5-22 魔神族という存在
無詠唱に誇りがある一族のようですよ
「ギブアップ!?」
「ノーッ!!」
「へっ、いい根性してるな」
「んぐぐぐぐっ……」
ノアは顔を真っ赤にして耐えている。
腕立てで跳ね返したいが、魔法として発動した関節技ではロープを目指すしかない。
「こ、ん、の……」
筋肉質ではあるが、今のノアのレベルなら逃げられないはずはない。
だが、どういう訳か、匍匐前進で進めるのは、わずかな距離だった。
「ギブアップか!?」
「ノーッ! こんな、程度で……」
「いいねぇ、そうこなくちゃな」
ライミは完全に余裕を取り戻している。
「あたしら、魔神族はな、神の末裔って言われている。なんでか分かるか?」
「んぐぐ……そんなこと、しってる、訳ない……」
「先天的にな、無詠唱のスキルを持っているんだよ。つまり、殴るとか蹴るとかいう行動そのものが魔法になる」
「ただの、ちーと、一族じゃん……」
「けど、あたしだけ、違ったんだよ。何をしても魔法が発動しない。殴っても蹴っても物理的になるだけ」
「……」
ノアの動きが止まる。
「ギブアップか!?」
「……ノー……」
「ある時、こいつを見つけた。あたしのステータスプレートにあった魔法、逆水平チョップってのは、唱えなきゃ、魔法として発動しないとか言い出しやがった」
「ぐ、ぅ……」
「魔神族の誇りにかけて、あたしは拒否した。レスラーってのが世界最強へ至る道の職業なのは、一族の伝承にあったから知っていた。それでも、絶対に無詠唱で戦い続けた。それは、あたしの意地だった!!」
「んぐっ!?」
ライミは喋りながらSTFに変化させた。
「見ての通り、無詠唱は不可能でも、あたしら魔神族には龍族にも勝るフィジカルがあった。これだけで、十分戦えたのさ。これまでは」
「んぐぐ……これ、まで?」
「あんただよ、ノア。脆弱な人間が不死王を倒した。そして、あたしの意識を一発で飛ばした。プロレスの、魔法でね」
「だったら、お礼を言うのが筋……関節技で締め上げるとか、礼儀知らず……」
「そいつは尤もだ。でもね、悪いけどあたしは、負けず嫌いなんだよ!!」
「んぐぅ~~~っ!!!」
魔神族の力で思い切り締め上げられ、ノアは大きな悲鳴を上げる。強ばった手が、タップをしそうになるが、必死に耐えている。
「さて、止めだね」
ライミはあっさりとSTFを解く。
しかし、ダメージが大きかったのか、ノアはぐったりと倒れ伏したまま動けない。
ライミはノアの髪の毛を掴んで強引に立ち上げると、そのままドラゴンスリーパーの態勢になる。
「GTR」
首を捕らえた腕とは反対側の腕を振りかぶり、ドラゴンスリーパーを解くと同時に一気に腕を振り落とし、さらにノアの後頭部に立て膝をして、その上に叩きつける。
「かっ、はっ……」
この一撃でノアの意識が飛ぶ。
「フォール」
「オケワンツ……」
「やめろ!」
「げふぅ!」
高速カウントを入れようとしたディノをひと蹴り。
「何すんのよ! せっかく勝たせてあげようとしてるのに」
「これで貸し借り無しだ」
「はぁ!? ナニソレ、ヒールのくせにベビーフェイス気取りするつもり!?」
「あたしがヒールだろうと、こいつと闘うのはあたし自身だ。あたしの好きなようにさせてもらう」
「それなら、こちらも作戦タイムとさせてもらっていいかな?」
これまで戦況を黙ってみていた寅がようやく言葉を出した。
「ああ、かまわないぜ。どうせ意識が戻ったって、いったん回復するまで待つつもりだったしな」
「感謝する」
「うぅ……」
一連のやりとりの間に意識を戻していたのか、ノアは転がって寅の元に戻った。
「寅さん、どーしよ。なんか、あの人、滅茶苦茶強い……」
「慌てるな。お前の魔法が通じなかったわけじゃないだろう?」
「ん、まぁ、確かに……?」
ノアは不安そうに首を傾げる。
あくまで相手が油断していたから通じただけで、実感として通用した気はしていなかった。
「油断があったのはお前も同じはずだ」
「む……」
「焦るな。お前には魔法だけじゃない。スキルもある。種族の差だけで一方的に負けるようなことはない」
「……うん、頑張る」
寅の言葉に頭の中の整理がついたのか、ノアはすっきりした表情で立ち上がった。
カウントは取られなかったけどノア、星を落とす。
これで1-1。
しかしお互い思うところはあるようですよ。
そして扱いがとっても雑なディノ。
コマケェコタァイインダヨォ!




