087⚫️銃声
イヨはすっかりエイミーに懐いてしまった。
イヨの両親から長い手紙が届いた。
’申し訳ありません。一本気な娘ですので、迎えに行っても言うことは聞かないでしょう。できれば、都会の生活を少し経験し、納得して自ら帰ってくれればよいのですが’、とあった。
こうなると、一度誘拐されていることもあり、
局長は保護プログラムを発動させた。
もちろん、イヨの特殊能力について
穏便に情報収集することという指示もついてくる。
何でもよくご存知ですな、局長は。
俺達は職務と平行しながら、というか、
ほとんどイヨが職場にいて遊びながら手伝うのを受け入れる、
という体制となった。
同年代の学習は、今や通学、通信教育が混在している時代なので問題はない。
イヨの適応能力は高く、テクノロジーの理解も速い。
マンガの青春ラブストリーでの舞台環境と、同じだそうだ。
極秘情報もあるのだが、
局長はそれに触れることもある程度止むを得ない、と太っ腹だ。
あのタヌキおやじ、きっと何か企んでるな。
仕事が終わり、セキュリティ・コアを出る。
俺は愛車で、ジンはココアをバイクの後席に乗せて、
エイミーとイヨは徒歩だ。
歩いて帰るほうが、いろんなものを見ることができて、いいんだとよ。
じゃあな、と手を振り三方向に別れる。
まっ、今日は帰って「月刊レシピの天国」を読みながら、
少しは旨いもん、作って食べよう。
こう見えても、俺は器用なんだ。
いざという時、料理のひとつもできなきゃ、生き延びられん。
雪の森、砂漠、荒野のど真ん中・・・
そんな場所で生き延びてきた経験が、俺をちょっとした料理人に育てた。
望んだわけじゃなかったけどな。
ジンには敵わんが、結構いい腕前だと思う。自画自賛だがな。
うっ、なんだ?!
俺の耳は誤魔化せんぞ!
銃声じゃないか!
車を停め、本能に従って全速力で走る!
・・・だれか倒れている!
あっ、エイミー!




