1-15 フラグがフラグ通りとは限らない
いっこうに帰らない娘さんは護衛任務に就いているようです。
エーブへの馬車の中には、ロックバードの素材が山のように積まれていた。
羽はもちろん、爪やくちばし、果ては骨まで、すべて良質の素材になる。
魔石もきれいに残っていたらしく、御者をしているキャーマは上機嫌にはげた頭を撫でる。
「この素材が全部売れれば、2000トココはくだらないよ。村全体で冬が越せるくらいの収益になる」
「なるほど、そいつは行幸。村長が売り急ぐわけだな」
「そうでしょう。どんなに良い素材でも、時間が経てば質は落ちますからね。お二人が護衛を引き受けて下さったので、助かりました」
キャーマは少女とぬいぐるみに頭を下げる。
素材は売りたい。しかし、魔物から村を守るため、村の男手を減らすことは極力避けたい。
必然的に行商へ向かう人数は限られる。
そこに魔物を一撃の下に屠る少女が護衛を引き受けてくれた。これを逃す手はない、というわけだ。
「確かに魔物に関しちゃ、ノアはかなりの戦力だな」
「行商中は肉食の魔物より、盗賊の方が怖いけどね」
「盗賊?」
ノアが首を傾げると、キャーマは笑いながら、
「ゴブリン、コボルト、オークといったある程度知性のある亜人種。もちろん、人間もだけど。彼らは人間を襲うことを生業にしている。ただ襲うのではなくて、いろいろ知恵を回して襲ってくるからね」
「なるほど」
と、ノアはポンと手を叩く。
「魔物と人間が同列に語られるというのも、妙な話だ」
「人だろうと魔物だろうと、僕たちを襲ってくるという点では何も変わらないよ」
「道理だな」
「ところで、何故ビーダブではなく、エーブで素材を売るんだ? 距離で言えばビーダブの方が近いだろ」
「ああ、確かにね。エーブまでは丸一日かかるものね。でも、僕らの村に来るキャラバンの商会がエーブにあるんだ。ご贔屓は優先的に取り引きしないとね」
たわいない話をしながら、馬車は一路エーブを目指す。
そして、半日程経った時。
街道がちょうど渓谷に差し掛かったところだった。
「キィギャアアア」
突然、獣の声が響きわる。
「この声は!?」
「コボルトです!! 川と崖に挟まれていては逃げ場がない! 盗賊を生業にしているタイプです!」
「大丈夫!!」 と、ノアが馬車の飛び出す。
「ジャーマンは禁止だ!!」
「わかった!!」
寅の声に短く返事を返し、ノアはすぐに走り始める。
前方に現れたのはおよそ15体、後ろには25体ほどだろうか。
全員が武装をして、完全に盗賊を生業にしているようだった。
「ラリアット」
ノアは速攻を仕掛ける。
万全に構えていたコボルトの一体に向けて走り込む。
「ギッ!!」
コボルトが持っていた剣を振るう。
ノアの脳天を狙った剣閃は空を切り、次の瞬間、ノアの右腕がコボルトの顎を打ち抜いた。
肉体が崩壊し、障気へと帰る。
後には青白い魔石が一つ。
「まず一体」
相手が人型の魔物なら、すべてノアの餌食だ。
しかし、挟み撃ちの魔物すべてを同時に相手に出来るわけではない。
被害をなくすためには、時間との勝負であることを、ノアはすでに学んでいる。
休む暇も立て直す時間も与えず一気に勝負をつけるのが最善。
「ラリアット」
ノアに向けて槍を突き立てようとしたコボルトに向かい、ノアの右腕が再び猛威を振るった。
既にラリアットが対魔物専用の即死魔法。
この世界のルールは、コマケェコタァイインダヨォ!




