4-19 再現という名の…
ザロクは犠牲になったのだ。
「あ、私たち、成人した後はあまり容姿が変わらなるので」
「タメ口ですいませんでした!」
「へ、平気です、お気遣い無く!」
今更ペコペコワタワタする二人。
先ほどまでの熱血名闘いが嘘のようだった。
「それよりも魔法だ、魔法。お、ラリアットが増えてる」
「ラリアット、ですか? 先ほど、ノアさんが使った、あれですか?」
「そうそう、リムラが切り返して逆転したやつな」
「そういえば、寅さんが動き始めたのもラリアットって私が叫んでいた時だったね」
「ああ」
「というわけで、リムラちゃん、どうぞ!」
「年上に迷わずちゃん付けしやがった!?」
「え? えーと……ラリアット?」
リムラはラリアットを唱えた。
しかし、何も起こらなかった。
「……違った?」
「う~む……」
寅が腕組みをしながら、転がったワーライオンのヌイグルミを眺める。
「ノアの時を再現するか……」
「再現って、どうすんだ?」
「ゴブリンの群に殺されかかる」
「え……」
「認めるわけが無かろう!!」
言葉を失ったリムラの代わりにザロクが口を挟む。
「だいたい、この~……なにやら立派に作られたワーライオンのヌイグルミが、歩いて動き回るという話がどうかしている!」
「歩いているんだから仕方ない」
ノアに掲げられる寅は悟った表情で仁王立ち。
何故か後光が差している。
「ともかく、精神的に追いつめられたタイミングで唱えないと発動しないのかもしれん」
「ん~、じゃあ、もう一回追いつめてみようか」
「なに?」
ノアの物騒な提案と同時にナーミがリムラを羽交い締めにした。
「え? えっ?」
「まぁまぁ、一発喰らっけばラリアットも身体が覚えるから」
「え、そう、なんですか?」
「それでは~、これからラリアットの実演にまいりま~す」
言いつつ、ノアは右腕をぐ~るぐる。
「ラリアットは、一撃必殺の魔法で~す。ラリアット、と一言唱えて相手にぶち込めば、相手の魔力に致命的なダメージを与え、ノックアウトされます。では実際に喰らってみましょ~、ラリアット!!」
と、ノアは助走をつけて、羽交い締めされたリムラに走り込む。
「ちょ、え? 待ってください、これ、えっ?」
「待てぃ、娘にこれ以上手出しはさせんごばぁっ!?」
庇おうと前に出たザロクに誤爆。
「ザロク様~っ!!」
一撃でKOされた族長に慌てて一族が駆け寄る。
「ば、ばかな、本当に魔力が……」
強制的に魔力を喪失したザロクは立ち上がることも出来ない。
「も~、飛び出してきちゃダメですよ~。これはリムラちゃんのためなんですから。じゃあ、もう一発行きますよ~、ラリアットォォォ!!」
先ほど負けた意趣返しもあるのか、ノアの顔がかなり悪者になっている。
「ひっ……」
父親を吹き飛ばした魔法が迫ってくる。
自分のためなら受けなければいけないような気がするが、これを受けたら父と同じように吹き飛ばされ、一回転してKOされる。
そう思うと、リムラの心に、闘いの時とは無縁だった感情がわき起こる。
「ス、ストレッチプラム!!」
思わずリムラはカウンターの魔法を唱えてしまった。
ナーミの羽交い締めをふりほどくと、ノアのラリアットを右腕で受け止め、そのまま背後に回り込み、ストレッチプラムの完成。
「んぎゃ~、またしても~っ!」
「懲りねぇな、お前も……ギブするか?」
「の~!」
「あ、あの、すいません、やっぱりノアさんのラリアットが怖くって」
「あんな凶悪な顔で迫られちゃあな……けど、成果はあったみたいだぜ?」
「えっ?」
見れば、ワーライオンのヌイグルミが起きあがって、自分の手足を確認しているではないか。
「起きあがってる……」
「それに、動いているな」
「うそ……ほんとに?」
「ぎぶ、りむらちゃん、ぎぶ……」
信じられない光景を見つめる一同の中で、約一名だけ敗北を宣言していた。
そして結局負けるノアだった。
ストレッチプラムに、というより、スキルのサブミッションの効果のようですよ。
コマケェコタァイインダヨォ!




