2-12 ノアとナーミの生き方
依頼を受けた二人と一匹は教会に向かっているようです
「あたしら以外のレスラーか……」
教会への道すがら、ナーミは夜空を見上げながら呟いた。
「信じられないか?」
「そりゃな。ノアと寅さんと会うまでは、誰一人、レスラーはいなかったんだから」
「だが、竜族の長はラリアットを知っていたんだろう?」
「あくまで伝説だよ。実際にいたのはあたいだけ」
「そうか……」
「ぶっちゃけさ、世界最強になる資格をもつ者、とか言われても、あたいは全然ピンとこないんだよな」
「……そうだな」
と、寅はうめく。
実際、ノアとナーミには目標とする存在がない。
例えば、あこがれの冒険者であったり、伝説の魔法使いであったりすれば、付随した冒険譚や物語がある。
その存在に憧れ、英雄を夢見ることも出来る。
ところが、長い寿命を持つ竜族の中ですら、レスラーは伝説扱いになってしまう存在なのだ。
目標となる冒険譚も英雄伝説も、今のところ皆無だ。
「ノアはどうなんだよ。世界最強なんて目指したいのか?」
「難しいことは考えない」
「考えねぇのかよ……」
「今は寅さんがいて、ナーミがいて、世界を旅してる。自分たちの力で。それは、ちょっと楽しいから、今はそれでいい」
「そうか」
寅は柔らかい笑みを浮かべる。
旅の吟遊詩人と踊り子の娘であるノアにとって、いろいろな街を巡る生活は、今までと大差はなく、むしろ自分の力で生きている実感があるのかもしれない。
「お、見えてきた」
と、ナーミが気づく。
ドラゴンニュートは夜目も効くらしい。
「つーか、すんげーオンボロだな。今にも崩れ落ちそうだぞ」
「60年間リッチが住み続けているわけだからな。痛みもするさ。二人とも、準備はいいか?」
「うん」
「おう」
二人と一匹は、夜の教会へと足を踏み入れた。
ナーミは従属したけど、とりあえず一人前のレスラーになるため。
ノアは自分で生きていく道が見つけられたので、楽しむ為。
二人にとって、レスラーは天職のようですよ?
コマケェコタァイインダヨォ!




