1-21 竜族の長の頼み
竜族の長は死んでなかったようです
『ええい、負けた、負けた! 言い訳もできんわい!!』
タジラはやけを起こしたように胡座をかいて、頬杖をついている。
竜族の長の風格はもはや感じられない。
「それなら、ナーミの身柄はこちらで引き取り、法の裁きを受けさせる、ということで良いな?」
『ぬぅぅ……』
タジラは渋い顔を隠そうともしない。
ナーミに至っては顔面蒼白だ。
『……敗者にいう資格はないことは重々承知だ。だが、それについて、一つ提案がある』
「聞こう」
『我ら竜族は稀少種だ。人間としては素材の対象としてもさることながら、隷属の首輪を使われ従魔として扱われることもある。また、ナーミは女だ。夜伽の相手をさせられることもあろう』
「ふむ……」
寅は改めてナーミを見る。
性的な魅力は、無い。
しかし、隷属をさせて、嗜虐趣味を満たす輩はいてもおかしくない。
人間とは、業の深い生き物なのだ。
『おてんばがすぎたとはいえ、まだ年端もいかぬ子だ。出来れば救ってやりたいが、それも叶わぬなら、せめてお前に同行させてはくれないだろうか』
「俺に、だと?」
『オーナーの魔力に応じて、レスラー契約は複数出来ると聞いた。あのような年端もいかぬ娘を立派なレスラーとして育てているお主になら、預けても不幸にはならぬだろう』
タジラは巨躯を丸めて頭を下げる。
『どうか、ナーミを一人前のレスラーにしてくれないだろうか』
「ふむぅ……」
寅は顎に手を当てて唸る。
タジラの言うことも一理ある。
希少種のドラゴンニュートの少女。
まっとうな法の裁きより、隷属の首輪をつけられ奴隷にされ、その先は言わずもがな、の方が”金”になる。
法の裁きより先を見据えれば、タジラの言葉は核心を突いているのだ。
「……ナーミのステータスプレートを」
「うぅ……」
ナーミは迷いながらも素直に見せた。
基礎能力は、なるほど、素晴らしい。
さすがは竜族の亜人と言える。肝心の魔法だが、ラリアットの他には、ベアハッグしかなかった。
「なるほど、ラリアットで熊の魔物を倒したな?」
「へ?」
「答えろ」
「あ、うん、おなかが減ったから」
「食ったのか」
「美味かったぞ」
「そうか……お前さん、盗賊はいつからしている?」
「何時から、っていうか、コボルト家来にしたのも最近だったから……」
「勝手に貢ぎ物をしてきて、その出所までは考えていなかったか」
「うすうすは気づいていたんだけど……いっぱい貢ぎ物くれたから、そのぅ……そのうちオーナーになるようなヌイグルミも見つけてくるんじゃ無いかって……」
「分かった」
寅はため息を一つこぼし、タジラに向き直る。
「竜族の長よ。この娘、俺が引き受ける」
『本当か!?』
「腐った性根を叩き直す。奴隷より厳しい訓練を課すと思うが、かまわないな?」
『勿論だ! お主のようなオーナーについてもらうなら、我も安心だ!』
「だが、仮にも悪事に手を染めた訳だ。しっかりと罰だけは受けさせたいのだが」
『おお、それなら、こうしよう』
と、タジラは巨大な指先でナーミの尻尾を摘む。
「いだだだだっ!?」
ナーミが涙を流しながらジタバタと暴れるが、タジラは放さない。
『今、従属の呪縛を打ち込む準備をした。あとは、ナーミ自身がお前に従うことを誓えば魔法が発動する。さあ、ナーミ』
「う、うぅ……竜族のあたいが、ぬいぐるみに、従属だなんて……いだだだだっ!! 分かりました!! あたいは、ぬいぐるみの寅に従属を誓います!!」
従属を口にすると、尻尾に鎖のような模様が浮かぶ。
タジラはナーミの尻尾を放し、
『これで、従属は完成した。奴隷と違い命令に強制力は無いが、逆らえば尻尾に我が摘んだのと同じ痛みが走るようになった』
「うぅ……あたいの尻尾が……」
『ナーミは地竜の血族だ。空は飛べないが、竜族の中でも特に防御に優れた種族でもある。どうか鍛えてやってくれ』
「了解した」
『では、我は里へと戻る。いつか近くに来ることがあれば、また我を呼ぶが良い。歓迎しよう』
タジラは巨大な翼を羽ばたかせ、大空へと戻っていった。
というわけで、一部目はここまで。
ええ、ドラゴンのぶん投げたら楽しいだろうなと思っていただけですが何か?
コマケェコタァイインダヨォ!




