王女になったら、なんかみんな喜びそう
「……毎日連絡するから」
「どうぞ。出られない時は折り返すから鬼連絡しないでね」
「やだ……声聞くまで連絡する」
「私は大丈夫だから自分の心配しなさいよ。次の王の第一候補なんでしょ?」
「うん。私の派閥も出来ていたし、前々から準備されていたみたい。帰って来るかわからなかった筈なのにね」
「何か裏があるのかな? 嫌じゃないの?」
「うーん……別に良いかなって思う。ルクナを第一王女にするのが条件だ、け、どっ」
「私を道連れにしないでよ。それに氷神巫女さんがうるさいよ」
アズ母は公式に私を娘にして、女王を引退したら私とゆっくり過ごすという目標に切り替えたみたいね。それ何年後の話よ……まぁ私は今更第一王女になろうとそんなに立場は変わらないからどうでも良いが。
「今回、お父様がルクナを認知したの。これはチャンスだわっ! ルクナが第一王女にならないと私が女王になる意味無いものっ!」
「まぁ私はアズリーナ王女と氷神巫女さんが仲良くやれるのなら王女でもなんでもやってあげるけれど……なにさ?」
「えっ、ルクナは王女とか嫌だと思っていた……」
「いやいや、大聖女よりはマシじゃない?」
「あれはルクナの趣味でしょ?」
「趣味じゃないし。これが欲しかっただけ」
皇帝の紋章を見せるとアズ母が仰け反った。そういえば見せた事無かったっけ?
「る、るくな? 変な事に、使っていないわよね?」
「うん大丈夫。そういえばもうすぐみんな来るからよろしくねー」
「みんなって?」
「ローザとイシュラとセイランとユウコさんは来るはず。私は家に籠るから」
「ルクナ、招待状を送るわ」
「やだよ。今の私は王族でも貴族でもないから他国の要人をもてなし出来ないじゃん。ただの超お嬢様だよ?」
「みんなその超お嬢様に会いに来たのに?」
「私がパーティー会場に居たら大変よ? 想像してみてよ」
「セイランちゃんが暴走してイシュラちゃんがキラキラしてローザちゃんがルクナをお持ち帰りしようとするだけじゃない」
「それを同世代の子達の前で堂々とやるんだよ? 恥ずいわっ」
前はただの平民だったから参加する気満々だったが、今は違うので行きたくない。
イシュラが来る時点で同世代の嫉妬すげえと思うぞ。ローザもいつクレイルで現れるかわからないのにホイホイとパーティーなんざ行ったら、ねぇ。
一番危ないセイランは私さえいなければ完璧な公爵令嬢だから、居ない方が平和よ。ユウコは空気読むから安心だが……
「あっ、でも王女として会うのは初めてかぁ……変な感じね」
「ユウコさん以外は妖精国王子、帝国第一皇女、公爵家令嬢として会うから……ここからがスタートラインになるかもね」
「だからこそ、居たほうがよくない? ルクナ・レド・ノースマキナとして会うのは初めてでしょ?」
「まぁ、そう、かぁ……考えておくよ」
アズ母に説得されたら、パーティーに行った方が良いかもと思ってしまった。
大規模なパーティーだから、貴族以上ならみんな来ても良いみたい。会場はここ、中央公園……それなら良いかと思ってしまう。だって家直ぐそこだから疲れたら帰れば良いもん。
「決まりね。ドレスはある?」
「うん。私服よりドレスの方が多いよ」
「もったいないわねぇ……アクセサリーは?」
「売るほどあるよ。北区のリューメイ魔導具店でもその内売られるし……その手は?」
「私が宣伝するから、見繕って」
「えー、贔屓の宝飾店もあるでしょ?」
「私は特に決めてないもん。ローザちゃん達もルクナのアクセサリー着けるのでしょ? お揃いが良いっ」
「それなら私とお揃いにしようよ。とりあえず新作の腕時計でも着けていて」
ピンクゴールドの腕時計を渡すと、腕に嵌めてドヤ顔をしていた。はいはい綺麗だよ。
代わりにアズ母は小さな箱をくれた。
中を開けると……おぉ……宝石の原石が沢山。
「加工するの好きでしょ? ノースギアの宝石も中々よ」
「ありがとう……わっ、スノーダイヤだっ! 原石欲しかったんだー! ありがとうお母……アズリーナ王女っ!」
「……ぅん、喜んでくれて良かった。もう少し、待っていてね。今は……そうね、この関係を楽しまない?」
「良いけれど、楽しむのならとことん楽しむのが私だよ?」
「ふふっ、腹いせにグレイド試験を受けるくらいだものね。ルクナは氷神巫女の娘で大聖女、私は次期女王最有力候補……凄くない?」
「凄いよねー。サーレスに来た時なんて孤児の使用人を連れた元王族でしょ? 一応あの時から追って話さない?」
アズ母には出来るだけ隠し事はしたくないし、モニカちゃんを紹介したいのよね。
モニカちゃんの後ろ盾をガッチガチにするのが、今の私が出来るサーレスへの嫌がらせだ。許してねえよ。
私には欲しいものがあるのだが、それをサーレスに頼もうかなーってね。
真王都の喫茶店に入って、時間まで話す事にした。
お店に入っても、お互いに素顔で過ごせる事が凄く嬉しいよ。
「……それにしてもよく三次試験受かったわよねぇ……ルクナ、なんか悪い顔してる」
「いつも悪巧みしているよ。アズリーナ王女に試着しないといけないし……今度モニカちゃんと一緒に来るから」
「えぇ、良いわよ。毎日連絡出来るし……パーティーは来週だから、その前にみんな来るのよね? なにするの?」
「もちろん迷宮攻略だよ?」
「はぁ……もっと女の子らしい事、って私が言えた義理じゃない、か」
「これ以上良い女になったら困るでしょ?」
「そうねぇ、この国の女の子が一番憧れる女の子になったお気持ちは?」
「はっはっはーひれ伏せー」
こうして笑い合えるようになったから、大きな進歩だ。
みんなが来る前にアズ母と話せて良かった。どんな嫌味言われるかわからないからね。
ほんと、時間が過ぎるのは早い。アズ母との時間はあっという間だった。
次の予定は……ウォーエルとご飯だね。
「だめよ」
開口一番、ウォーエルが言い放った。
なにが? なんて言ったら拗ねる。
なにがだめかって、ウォーエルと別れた後に約束した事だろうから……王との約束、アズ母との約束、ルビーババァは選択外として、アズ母との約束か……ウォーエルにはルクナリンクを渡していないから嫌とか? 会うのは我慢してくれそうだが……あぁ、もしかして王女になる事?
「私としては二人が仲良くなって欲しいの」
「わたくしは可愛い天使さえ居れば良いわ」
「じゃあ別に生活リズムなんて変わらないから私が王女でも良いでしょ?」
「だめよ。アズリーナ王女の迷惑になるわよ」
「なんで?」
「王が変わるという事は、それだけ色々なものが変わるの。状勢も変わるし、一番はルクナ……学院に通っていないじゃない」
えっ、学院に通わないとだめなの?
ウォーエル曰く……第一王女になるという事は王の子供の代表だ。ノーズギアを知り尽くさないといけない。各貴族の名前と顔を覚えなければいけない。今の生活だと遊び歩く王女と言われても仕方がない。
「じゃあ末席で良いじゃん」
「わたくしの娘が末席なんて、国民は納得するかしら?」
「しないだろうね。えー学院は良いけれど顔と名前覚えるのやだー」
「じゃあわたくしの娘で良いじゃない。わざわざ王女になる利点は無いわね」
「ぐっ……私が王女になる事がアズお母さんの女王になる条件なの」
「ふぅん。じゃあこうしましょ。第一王女の席だけ空ける。時期が来たら知らせるから、わたくしが準備しておいてあげる」
「……良いの? 反対じゃないの?」
「反対している訳ではないわ。好きな事をしている貴女が大好きだから、わたくしは母親として誰にも文句は言わせないようにルクナ・レド・ノースマキナを輝かせる役目があるの。だから好きな事をして待っていなさい。学院は週一でも良いから」
「おかぁさん……ありがとう」
「グレイド試験、最高だった。それに応えるだけよ」
ウォーエルは私の頭を撫でて微笑んだ。彼女はきっと嫌なのに、私の事を一番に思っている……器がデカいよ。
晩御飯を食べ終え、ウォーエルがお風呂の間に神殿の屋根に上がって満月を眺めていた。
屋根の天辺は平らで雪が溶けるようになっていて少し温かい。これそのまま寝ても気持ちいい。
まーんまるなーお月さまーまーんまるー。




