5-20 レスラーは肉体言語の魔法使い(物理の)
ノアは魔法を思い出したようですよ
「言ってんでしょ!? この世界で、プロレス技は、魔法なの! 唱えないと効果が出ないの! 無詠唱スキル、なにそれ、美味しいの!?」
「うるせぇ! あたしは魔神族だ! 魔法なんて唱えていられるか!」
「……どういうこと?」
「……ハッ、人間のガキは無知だな」
「エルボー」
「ごはっ!?」
「教えないなら追撃する」
「言ってることとやってること、滅茶苦茶だな、オイ!」
思わずライミもツッコミしてしまうほどの傍若無人娘。
「あたしら、魔神族はな、神に連なる種族なんだ。魔法ってのは、脆弱な人間共が、神の恩恵を受けるためにやっている、ガキのオママゴトなんだ」
「それで、いま唱えないと、負けると思うよ?」
「あたしが、ガキに負けるか」
「ううん、負ける。だって私の方が、魔法、いっぱい使えるもん」
「なに?」
「アッパー掌底」
「ぐぁっ!?」
ノアの手のひらがミライの顎を打ち抜く。
「な、なんだ、なにを、した……」
先ほどのエルボーよりもダメージは深刻で、ライミは必死に踏ん張っているが、今にも倒れそうになっている。
「アッパー掌底。相手の顎を手のひらでぶっ飛ばす魔法。強制グロッキーの効果がある」
「こ、これの、どこが魔法だ……」
ふらふらしているライミに対し、ノアはその場で軽やかなステップを踏むと、
「ローリングエルボー」
回転しながら肘を放つ。
「ぐはっ!!」
強烈に顔面を打ち抜かれ、ライミの身体が大きく仰け反る。倒れまいと歯を食いしばるも、耐えきれずダウンしてしまった。
「ば、ばかな……魔神族のあたしが、人間如きに……」
「信じられなければいくらでもやってあげる」
「な、舐めるなよ……」
「パズソーキック」
起きあがろうとするライミに向かい、ゆっくりと構えをとるノア。
「このっ……」
「シッ!」
スパンッという鞭のような音を立て、ノアの右足がライミの顔面を打ち抜いた。
ゆっくりと崩れ落ちるライミは、そのまま大の字になってしまう。
「フォール」
両手でしっかりとライミを押さえつけるノア。
「ぐっ……」
一方的な展開になってきた事に、ディノは苦虫を潰したような表情になる。
「フォールだって言ってるでしょ!」
「う、うっさいわね、カウントすればいいんでしょ、カウントすれば! え~~~、ワーーーーーン!」
「おそーいっ!!」
「遅い!? これがアタシのカウントスピードなのよ! 文句があるなら、アンタの負けにするわよ!?」
「はぁ!?」
「おい、ディノ。余計なことしてんじゃねぇ」
意識を覚醒させた両目をはっきりを見開いた。
「だ、だって、アタシがこうしなきゃ……」
「ああ、そうだな。負けていた」
急に静かに話し始めたライミに、ノアは少し気圧されてしまう。
「……おとなしくフォールされる気は?」
「悪いけど、無いね」
「……」
ノアは素直にライミの上から退く。
ライミは少し頭を振りながら立ち上がった。
おや、ライミの様子が…?
コマケェコタァイインダヨォ!




