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シャラ・クラーラの奇蹟 ~かつて雷帝と呼ばれた男は、白銀の翼竜と自由を求めて空を飛ぶ~  作者: 夜々里 春
【明日への旅立ち】第三章

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◆第九話『託されたモノ』

 クァーナ・ビスキシュは駆けていた。


 人質にとられていた仲間を解放できたため、味方と一旦合流することにしたのだ。


 すでに中央施設の発着場付近はレイカ率いる反抗組織が制圧しかけている。彼らも奮戦しているが、グリッグとシギの力によるところが大きいのは明らかだった。


 また遠くでは、ダナガ島とラドゲイの島が本格的に衝突し、ヒュレン島からは反抗組織の戦力が続々とグウェル島に上陸しはじめていた。


 いまは目に映るすべてが戦場だ。


 中でももっとも激しい戦いが繰り広げられているのは、グウェルの上空だ。翼竜に乗ったゼノとラドゲイが幾度も交差するたび、空が明滅している。


「なにあれ、天災と変わんないじゃん……っ」


 ぶつかり合う風と雷撃。

 かつて地上を幾度も襲ったという災害――嵐そのものだ。


 ただ、一見互角に見えるが、ゼノが押されているようだった。無理もない。ラドゲイにはあってゼノにはないものがあるからだ。


「急がないとっ!」


 クァーナはさらに足を早め、ついにレイカたちと合流した。彼らは上手く陣形を組み、建物の壁を利用して帝国兵を迎撃している。


「先ほどは助かりました、クァーナ!」

「お礼なんてどうでもいいよ! それより例のアレ! 奪われた物資の中にあるって話だったけど、さっき聞きだした帝国兵は詳しい場所を知らなかったみたいで! 一応、この辺りにあるらしいんだけど……知ってる奴を探って!」


 我ながら無茶な要望だと思う。

 最前線で戦うシギが肩越しに睨みつけてくる。


「……いまはそんなものを探してる暇は――」

「ゼノの助けになるものが入ってるの!」

「いますぐに探るべきだ」


 ゼノに心酔しているとあってか。

 シギがすぐさま意見をひっくり返した。


 グリッグとシギが敵を無力化するたび、後方――こちらに放り投げてきた。クァーナはそのうちの1人の額に銃口を押し当てる。


「ヒュレンから奪った物資、どこに保管してるか教えてくれる?」

「……誰が教えるのものか」

「わたし、悪いけどあんたら帝国相手に抵抗はないから」


 話さなければ殺す。

 そう意志を込めて風銃をすぐそばに撃ち込んだ。

 こちらの本気度が伝わったか、敵が口を開いた。


「発着場の管理室から北に2つ、東に3つ目の建物にある」

「それじゃさっさと立ち上がってついてきてね。嘘だったらその場で殺すから」

「わ、わかった! 本当の場所を教える! だから殺さないでくれ!」

「ありがとう」


 帝国兵を起き上がらせた。

 そのまま背中に銃を突きつけて歩かせはじめた、そのとき。


「ガリアッドだ!」


 反抗組織の誰かが怯え気味に声をあげた。

 見れば、北側の建物群からこちらに向かってくるガリアッドの頭が見えた。


 それも2つだ。

 最悪の事態だった。


 2機のガリアッドは陸上をすべるように移動してきたのち、発着場の広場で停止。右掌を開いて早々にこちらへと風撃を放とうとする。


 だが、どちらの手もぐわんと歪められた。

 グリッグとシギが腕に飛びかかったのだ。


 外れた風撃がガリアッド付近の建物に当たり、無残な姿へと変貌させる。大量の破片が飛び散る中、シギとグリッグが止まらずにガリアッドへと攻撃をしかける。


「……すべては雷帝のため」

「ここはわたしとシギが食い止めマス!」


 人の身でガリアッドを相手にできるものは少ない。

 現に彼らも、ガリアッドの硬さや機動力に苦戦しているようだ。ただ、だからといって下手に加勢すれば足を引っ張りかねなかった。


 それに、いまは緊急時だ。

 彼らに任せるのが最善だろう。


「行きましょう、クァーナ。我々が援護します!」

「ええ、お願い!」


 反抗組織に守られる中、帝国兵を脅して物資が保管された場所へと向かう。やがて辿りついた場所は、予想どおり先ほど教えられたものとまったくべつの建物だった。


 反抗組織のメンバーが退路を確保してくれている間、レイカとともに建物内へと入る。


 どうやら中は倉庫のようだ。

 とても埃くさくて物が散乱している。ただ、大まかではあるが、区切られた壁で用途別に分けられてはいるようだった。


「大きいので本当にあればすぐに見つかるはずですが……あ、ありました!」


 レイカが最奥付近で声をあげた。

 案内役の帝国兵が肩越しに窺うような目を向けてきた。


「本当だったみたいね。ありがとっ」


 脅していた帝国兵の即頭部を銃床で殴った。

 帝国兵が倒れる中、急いでレイカのもとに向かう。


 彼女の前に置かれたのは矩形の黒い箱だ。

 赤子なら軽く入ってしまうほどに大きい。


 また持ち手にはある人名が描かれていた。

 ――サクラ・ナナツガネ。


 間違いない。

 これは〝ある人〟から贈られたものだ。


 クァーナは風銃を背負い、箱を持ち上げんとする。

 が、少し浮いただけに終わってしまった。


「おっもっ! レイカさん手伝って!」

「は、はいっ」


 2人でぴくぴくと全身を震わせながらではあったが、なんとか持ち上げられた。


 上げきってしまえばあまり苦ではない。

 これなら輸送船まで運べそうだ。


「それじゃ行くよ! レイカさん!」

「行くって、やっぱり……」

「決まってるでしょ! いまからこれをゼノに届けに行くの!」



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