表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャラ・クラーラの奇蹟 ~かつて雷帝と呼ばれた男は、白銀の翼竜と自由を求めて空を飛ぶ~  作者: 夜々里 春
【星鳴りの少女】第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/150

◆第九話『新しい家族』

 シュボス島の中央塔指揮所にて。

 テムザス島での出来事を仲間たちに簡潔に説明。

 その後、ミリィを紹介したのだが――。


「可愛い~っ」

「こいつぁ……将来美人になるの間違いないねぇな」


 クァーナが興奮したように声をあげ、ヴィンスが神妙に頷いていた。ほかの者たちもミリィの愛らしさに感嘆している。


 ただ、レイカだけは妙に顔をこわばらせていた。


「あの、この子はいったい……?」

「ゼノさんの隠し子、デショウカ」

「そ、そうなのですかっ?」


 グリッグが示した見解に、本気でレイカが反応していた。


「なわけないだろ、グリッグの冗談だ」

「ハハハ、こう見えても冗談は得意ナンデス」


 そのわりに信じているのはレイカだけだったというのは、触れるべきではないのだろう。


「先ほどの話にも出てきた、聖王が気にかけていたという強いアストラの持ち主か」


 そう訊いてきたのはルピナだ。

 ああ、とゼノは頷きつつ、いまも背に隠れるミリィを見やる。


「これからここで面倒を見ることにした」


 そう伝えると、仲間の多くが驚いたように目を見開いていた。


 いまでこそ落ちついているが、いつ帝国が襲ってくるかわからない環境だ。そんな場所にか弱い少女を連れてきたとなれば、彼らのような反応をするのも無理はなかった。


 ただ、それを承知のうえで手を伸ばした。

 ミリィもまた自身の意志で手を掴んだ。

 少なくとも互いに後悔はしていないことはたしかだった。


「ここにいるのは俺の仲間だ。挨拶できるか?」

「……は、はいっ」


 いきなり見知らぬ場所に連れてこられたうえに、周りには見知らぬ大人達が集まっているのだ。人見知りでなくとも緊張するのも無理はない。だが、ミリィは意を決したように、前に出てきた。


「ミリィ、です。よ、よろしく……お願いします」


 たどたどしくはあったが、相変わらず10歳程度の少女とはとても思えないほどしっかりとした挨拶だった。


「しっかりとした子だ」

「だな、俺がこんぐらいのときは、鼻水垂らしてぼーっとしてたぜ」


 ルピナに続いて、ヴィンスが感心したように頷いていた。

 ほかの仲間たちも同様の反応を見せている。


 だが、ミリィにとっては納得できない出来だったらしい。悔しそうに隣まで戻ってくると、俯きながらぼそりとこぼす。


「……なにも言えなくて、ごめんなさい」

「充分だ。これからここで暮らすことになるんだ。自然と話したいことも出てくる」


 急いで溶け込む必要はない。

 それにここには気さくな人間が多い。

 きっとミリィも本来の自分を出せるようになるに違いない。


「シャラちゃん、ちょっと寂しいんじゃない?」

「なにがですか?」


 そばではクァーナのシャラ弄りがまた始まっていた。

 悪戯っ子のような笑みを浮かべつつ、クァーナが続ける。


「いや、ゼノをとられちゃって」

「べつにそんなことはないです」

「ほんと~?」


 いつもならシャラが珍しい動揺っぷりを披露する場面だ。しかし、今回ばかりはまったく動じていなかった。


「本当だと思うぜ。なにしろ進んで自分から乗せたぐらいだからな」

「え、あのシャラちゃんがゼノ以外を乗せた……?」


 クァーナが心底驚いていた。

 ほかの者たちも信じられないといった顔をしている。


 ミリィがひとり事情がわからずに混乱している。


「あの……?」

「シャラは俺以外を絶対に乗せようとしないんだ」


 その話を聞いた途端、ミリィが焦りはじめた。

 きっと〝悪いことをした〟と思ってしまったのだろう。慌ててシャラのほうへといまにも泣きそうな顔を向ける。


 が、機先を制するようにシャラがミリィの頭に手を置いた。親指で前髪を撫でながら、優しい声音で告げる。


「いいんですよ、ミリィは特別ですから」

「……シャラさん」


 やはりシャラもミリィに特別な感情を抱いているようだ。ミリィもそれを感じとったか、すぐに心を落ちつかせていた。


 そんな2人の微笑ましい光景を前にしてか、場の空気も和やかなものになっていた。


「にしても、こうしてみると親子みたいだな」

「ゼノとシャラちゃんが夫婦で、ミリィちゃんはその娘って感じかな」


 ヴィンスの言葉に乗っかるクァーナ。

 親子という言葉を聞いて、ふと思いついた案があった。


「ミリィ。お前が良ければ俺の……クラーラを名乗らないか?」


 そう問いかけた、瞬間。

 仲間たちが騒然としていた。

 オルクスが恐る恐るといった様子で口にする。


「ま、まさかとは思うが、その子を嫁に迎えるってことか?」

「そんなわけないでしょうっ。さ、さすがに娘として、ですよね」


 レイカが即座に切り捨てつつも、不安そうな顔を向けてくる。

 言い方のせいか、どうやら誤解を与えてしまったようだ。


「ただ、家族になれればいい。そう思っただけだが……年齢的にもそうなるか」


 ミリィはいまだ怯えている。ゆえに明確な形として〝家族〟という居場所があれば、少しでも安心できるかもしれないと思った。


「どうだ、ミリィ。いやなら断ってもいいんだぞ」

「い、いやじゃないですっ! ただ、いいのかなって……」

「いいもなにも、俺から言い出したことだ」

「だ、だったら……ミリィもそうなれたら、嬉しいです」

「なら決まりだ」


 ミリィの頭を軽く撫でたのち、仲間たちの顔を見回した。


「みんな、これからミリィは俺の娘として扱ってくれ」


 個人的な問題とあってか。

 とくに反論もなく受け入れてくれた。


「了解した。ならば、わたしの娘も同然ということだな」

「うわっ、ルピナちゃん、意外と積極的」


 クァーナが口を押さえて大げさに驚いてみせた。

 少しの間、きょとんとしていたルピナだが、やがて意味を理解したようだ。その顔を真っ赤に染め上げた。


「い、いやそういう意味で言ったわけではっ! ただ、以前にクラーラが仲間は全員が家族だと言っていたからであって! 決して他意はないっ、本当だ!」

「大丈夫ですよ、ルピナさん。わたしはわかっていましたから」

「レイカさん、そんなこと言ってるわりにさっき思い切り焦ってたよね」

「ク、クァーナ!」


 ルピナもレイカも見事にクァーナの餌食になっていた。それを見て、また男たちも笑い声をあげる。最近では見慣れた光景だ。


「悪いな。騒がしくて」


 苦笑しつつ、ミリィに声をかけようとする。


 と、彼女がなにやら下向きながら、「……ミリィ・クラーラ」とぼそぼそと呟いて嬉しそうに口元を緩めていた。どうやら思った以上に喜んでくれているようだ。


「ミリィ、これからよろしくな」


 今日、この日。

 またひとつ、守るべきものが増えた。


 そう強く思えるほどに、向けられた彼女の笑みは愛らしく、また陽のように眩しかった。


「……はいっ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ