2-6 今後の方針
どうやら最強の道よりお金の道の方が大切のようですよ?
「大道芸?」
ノアが首を捻る。
「あたいらが何か芸をするってことか?」
ナーミは明らかに不満そうだ。
「勘違いするな。あくまでも、俺たちの進むべき道を探すためだ」
ベッドの上で地図を広げつつ、寅は今いるエーブを指さし、ビーダブまでの道のりと、王都であるダブイまでの道のりを指さす。
「おそらく、俺たちは運命の悪戯ってやつに振り回され始めている。なにせ、お前たちがこの世界に存在しない、レスラーなんて職業になるくらいだからな」
「どうせなら魔法使いが良かった」
「肉体言語な魔法は使っているけどな」
にしし、とナーミが笑う。
二人はお互いの生い立ちを話すくらいには打ち解けていた。
「どちらにせよ、このまま旅をするにせよ、ビーダブへ戻ってノアの両親に合流するにせよ、いずれ金は稼がなきゃならん。レスラーに出来る稼ぎとは何か?」
「「魔物虐殺」」
「せめて討伐と言え」
確かに二人の魔物狩りは一方的になるので、気持ちは分からないでもないが。
「冒険者ギルドで魔物討伐の依頼を受けること以外に、もう一つ方法がある。武芸者だ」
「「ぶげーしゃ?」」
「言ってみれば、自分を倒したら、賞金を支払う。挑戦者はいくら支払うか? まぁ、古い話になるが、武者修行みたいなものだな」
「言ってることは分かったけど……」
「ほんとに、あたいたち、人間相手していいのか?」
二人の不安も当然だ。
何せ、ゴブリンやコボルトだけでなく、街の外で襲ってきた魔物のほとんどが、ラリアット一発で霧散してしまうのだ。
ナーミは既に同族に試しているとは言え、頑丈なドラゴンニュートの話。
人間に仕掛けたいとは思えない。
「だが、ラリアット以外だったらどうだ?」
「あ、そういえば、ノアにぶん投げられた長は生きてたな」
「つまり、人間にも使って良い技はあるはずだ。こればかりは経験を積むしかない。ラリアットに関しても、強制的に魔力を0にするから、魔物は霧散するのかもしれないしな」
瘴気から生まれた魔物は、魔力で身体を構築する。
つまり、魔力に直接作用すると考えれば、魔物限定の即死魔法になるわけだ。
当然、心臓を一発で止めるような魔法であるとしたら、一発アウト、即封印だが。
「でも、お金を稼いでどうするの?」
「そりゃ、生きていくのに金は必要だからだろ?」
「それもそうだがな、武芸者の真似事をするのは、別の理由がある」
「別の?」
「俺たち以外のオーナーとレスラーを捜すためだ」
寅の目算はこうだ。
ノアとナーミで魔物討伐と武芸者のまねごとを繰り返す。
必然的に、二人は注目を浴びる。
さらに目立つのは、二人の使う、プロレス技だ。
一回一回、技の名前を叫ばないと発動しない、ということは、こちらがレスラーであると公言しているのと同義。
つまり、二人の使う魔法がプロレス技と分かれば、相手の方から接触が期待できる、というわけだ。
「……私たち以外の、レスラーとオーナー」
ノアは少し驚いた表情をしている。
「ナーミの知っていた、ドラゴンの先代の長の話を聞く限り、いずれ接触することになるだろうが、とにかく今はより多くの情報がほしい。何も知らないまま、何かに巻き込まれてはたまらないからな」
「それで、武芸者か。いしし、あたいはいろんな奴と戦えるなら、楽しくて良いけどな」
「……私は、ギルドで依頼を受ける方が、好きかな」
「え~? なんでだよ~?」
「寅さんと旅するのが、楽しいから」
不満そうなナーミに、ノアはニカッと笑う。
「寅さんと旅に出てから、まだほんのちょっとしか経っていないのに、いろんなことがあった。ナーミにも出会えた。だから、まだまだ色んな所に行ってみたい」
「そうなのか? あたいは、色んな奴と戦えるなら何だって良いぞ!」
「よし、まずはビーダブを目指そう。旅を続けるにせよ、ノアは両親に話した方がいいだろう」
「ん。わかった」
「ナーミはどうする?」
「あたいは、別にいいよ。ドラゴンの集落はラディヨン渓谷までいかなきゃいけないし、空を飛べないと面倒だし」
「わかった。じゃあ、まずは魔物討伐の依頼をこなしつつ、ビーダブを目指そう」
「「おー!」」
ぜったいに、働きたくないでござる! と叫ぶ浪人さんは出てきません。
コマケェコタァイインダヨォ!




