?
それって、大丈夫?
戻れるよね?
えっ、すっげー不安になってきた……




