3-13 切り札
二人とも切り札を切るようですよ
「ぐぁぁっ……」
「ギブアップ?」
「ノーッ……こんちくしょーっ!!」
ササトの逆エビ固めを、ナーミが腕立てで跳ね返した。
リングの上では、ナーミとササトのねちっこい攻防が続いている。
打撃技はナーミの方が上を行くが、一度組み合えばササトの技術は異常だった。
子供のように転がされ、関節を取られ締め上げられる。
しかし、一度や二度ではなく、三度、四度と受けていると、ナーミは身体で理解をし、そして反撃する。
まるで闘っているというより、師弟の間で繰り広げられる伝承の儀式のようですらあった。
「こいつで、どうだぁぁっ!!」
「………っ!! ……っ!!」
ウォールオブナーミが完全に極まった。
ササトはかなり苦しみながらも、ロープへと這っていき、ロープへと逃れた。
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「なんだか、すごい試合になってきた」
「そうだな」
「寅さん、なんか冷静」
「ノアもな」
「ん……ナーミもササトって人も、なんだか楽しそうだし、私も見てて勉強になるし」
「それは何よりだ」
寅は何故かハードボイルドな笑みを浮かべている。
「もしかして、寅さん、何か気づいている?」
「いや……ただな、プロレスは、二人の気が済むまでやらせてやりたい」
「ん……そうかも」
リッチの時のような、激しい殴り合いや投げ合いはほとんどない。
それでも、白熱しているのは、ナーミとササト、二人の気持ちが真っ正面からぶつかり合っているから、かもしれない。
「それが、プロレスってもんさ」
「ん……」
寅の言葉に、ノアは静かにうなずいた。
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「ぜぇ、ぜぇ……オッサン、タフすぎんだろ……」
「……っ」
「お互い様だ、だそうです」
「つーか、いい加減自分で喋れよ」
「……っ」
「俺はシャイなんだよ、だそうです」
「へっ、良い歳したオッサンが何言ってんだ」
「っ……」
「小娘に言われたくない、とのことです」
「言ってろ……」
ナーミがゆっくりと立ち上がる。
すでに足に力は入らず、震えている。
闘いが始まってすでに2時間近くが経過していた。
激しいやりとりをしているわけではないが、すでに体力は限界まで達していた。
それはササトも同じようで、大きく肩が上下している。
「……っ」
「次の技が最後だ、だそうです」
「おもしれぇ……けど、あたいが先にラストをぶち込ませてもらうぜ……」
ナーミが右腕をゆっくりと回す。
「ラリアット……」
ナーミの誇る、最大最強、強制ノックアウトの必殺技。
「いくぜぇ、オッサン!!」
最後の力を振り絞り、ナーミはロープの反動で加速をした上でササトに向かって走る。
「だりゃあっ!!!」
「っ!!」
バシンッ、と胸板にたたき込まれたナーミの剛腕。
「なっ!?」
しかし、ササトは仁王立ちで受け止めて見せたのだ。
「ウソ、だろ?」
「っ!!」
ササトはナーミの隙を見逃さない。
ナーミの胴体と足を自分の足で挟み込む技、カニ挟みを仕掛け、
「監獄固め」
「え、喋ったおわっ!?」
さらにナーミの足を「4」の様に絡め、その上に正座をするように座り込む。あっという間に監獄固めが完成していた。
「っ!?!?! いっっってぇぇぇっ!!!」
「ギブアップ!?」
「ノーッノーッ!! づぅあああああっ!!」
筋肉の固まりのようなササトの全体重を足に乗せられ、ナーミは見たことが無いほど苦しんでいる。
「ギブアップですか!?」
「ノーッだって言ってんだろ!! いっだだだだっ!!」
「足が折れてしまいますよ!?」
「こんなんで折れるほど、ヤワじゃあだだだだだっ!!」
「ギブアップですか!?」
「ノーッ!! いぢっ……いだだだだっ!!」
自分で逃げることが出来ず、ナーミは身体を暴れさせながら悶絶している。
しかし、ササトに圧し掛かられた下半身だけは、びくともしなかった。
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「寅さん!」
「……ナーミを信じろ」
「で、でも、あれ……」
ノアもナーミに使われた覚えがある。
監獄固めという、足4の字固めの亜種のような技。
効果までは不明だったが、練習で一度仕掛けられた時は、ノアは外すことが出来ずギブアップまで追い込まれた。
ナーミの体重ですから激痛だったのだから、筋肉の固まりのようなササトにやられたら……想像するだけで、ぞっとする。
「大丈夫だ……ナーミなら、自分で気づけるはずだ」
寅はまっすぐ戦況を見つめていた。
ナーミ、大ピンチ。
監獄固め:監獄の中で仕掛けることで威力が倍増する
ラリアットで強制ノックアウトされてないとか、それこそ、
コマケェコタァイインダヨォ!




