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シャラ・クラーラの奇蹟 ~かつて雷帝と呼ばれた男は、白銀の翼竜と自由を求めて空を飛ぶ~  作者: 夜々里 春
【明日への旅立ち】第三章

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◆第四話『反抗の意志』

「帝国の襲撃があったのは、いまから半年ほど前です」


 レイカの話はそこから始まった。


 ちなみに彼女と護衛2人は拘束していない。

 だが、念のために風銃は取り上げてある。


「この地下施設の存在がいつから知られていたのかはわかりません。ですが、襲撃は本当に突然で、我々は成す術もなく制圧されてしまいました」


 当時のことを思いだしているのか。

 レイカがあわせた両手をぐっと握りしめる。


「思い知りました。帝国との差を……我々の力では絶対に勝てないと」

「だから怖くなって帝国に従ったってわけ? それも唯一帝国を倒せるかもしれない人――《雷帝のクラーラ》を殺す手伝いを! 仲間を人質にとられたからって……反抗組織の名が聞いて呆れるわね」


 クァーナが苛立ち混じりに吐きだした。


 反抗組織との出会いは彼女の手引きで実現した。

 つまり彼女は顔に泥を塗られたようなものだ。

 怒るのも無理はなかった。


「レイカさんがどんな思いで――」

「いいんです。クァーナの言うとおり、わたしが本来の目的に反したことをしているのは事実です。どんな言葉も受け入れるつもりです。受け入れるつもりですが……っ」


 レイカは護衛の1人を諌めつつ、強い葛藤を顔に滲ませた。


 目的のために仲間を切り捨てられない。

 優しいとも言えるし、生温いとも言える。

 だが、個人的にこういう人間は嫌いではなかった。


「帝国からはなんと命令されたのデスカ?」

「一定の食糧の提供。そして……」


 グリッグが質問に、レイカが言い淀みつつ答える。


「帝国に敵対する者を拘束し、引き渡すこと、です」

「そういう奴らは反抗組織の存在を知れば自然と集まってくるしな。餌場として利用されたってことか」


 あけすけに表現したからか。

 レイカがばつが悪そうな顔で下唇を噛んだ。


「見返りはあったのか?」

「……そばの空域を浮遊する帝国のグウェル島に仲間の13人が捕らえられています。そのグウェル島が30日に1度、このヒュレンに接近するのですが……その際に帝国への忠誠を示せば、人質たちの無事な顔を見られることになっています」


 忠誠を示す方法は、おそらく帝国に敵対する者を差しだすことだろう。島1つを使うのはなかなかに大掛かりだが、上手いやり方だ。


 シャラがこわばった顔を向けてくる。


「……ゼノ、行くのですか」

「ああ、そのつもりだ。こいつらの人質を解放しにいく」


 会話を聞いていたのだろう。

 レイカがひどく焦ったように反応する。


「無理です! グウェルにはガリアッドが5体も配備されているんですよ!?」

「だからどうした? たしかにこんな辺境で保有するには過剰な戦力だが、お前たちがもともと相手にしようとしていた帝国本土の戦力はそんなもんじゃないぞ」


 帝国本土と本格的な戦争するかどうかは置いておいても、ガリアッド5体どころで立ち止まっていては、この先の自由を求めることはまず難しいだろう。


「次にグウェル島が来るのは?」

「……今日です。おそらく昼過ぎに」

「昼過ぎって、もうすぐじゃんっ」


 クァーナが焦ったような声を出す。


 いまはまだ朝と言える時間だが、正午は近い。

 グウェル島が来るまでほとんど時間はなかった。


「グリッグ、シギ。急いで戻ってヴィンスに戦闘の準備をするように伝えろ。シュボスにあるだけの空車輪をいつでも飛ばせるようにしておいてくれ」


 了解の意を返したのち、グリッグとシギが急いで部屋から出ていく。


 奇襲をしかけられる状況ではあるが、人質を解放する目的がある。別働隊を作る必要性を考えても、戦力はどれだけあっても困らない。


 ゼノはレイカに向かって告げる。


「さて、あんたらも協力してくれるよな。まずはこの島から幾つか空車輪をシュボスに移動させてくれ。あとは――」

「ま、待ってくださいっ」


 レイカが言葉を遮ってきたかと思うや、信じられないといった目を向けてきた。


「どうしてそこまでするのですか? 我々はあなた方を帝国に引き渡そうとしたのに……っ」

「お前たちも好きで従ってたわけじゃないんだろ」

「そ、それはもちろんですっ」

「だったらどうでもいい。それにいまは少しでも味方が欲しい」


 敵だらけの世界だ。

 くびきを外しさえすれば仲間になる者がいるのなら、外す価値はある。


 こちらの返答に納得がいっていないのか。

 レイカは唖然としたままだった。


 ゼノは彼女の前で目線を合わせるように屈んだ。

 揺れる瞳を見据えながら微笑みかける。


「あんたは優しすぎる。血なまぐさい場所には向いていない人間だ。だが、俺はそういう奴は嫌いじゃない」


 いやなら戦わなくてもいい。

 そんな気持ちを込めて言ったつもりだった。


 だが、レイカの反応は違った。長く静かに息を吐きだしたのち、まるで憑き物が落ちたようなすっきりとした顔を向けてきた。


「ありがとうございます。……わたしに戦う機会を与えてくれて」


 レイカはすっくと立ち上がったのち、そばの護衛たちに向かって言う。


「2人とも、彼の指示に従って動いてください。これより我々は仲間を救出するため、《雷帝のクラーラ》とともに帝国と戦います……!」



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