038●フィクション?ノンフィクション?
銀河連邦テラ中央政府は、ついに恐竜人の存在を公に認めた。
かつて、まだ恒星間航行が確立されていなかったころ、
地球上に国家が乱立していた時代、
未確認飛行物体に関する資料が隠蔽されていた・・・。
そんな疑念が市民の間で広まり、政府への不信感が高まったことがある、
という文献から中央政府は決断したのだ。
世間は騒然となる。初めての人類以外の知的生命体との遭遇である。
恐竜型宇宙艦艇3隻についても、情報が示された。
現物に近づくことはできないが、
それでも判明している事実は憶測を省き、広く開示されたのだ。
各個人が端末よりデータアクセスができ、立体映像で3隻の内部もツアーできる。
テラは一大恐竜人ブームとなった。
週刊誌や専門家、ワイドショーからSF作家まで、
いや、市民の誰もが自分の考えを自信満々に吹聴する。
根拠のないものまで、流布される。
‘その他’ことルドルフ・カーヴェルは、
その著作を公開できることになり、ちょっとした‘時の人’になった。
「ルドルフ、どうしたのよ。せっかくあなたの一大叙事史が、オープンになって、結構反響があるんでしょ?どうして暗い顔なのよ?」
「マリカさぁん・・・。思ってたのと違うんですよ。ぼくが描いたのは、空想の世界なんです。なのに、みんな現実の記録みたいに読んでる。ぼくの想像力が、事実と捉えられているみたいで。なんだか、怖いです・・・。」
「あっれぇ〜!おかしいな?推敲したときも、フィクションとしか読めなかったけどなあ?」
「でしょう!ぼく、とっても不本意ですう。」
「しょうがないじゃない?今、空前の恐竜人ブームだもん。」
「こういうのって、現実は小説より奇なり、っていうのかなあ・・・。」
「でも、ルドルフ。その’奇なり’の元を描けるのが、作家の力なんじゃない?次の休憩時間、乾杯しよ!ね!」




