068●日野 郁代(ひの いよ)
「イヨを連れ戻してくれたんだな。すまんな。儂には、どうすることもできんかった。」
「あんた、俺より月齢の制約が大きそうだな。新月期はヒト並なのか?」
「いや、身体的な力はヒト以下しか出せん。儂の満月期は、新月期と相殺される。」
「つまり・・・振幅がプラスとマイナスの間を行き来するのか。」
「そのとおりだ。お前は新月期でも、ヒト以上なのか・・・。」
「いや、酔っぱらうし、気も失う。怪我をしたら、治りは遅い。」
「オオガミさん、気を失うってところは、酔いつぶれる、じゃないんですか?」
「う、ココア、それを言うなよ。いや、でもナオトさん、確かに満月期ほどじゃないが、俺にはヒト以上の再生能力はある。新月でも、常人以上に動ける。」
「なるほど。月の巫女の一族は、パワーと自己再生に優れているのだな。儂らとは違うのか。」
「でも、イヌガミさん、振幅の差だけですか?」
「あんた、わかるのか。儂らには’癒し’の能力がある。いわゆるヒーリングだ。」
「日の巫女と月の巫女・・・。日と月の役割が違うってことか。」
「補完関係かもしれませんね。月が日を守り、日が月を癒やす、ってことじゃないですか?」
ココアの推測は正しいのか?
日の巫女と月の巫女の能力を、言わば半分ずつ受け継ぐのが、
イヌガミの家系ってことなのか・・・。
しかし、相互補完関係が、なぜ崩れた?
共に歩んでこそ、意味があったんじゃないのか?
「儂にも癒やしの力はある。それは月齢には影響されん。といっても、日の巫女には、遠く及ばないがな。アキラ、お前に比べれば、儂は中途半端なんだ。」
「両方できる、ってのもいいんじゃないか・・・待てよ、そうすると日の巫女っていうのは・・・。」
「そのとおりだ。静かに守っていた存在を、奪われてしまったんだ。日野 郁代・・・日の巫女の血を継ぐ者だ。」




