3-6 その声の元は…
日本のホラーは海外と違うのです
マトウ大監獄にはすぐに入ることが出来た。
本来、犯罪者ではない一行が簡単に入ることは出来ないはずだったが、冒険者ギルドの古い依頼に、怪談話の解決があった。
一行はこの依頼を受け、大監獄への通行証としたわけだ。
「なぁ、寅さん、やっぱり今回の相手も、アンデットかゴーストじゃねーの?」
「オーナーに関しては、その可能性が否定できんな。しかし、独房の男の話は現実だ」
依頼を受けたことを看守に伝えた際に、しっかりと情報は聞き出した。
収監されているのは予想とは違い、人族の男だという。
名をササトと言った。
彼の罪は、前領主の娘と恋仲になり、結婚を認めたくなかった領主が腹いせに罪をでっち上げた。
ところが、彼の悲劇はこの後だ。
鍛冶師だった彼は、炭坑夫に身を落とし、ずっと煤にまみれた生活をするはずだった。
ところが、ステータスプレートの職業が、いつのまにかレスラーに書き換わってしまっていたのだ。
そして、何度申告をしても、彼の職業はレスラーから書き換わることは無かった。
奴隷に身を落とさないと判断された彼は、領主の独断で職業を奴隷に落とさない限り独房から出さないと言われ、扉に封印の魔法をかけられてしまう。
不幸はさらに続くもので、この封印を解けるはずの領主は数年後、あっさり病死。
恋仲になった娘は彼を救うために帆走するも、扉は開くことなく、残酷に時は過ぎていく。
彼女もまた、自分の人生の時間を終えてしまい、とうとう彼は、自ら独房の扉を堅く閉ざしてしまった。
「話を聞く限り、完全に冤罪被害者だな」
「生きているか死んでいるかも分からないって言われたら、あたいらにはどうしようもねーよ。っつーか、また骨が相手なんじゃねーのか?」
ナーミが身震いする。
肉体言語使いが、好き好んでゾンビやスケルトンの相手はしたくない。
「看守の話では食事だけは食べているって話だっただ。生きてはいるだろうな」
「だといいけどな……」
「……ねぇ」
「あん? どうかしたか、ノア?」
「ん? 何も言ってないよ?」
「だって、いま、ねぇって言ったじゃねぇか」
「言ってないもん」
「言っただろ!?」
「言ってない!!」
ノアがプイとそっぽを向く。
「……ねぇ」
「ほら、また言ったじゃねぇか!」
「言ってないもん!」
「だいたい、呼ぶならちゃんと名前を呼べよ!」
「熟年夫婦か!」
「あたいのセリフだ!」
「おい、夫婦漫才はその辺にしておけ」
「「だって、寅さん!」」
「お客さんが、退屈そうにしているぞ」
「「へ?」」
見れば、暗い通路に、ボロボロの衣服をまとった女の子の木偶人形が一体、無機質な表情を浮かべていた。
「「ひっ……」」
と、二人はそろって抱き合う。
前回のゾンビとゴーストの大軍団とは違い、暗がりの中にポツンと佇む目の前の人形には異質な怖さがあった。
「あなたたち、レスラー?」
張り付いた能面顔のまま、人形の首がカタンと傾く。
そのまま首がもげて転げ落ちそうになる。
もはや、完全なホラー映画の状態だ。
「俺はオーナーの寅、後ろの二人がレスラーだ」
「そう……やっと、現れた、あららわレレララらわららあらたたラララタタタレレレららあらわれたアラワレタアラワレタアラワレタアラワレタワレタレタワエタエタ!!」
カタカタカタカタと揺れる人形がさらに壊れそうに揺れる。
「怖い怖い怖い怖い!!」
「痛い痛い痛い痛い!!」
ナーミが思わずノアをベアハッグして、ノアが高速でタップしている。
「あー、すまんが、少し落ちついてもらえるか?」
「……失礼、嬉しさのあまり笑いがこみ上げまして」
「「笑ってたの!?」」
さらに衝撃の事実だった。
多分、物量の恐怖では無くて、単体の質で怖いのだと思うのです。
っつーか、どう見てもギャグになっていますが。
まぁ、いつもの通り、コマケェコタァイインダヨォ!




