1-16 もう一人のラリアット使い
なかなか残念な子のようですよ?
「おい、俺は……」
「ダメッ!!」
と、寅を抱きしめる腕。
「あ~? なんだ、もうオーナーになっているのかよ」
「何の話だ?」
「ま、いーや。お前をぶっ飛ばして、あたしのオーナーにしちまえばいいんだもんな」
「だから何の話をしている!」
「ってことで、おい、そこのお前。あたいと勝負しろ! あたいが勝ったらそのぬいぐるみは貰うぞ!」
「勝手に話を進めるな!!」
寅の怒鳴り声にナーミは目を丸くする。
ついでに、ノアもキャーマも目を丸くする。
「なんだ? 何か問題があるのか?」
「まず一つ。俺はしがない虎だが、誰の所有物出もない。二つ、お前の言うオーナーがどうとか言う話は知らん」
「はぁ!? 何だよ、それ!!」
「だいたい、盗賊をしているような奴について行く訳がないだろう」
「じゃあ、今盗賊やめた! だからあたいのオーナーになれ!」
「人の話を聞かん娘だな……」
寅は思わず頭を抱えてしまう。
と、ノアが馬車を降り、ナーミの前に進み出た。
「寅さんは私の。他の誰にも譲らない」
「ふんっ、お前みたいな貧弱な人間が、王者になれるもんか! 大人しくあたいに譲れば、痛い目見なくて済むぞ?」
「王者? なんのこと?」
「そんなことも知らねーのかよ! 喋るヌイグルミと契約した戦士はな、あらゆる種族の頂点に立つ資格を持つんだ。あたいは世界最強になる為に、武者修行をしてるんだぜ!」
「武者修行している人は盗賊にならない」
「うぐっ! ……うるせぇな! ちょっとくらい安定した収入がほしくなったんだよ!」
「冒険者をして魔物を討伐していれば十分暮らしていけるはず。亜人に差別もないし、むしろ実力者ならかなり良い待遇になる。盗賊になんてならない。実は楽してもうけようと考えただけなんじゃないの?」
「……う、うぐ……だーっ!! うるさいうるさい!! そんなのあたいの勝手だろ!!」
口げんかでは正論を放つノアに軍配が上がったらしい。
「もういい! お前をぶっ飛ばしてそのヌイグルミをあたいのものにする!」
「寅さんは渡さない!!」
「無駄だね! あたいには必殺の技があるんだからな!」
そう言うと、ナーミは持っていた斧を放り投げ、右腕を高々と掲げる。
「ラリアット!!」
「ラリアットだと!?」
寅が身を乗り出す。
この世界ではノアにしか使えない、ノアオリジナルの魔法ではなかったのか。
「へっへーん、聞いて驚け! あたいのラリアットは一撃必殺! 当たったら最後、どんな魔物だって消し飛ぶんだ! 泣いて謝ったってもう許してやらねぇぞ!」
ナーミが右腕を振りかぶり、ノアへと走り込む。
「うおりゃああああっ!!」
必殺の右腕がノアの胸元にむかって、
「トラースキック」
「ほげっ!?」
届かなかった。
ナーミが右腕を振るう前に、ノアの右足がナーミの顔面に蹴り込まれた。ナーミは気を取り直して、再び右腕を振りかぶり、
「こ、このっ……」
「トラースキック」
「ふごっ!?」
「トラース」
「ひぶっ!?」
「キック」
「はがっ!?」
「以下略」
「へぶっ! ……って、ふざけんなぁ!!」
ナーミはちょっと涙目になっている。
「必殺だって言っただろ! かっこよく決めようとしてんのに、何でキックで邪魔するんだよ!!」
子供か。……いや、子供か。
「だって受けたくないもん」
「受けてくんなきゃ、あたいが勝てないだろ!」
「じゃあ、負けを認めて大人しく衛兵に逮捕されればいいと思う」
「それは困る!」
「だったらそもそも盗賊するなっていう話」
「うぅ~~!!」
ナーミが悔しさのあまり地団駄を踏んでいる。
口でも戦術でも完全にノアの方が上回っている。というか、ナーミがあまりにも残念すぎるだけだが。
残念に輪を掛けた子のようですよ?
指導者がいなかったら碌な子供には育たないという典型。
コマケェコタァイインダヨォ!




