3-9 60年間の孤独の恩恵
モデルが誰かは言わずもがなもごもごもご。
「……」
二人と一匹が独房に入ると、長い髭を蓄えた男が、部屋の奥に座り込み、じっと睨んでいた。
独房の中は想像以上に広かった。ひろさとしては十畳くらいはあるだろうか。
ちょっとした、運動には耐えられる広さだ。
ササトの隣には、オリョウがついている。
「……」
「だれだ、あんたたちは、とおっしゃっています」
「っつーか、本人がしゃべれよ!」
「恐れ入りますが、ササト様は何年も人と話さないうちに、すっかり声が出なくなっておりまして」
「そ、それじゃあ、仕方ねぇか」
「じゃあ、オリョウさんと話すときは?」
「私は常にそばにつき従っておりますれば」
「なるほど、ちっちゃい声でもぜんぜん問題ないね」
「さて、話を進めよう」と、寅が進み出る。
わずかにササトが動いたような気がした。
「俺はこの二人のオーナーで、寅という。あんたと闘いに来た」
「……ぅぅ……」
呻くような返事が帰ってくると、ササトがゆっくりと身体を起こす。
「待っていた、と」
「承知している」
「どちらのお嬢さんが闘っていただけるのですか?」
「ナーミ、頼めるか?」
「おっけ」
と、ナーミが進み出た。
「彼女が相手だそうですよ、ササト様」
「……ぅぅ……」
「見てくれは悪いが、こいつがかけてくれる生活魔法で清潔には保っているから安心してくれ、だそうです」
「そりゃあ、お気遣いどうも。ゾンビに触るよりずっとマシだから十分よ」
「……ぅ……」
短く呻くと、ササトは上半身に来ていた囚人服を脱ぐ。
服の下は、筋肉の鎧に覆われた、屈強な身体だった。
「お、おいおい、どういうことだよ!?」
「……ぅぅ」
「簡単な話だ、50年間、何もすることがなかったので、ずっと身体を鍛えていた、だそうです」
「マジか……」
もし身綺麗にして、剣の一つでも持っていたら、歴戦の勇士と言われても疑いもしないだろう。
それほど、ササトの身体はビルドアップされていた。
「……おもしれぇ。50年鍛えた人間と、屈強な身体を生まれ持つドラゴンニュート。どっちが強いか、試してやんよ!」
ナーミとササトの戦いの幕があがった。
というわけで、今回はナーミです。
いよいよ皆大好き、あの魔法の出番ですね。




