5-3 チート職のレベリング
練習試合だけでレベルが上がるチート職。
実戦の経験は何物にも優るので、試合をすればするほどレベルが上がるのは、
何ら不思議なことではありません。
コマケェコタァイインダヨォ!
「……で、なんですぐに移動しないの~!?」
と、ノアが抗議をするのも無理はない。
ジェダルに行き先を決めたものの、寅は数日ビーダブに滞在するといい、さっさと宿をとってしまったのだ。
「まず第一に」と、寅はノアの鼻先にヌイグルミの手を突きつけ、
「リムラとタグのレベリングが先だ」
「何で?」
「俺はこのままのチームで動くつもりはない」
「オーマイマイ、寂しいことを言うじゃないか」
「現実的な話として、オーナーが二人いること自体、この世界のレスラーとしてはおかしな話なのさ」
「オヤァイ? そりゃあ、どういうことだい?」
「まず一つ。レスラーとは、この世界に”何故か”生み出されている。唯一、自己申告じゃない職業だ。俺はこの謎を解く必要があると考えている」
「それと、リムラのレベリングがどう関係してくるんだ?」
「アンダカの話を思い出してみろ。種族の王を追いかければレスラーに当たる、と言われたんだぞ」
「だな」とナーミ。
「どう転んでも、強い魔物や亜人たちと闘うことになる」
「たしかに」とノア。
さらに寅は続ける。
「タグ、現在のリムラの最大の弱点を言ってみろ」
「経験不足だ。まだ初体験をすませたばかりだからな」
「プロレスのな?」
ナーミのツッコミがなかったらだいぶ怪しい響きになる。
「あとはまだレスラーとしての個性がないって事か。どんなテクニックが好きなのか、得意なのか分かっていない」
「スキルの話ですよね?」と、今度はリムラ。
「けど、俺ならテクニックは教えられる。どんなものでもウェルカムだからな」
「寅さ~ん、タグが壊れた~」とノアが言いつける。
「壊れてない。そいつがあえて誤解を期待した言い方しないだけだ」
「オヤァイ、俺は至極真っ当なことしか言っていないつもりだぜぇ?」
「わざとらしい。とにかく、二人のレベリングをしなければ里帰りも出来なければ、このまま旅を続けることも出来ない」
「ん~、あたいも寅さんに賛成かな」とナーミはベッドの上で腕組みをしつつ、
「ノアの父ちゃんと母ちゃんは旅芸人な訳だろ? その場所でしばらく稼ぐんだから、慌てなくても追いつけんじゃねぇかな」
「ん~、言われてみれば……」と、ノアも腕組み。
「旅をしていて、あたいもノアも、ラリアット以外のバリエーションに救われているところもある」
「リザードマンの時とか?」
「そうそう。そういうのに対処できるまではレベリングしてからの方が良いと思うんだよな」
「ん~、確かに……」と、ノアは唸ってしまう。
「ジェダルじゃなくても、通行証にはギルドカードを使うんだし、冒険者ギルドで手紙の連絡は付くし……」
考えてみれば慌てることもなかったかもしれない。
「基本的にレスラーはトラブル体質になるからな。箱入り娘の世間知らずが世渡りするには不安しかない」
「反論できません……」
リムラは神妙に俯いている。
何せ宿泊の手続きの際に、何をしているのか全く理解できなかった。
トココの金貨銀貨銅貨の区別も付かず、宿の相場も知らず、料理の名前も分からないのだ。
「無知ってのは痛いもんだねぇ。まぁ、慣れれば平気になるもんさ。もちろん、世間の常識ってことだぜ?」
「は、はい……」
「エロライオン」とナーミが冷たい目でタグを睨みつける。
「ともかく、まずはリムラに常識を教えることと、身分証の入手だ。冒険者ギルドへ登録するにも、一度登録したことのあるビーダブの方が何かと都合がいいだろう」
寅の意見に反論はなかった。




