2-9 武芸者の愚痴
ノアはかなり器用なようです
『挑戦者求む 二人の少女のうち、どちらかを倒した猛者に、魔石10個を進呈! 挑戦料50トココ』
掲げられたノボリはノアのお手製だ。
このあたりの器用さは旅芸人の両親について回っていた杵柄というものなのだろう。
エーブの街を出立する前、ノアは安い布と染料を買ってきたかと思ったら、ギルドで不要になっていた動物の尻尾の毛をもらい受け、自作の筆であっという間に書き上げてしまった。
風にたなびくノボリは、街道を歩く行商人や冒険者達の目を引いている。
「ノア、すげーなー。あたい、こういうの、全然出来る気がしねぇ」
「慣れだと思うよ」
「ん~、あたい元々読み書き苦手なんだよな」
「勉強不足?」
「いや、だってよ、連絡するなら鳴いた方が早いだろ」
ナーミの話では、ドラゴンに近い生活をしているドラゴンニュートは渓谷の奥深くに集落があり、連絡手段は主に声のみになる。
となると、意図を一声で伝えられるドラゴンハウリングが最良の通信手段になり、わざわざ文字を読
んだり書いたりする必要は無い、ということだ。
「でも、ドラゴンは世界の知識をすべて知る、なんてこと言われているじゃん」
「ああ、古竜のじっちゃんな。あたいも何でも知っているってすげーと思ってたけどさ、暇で遊び回っていたら覚えたって言ってたぞ」
「それはそれで、どうなの?」
「でも、じっちゃんの気持ちも分かるぞ。千年も生きていると暇すぎて死にたくなるって言ってた」
「千年かぁ~」
ノアはぼんやりと空を眺める。
途方も無い時間を言われても実感がないというのが本音だろう。
「そう考えると、今こうやってぼんやりしているのも、悪いことじゃないのかな?」
「……いや、ソレとコレとは、別じゃね?」
ノボリを立ててからはや一時間。
挑戦者は一向に現れない。
考えてみれば、ノボリを見ていきなり挑戦、というのがおかしな話だ。
「寅さん、どうする?」
「そうだなぁ、もう少し血気盛んな輩がいると思っていたんだが……無名の小娘二人が相手では、魔石にも釣られんか」
「なあ、寅。あたい、腹減ったぞ」
「ふむ……道場破りでも出来れば良かったんだがな」
「道場破りって?」
「ああ、剣術を教えている場所に乗り込んでいって、誰彼構わず勝負を挑むことだ」
「ん~……」
寅の話を聞き、ノアが首を傾げる。
「いっそのこと、ギルドの教官に挑んでみるのは?」
「教官?」
「うん、ランクアップの時に、実力を計るためにBランク以上の冒険者が教官になって実力を確かめるの」
「レベリング防止ってことか」
「れべりんぐ?」
「まー、腕試し的にはありじゃねーか? あたいらだって結構レベル上がっているしな」
「そうだな……」
リザードマンを倒した後も、それなりにモンスターを倒している。
ナーミがオーガグリスリーと呼ばれる熊の魔物に抱きつき、ベアハッグで倒した。
グリスリーの断末魔は何故か哀愁を帯びて聞こえた。
ノアに至っては、グランドタイガーという虎の魔物にタイガードライバーを仕掛けて倒した。
前足が「ゴギン!」という音を立てて背中に回ったときは、正直グランドタイガーに同情してしまった。
ただし、大物の魔物を倒した割りに、レベルは一つ二つしか上がっていない。
野試合で二人で戦ったときの方がレベリングは効率が良かったのだが……。
「そうだな……ビーダブの前に、ギルドに次の街でギルドに寄っておこう」
「次の街は?」
「ティヌエーだな」
この世界の人々にもスルースキルがあるようです。
コマケェコタァイインダヨォ!




