2-10 言われてみれば…。
改めて人から言われると、気づけることって有りますよね。
ティヌエーの街は、街道と海路を中継する場所にあり、王都には及ばないものの、かなりの大きな街だ。
人の出入りも多く、海には商船が犇めいており、城門の所には審査待ちのキャラバンが行列を作っている。
これだけ大きい街ならば、ギルドの規模も期待できるだろう。
二人と一匹は早速ギルドへと足を向けた。
「えーと、グランドタイガー、グランドタイガー……」
「オーガグリスリー、オーガグリスリー……」
ギルドに着くなり、二人揃って依頼の張り紙を眺める。
後付けの依頼でも、討伐証拠の魔石があれば、依頼達成扱いになるのだ。
二体ともそれなりに驚異度も高く、討伐依頼が出ていても不思議ではない。
「あったーっ!」
「こっちも!」
と、二人とも程なく依頼書を見つけた。
指定された地域も問題なく、金額も50万トココ、26万トココとかなり高額だ。
「よし、それじゃ……」
と、寅は口の中から魔石を取り出す。
「それにしても、便利だよなぁ、寅さんの収納魔法。魔石以外も入ればいいのにな」
「……うん?」
寅が豆鉄砲を喰らったような顔になった。
「え、違うのか? あたい、てっきり収納魔法使っていると思ってたんだけど」
「いや、言われてみれば、その通りだな……」
意識していなかったが、確かに自分の体積を遙かに超える魔石を腹の中に入れているのだから、使っているのは収納魔法、すなわち空間魔法に該当する。
「なるほどな……」
魔石をかじることで魔力が上がることは判明している。
それまらば、ある一定数の魔石を喰えば、収納以外にも出来ることがあるかもしれない。
「寅さん?」
「ああ、すまん。少し考え事をな」
ノアの不安そうな声に我に返る。
ともかく、今は換金だ。
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「これは本当にあなた達が討伐したのですか?」
困ったことに、話は簡単に進まなかった。
魔石が本物であると認めたにも関わらず、受付嬢から報告を受けた副ギルドマスターが何らかの不正があると疑い始めたのだ。
出てきたのは明らかにデスクワークで成り上がったようなメガネをかけた三十路過ぎの男だった。
冒険者ギルドに登録しているとはいえ、二人は駆け出しのランクE。
対して討伐したオーガグリスリー、グランドタイガーは驚異度ランクA。
本来は、小隊を編成して討伐するようなレベルの魔物のはずなのだ。
「倒したもん!」
「信じろよ!」
ノアもナーミもかなり不満そうだ。
苦労……したとは言いづらいが、しっかりと自分の力で倒したのに疑われるのは良い気がしない。
「疑うのは勝手だが……」
と、受付のテーブルに寅が飛び乗る。
「ぬ、ぬいぐるみがしゃべった!?」
「こちらは自分で討伐したと申告している。にもかかわらず、あんたは疑わしいと言う。こちらに疑いをかける以上、あんたは我々の詐欺行為を証明しなければいけないはずだが?」
「そ、それはそうですけど……こ、こんな子供が魔物討伐が出来るわけがないでしょう!」
「どうやって証明する? ノアはすでにゴブリン討伐の実績を上げているし、ナーミもドラゴンニュート族で戦闘力は疑いが無い。あんたの言うところの出来ないを二人ともやっているんだよ」
「ぬ、ぬいぐるみの分際で……いいですか、もしこれが何らかの不正を働いて納品したものであれば、あなた方が厳しい罰則を受けるのですよ!?」
「勘違いするな。俺たちは納品をした。不正があるというなら、あんたが、自分で、証拠を揃えて、証明する必要がある。不正をしたことを前提に話すのは筋違いだ」
「む、むむぅ……」
なんだ? と寅は眉を寄せる。
確かに信じられなくはあるだろうが、目の前に討伐された魔石があるのだから、そこまで疑うような必要があるだろうか。
と、すっかり待ちくたびれたナーミが、寅と同じように受付のテーブルに飛び乗る。
「ああ、もう! だったら、あたいと勝負しろ! どうやって倒したのか見せてやるよ!」
「文句があるならかかってこい」
自分も乗らなければいけないのかと思ったのか、ノアも飛び乗った。
まるで冒険者ギルドに押し入った強盗……のまねをしている子供だった。
人を疑う理論が最近間違っている気がしています。
悪魔の証明で疑う人間には裏があるものです。




