強い人と迷宮はやっぱり楽だ
「せんせぇと一緒に私も行くーーー!」
公爵家に来て、公爵に少し家に引き籠もる旨を伝えたらモニカちゃんがツインテールをぶんぶん振り回してわがまま全開で公爵を殴り始めた。
お茶を啜りながら事の成り行きを眺めよう。
「痛いっ! モニカやめてっ! まじ危険だからっ!」
「じゃあせんせも止めれば良いじゃんっ! せんせが居るなら安全だもんっ!」
「せんせからも言ってっ! お願いっ!」
「ん? 私からは氷神巫女のウォルママも参加するので、モニカちゃんにとってプラスしかないとだけ」
「氷神巫女様だよっ! ねぇお父様っ! 聞いてよっ!」
「マジで来るのっ!? 俺も行きたいっ! 痛い痛い痛いっ!」
「行くのーー! 絶対行くのーー! お父様のばかーー! この前だってお父様のせいでせんせがケガしたんだよっ! お父様のせいでっ!」
「あぁ私が居ると知っていたレド達に上位種のニセヒトと戦わされましたねぇ。結構殴られましたよ。痛かったなぁ」
公爵がボコスカ殴られながら頭を下げた。
めっちゃ泣きそうね。殴られて泣きそうなのか、責任感じて泣きそうなのか知らないけれど、モニカちゃんの拳が脇腹に入ったな……身体強化で防御しているのが少し腹立つ。
結局公爵は折れて、モニカちゃんが仲間になった。
モニカちゃんには少し危険だが、リリが守ってくれるからなんとかなるか……学院には氷神巫女の補佐をするから休むと伝えるみたい。また友達作りの枷が出来た気がするが、頑張れモニカちゃん。
二人で屋敷に帰るとウォーエルが来ていた。
あら、仮面を外して寛いでいるわね。やっぱりこの屋敷にはウォーエルが似合うな。
隣に座るリリも綺麗ね。頭に乗るステラちゃんが意外と様になっていた。写真撮ろっと。
「わぁぁ……モニカ・ノーザンですっ! よろしくお願いします氷神巫女様っ!」
「よろしく。ルクナから話は聞いているわ。ウォルと呼んで良いわよ」
「はぃっ! せんせっ、せんせっ、ウォル様すっごい綺麗っ!」
「私のおかぁさんだからねー。そっくりでしょ?」
「うんっ! わぁぁ……せんせ、あの、これ、渡して、、」
「自分で渡さないと。ほら」
モニカちゃんがもじもじしながら、ウォーエルに私と一緒に作ったクッキーを渡した。
ウォーエルは微笑んでクッキーを手に取り、口に入れた。
「あら美味しい、才能あるわね。また作ってくれる?」
「はいっ! せんせっ、やったっ!」
「よく出来ましたーよーしよーし」
「ふふっ、姉妹みたいね」
「はいっ! せんせの妹になるのが目標ですっ! ふぅぅ、ウォル様が眩しい……ドキドキしちゃう」
「慣れるまで少しゆっくりしたら、早速行こうか。リリたん、これ私が作ったの」
「ありがと。ってこれはクッキーで良いの?」
「スポンジが膨らまなくてクッキーにしたの。道連れ」
「まぁ美味しいから良いけれど……」
ステラちゃんがモニカちゃんの方に飛んで行ったので、ペシっと落とした。
『ルクナっ何をするんじゃ!?』
「モニカちゃんの教育に悪いから、私の肩に乗っていなさい」
『んもうっ嫉妬かえ? それならそうと言ってくれたら良いのにぃ』
「はいはい。脱いだら虫かご行きだからね。モニカちゃん、これは妖精国のステラ王女だよ」
「えっ、よろしくお願いします……可愛い」
くねくねすんな。投げキッスは私にしなさい。だからと言って耳を尻で挟むな。
自己紹介を兼ねて少しゆっくりした後、みんなで迷宮に入った。
モニカちゃんが初めての迷宮なので、幼女妖精を持ったリリとモニカちゃんが後方で見学メイン。
私とウォーエルが手を繋いで先頭を歩くのだが、なんか緊張するな。
私は伝説の戦闘服あずきジャージで、ウォーエルはいつもの黒のゴスロリ服……この服、魔法防御や自動修復機能付きだから買うと億はするらしいよ。それに何種類も持っているからその日の気分で変えるらしい。
胸に私の作った大きめのリボンを着けて、とてもご機嫌だ。
きっと私が天使の輪を出しているから嬉しいのね。
「おかぁさんは何階まで言ったの?」
「確か五階までは行ったけれど、疲れたから帰ったわ。わたくしは氷神結界の影響で氷魔法以外は上手じゃないのよ」
「へぇーそんな制限があったんだね。任せて、大体なんでも出来るから」
「頼もしいわ。他の戦い方はあるから役立たずにはならないわよ。あら魔物ね。凍りなさい」
カタカタと小刻みに動くおもちゃの人形の形をした魔物が凍りつき、砕け散った。
私も凍りなさいとか言って攻撃したいわね。言葉だけで殺せるとかどこの領域にいるのか不思議よ。
王なんて赤ちゃんとオーガくらい差がありそうよね。
私も指先を向けてバーンと魔力弾を撃ち魔物を倒していく。
休憩室はスルーして直ぐに最初のボスに到達した。
ライズ達の写真が飾られ、ウォーエルが立ち止まった。
「……いやらしい迷宮よね。凍りなさい」
『──イィィヤァァァァァァ!』
「痛っ、リリさん、なんか、胸が……」
「大丈夫よ。フェアリーオーラ」
モニカちゃんが呪いに掛かったが、直ぐにリリが治してくれた。結構というより、かなり上達している……神殿巫女が手伝っているのだろう。
「わっ……せんせと同じ魔法……凄い」
「ルクナに習ったの。回復なら任せて」
リリの魔法を見ていたウォーエルが私の肘をつんつんした。どしたの? それ可愛いね。
「ルクナ、リリたんは聖女になるのよね?」
「そうだよ?」
「妖精魔法はやりすぎじゃない?」
「これしか無いのよ。リリたんの魔法の素質は並だから、妖精の秘術で無理矢理素質を作って妖精魔法を捩じ込んだの。本当は戦闘の方が得意だから上位レドとも張り合えるのよねー。聖女ライザの子孫が師匠だから、このくらいが丁度良いかな」
「引く手あまたになるわね。リリたんが囲い込まれる未来が見えるわ」
「だいじょーぶ。その為におかぁさんとメティオちゃんとローザに推薦状を書いてもらうの。もちろん私のもね」
「本当に、貴女は良い女ね」
「そうなの。良い女過ぎて怖いわ」
絵画が砕けて扉が出現。その先の下り階段を降りると、一層よりも豪華になった廊下に出た。
廊下で索敵を行うと……魔物が少ない。ウォーエルが居る影響かな。
「道はわかる?」
「うん。これがあるから地図要らないんだ。こっち矢っていう魔導具」
『こっち矢ー、そっち矢ー、あっち矢ー』
「あら便利。他に面白い魔導具はあるの?」
「魔導具は大体イシュラにあげたから、私は魔法書が多いよ。名水百選だったり、お風呂要らず、海水飲めーるとか、どこでもトイレとか……あぁ変な魔法多いのよ」
「……それ、ライズの魔法ね。アホらしくて覚えなかったのよ……魔法書があったら見せて」
「覚えたからあげるー。どこでもトイレは革命だよ? 覚えて損は無いね。他人にも使えるからすっごい便利」
どこでもトイレはマジで凄い。
ブツを魔力体に変換して、魔力として再利用出来る。ファイアロッドの大迷宮で見付けた時は飛び跳ねたよ。
うんこタイムは急に来るからねっ。




