4-2 移動していくホーム
ノアはそろそろ家族の元に戻りたいようです…。
翌朝。
朝一でギルドに訪れ、依頼完了の報酬を受け取り、そのままギルドのテーブルで地図を広げる。
「さて、次の目的地は……」
「寅さん」とノアが手を挙げ、
「そろそろビーダブに戻りたい」
「何だよ、ママのおっぱいが恋しくなったのか?」
「そうじゃない! このままだと、お父さんもお母さんもどっか行っちゃうの!」
「あ、そっか。ノアの父ちゃん母ちゃん、そもそも旅芸人だっけか」
「一つの街に腰を据えているのも半月が限界。飽きられる前に路銀を稼いで次の街に行くのが旅芸人の鉄則」
「成る程なぁ……つーことは、怪我が治ったらすぐに稼いで次の街って考えるか」
「たしかに、このまま何の事情も話さないまま度を続ける訳にもいくまい。それに現状、俺たちは金に困っていないしな」
今回の報酬も250万トココ。
たとえば今ギルドにいる冒険者たちに、酒をおごったとしてもお釣りがくる金額だ。
「っつーか、長年放置されている案件ってのは実入りがいいんだな」
「ん、私たちが生まれるずーっと前の依頼だし」
「何とか解決してほしくて値段をつり上げて、解決できずまた値段が上がって、の繰り返しだったんだろうな」
「馬車にも乗っていける。だいぶ寄り道しているし、そろそろ入院も終わっちゃう」
今回、仕送りした金額なら高級ポーションも購入できる。今頃、元気に路銀を稼いでいるかもしれない。
ギルドで手紙を郵送して貰う手段もあるが……。
「ロアからビーダブまでは、馬車なら3日だな。このまま旅は続けなきゃならんし、まずはノアの両親に状況をちゃんと話しにいくか」
寅の決定に「さんせーい」と二人そろって手を挙げた。
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馬車の旅。
徒歩より早く、荷物も多く運べる利点がある反面、盗賊などには見つかりやすく、魔物の襲撃にも気をつけなければいけない。
「だからってさー、あたいの扱い、酷すぎじゃね~?」
ナーミが馬車の屋根でぼやく。
全く使わない巨大なバトルアックスをこれ見よがしに背負わせて屋根に座らされている姿は、完全に威嚇用の置物状態だ。
「ナーミが外に行るだけで魔物除けになるんだから、我慢我慢」
「これが真冬だったら、凍え死にしてるぞ、ちくしょー」
乗り合い馬車の御者から頼りにされたのは、ドラゴンニュートが使う「ドラゴンハウリング」だ。
ナーミにとってはただの会話だが魔物にとっては強烈な威嚇になる。
転ばぬ先の杖、というわけだ。
「で、なんか出た?」
「ゴブリンがちょいちょい。コボルトも出てきてるけど、遠巻きに眺めているだけだな」
「追ってきているか?」
「んにゃ、すぐにどっかに消えてるな」
さすがにドラゴンニュートの姿を見て、襲うことを決断出来ないようだ。
「けど、こんだけちょいちょい雑魚が顔出していると、野営するところがちょっと心配だな」
「ふむ……」
ナーミの感想に寅が唸る。
基本的に、馬車の野営地は宿場になっている。
とうぜん、外敵への対策はあるが、魔物を全て除外するような結界を張っていることは稀だ。
「もしかしたら、宿場では一悶着あるかもしれんな」
ノアとナーミは、厄介事を呼び込むレスラー体質だ。
ならば、不要な接触を避けるより、こちらから仕掛けた方が良いかもしれない。
「ガォォォッ!!」
そう考えていた矢先、ナーミが馬車を狙っていたゴブリンを追っ払った。
「仕掛けるタイミングはないな」
とりあえず宿場までは大人しく馬車にゆられていることにした寅だった。
「ところで寅さん」
「なんだ?」
「バタフライロックって魔法ですか?」
「関節技だ」
先はまだまだ長い。
魔除けの置物ならぬ災難よけのドラゴンニュート。
亜人種の中でも上位に位置する為、早々に魔物は襲ってきません。
盗賊も山賊も馬車の外でバトルアックス持っているドラゴンニュートがいたら襲えません。
それくらい、上位の種族です。
ナーミが残念すぎて上位種らしいことする機会がないだけで。
コマケェコタァイインダヨォ!




