12話
「キャー!玲!どうだった?」
「こ、声もかっこよかった」
「本当にー!?ねぇねぇ、告白しないのー?」
「流石にまだ早いよ…」
「えー?早い方が良いってー!」
私、柳木 玲は現在恋をしています。意中の相手は友達に聞いた所、糸川 情くんと言うお名前みたいです。
放課後は何か予定があるのかいつもすぐに帰っちゃうけど、授業が同じ時は、ついじっと姿を見ちゃいます。その度に胸がドキドキするんです。
親と喧嘩して絶交中のブルーな気持ちになっていた私に、王子様が現れたんです。
あぁ。どうか彼に彼女が居ませんように。
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「あぁー腹減ったなー。情は今日何食べんの?」
「一番安いやつ」
「だよなー」
お互いにこの会話に全く意味が無い事は分かっているが、特に指摘する理由も無いのでいつも通り食券を買って料理を受け取り席に着く。
「アイガちゃんって、目カラコンなのかなー?綺麗な色してるよなー。髪も染めてんのかなー?あの色は銀?似合うよなー。マジで可愛かった」
伊織の大きな独り言をカレーライスを食べながら聞かされていると、ふいに声を掛けられた。
「あーっ!情じゃーん!久しぶりー!同じ大学だったんだねー」
顔を上げて見ると、声の主は料理が乗ったお盆を手にした情の高校時代の元カノである海老根 依茉だった。
髪の毛は外ハネのボブスタイルは変わっていないものの、あの頃とは違い色は金髪に染めていて、アクセサリーとしてなのか、頭にサングラスをかけていた。
「あぁ、久しぶり。髪色変えたんだな」
「そう!どおー?似合うー?」
「さぁな」
情は素っ気なく答え、カレーを口に運ぶ。
「もー、その反応、変わらないねー情は」
「悪いな変わらなくて」
思った反応を貰えず依茉がムスッとすると
「まっ、そのテキトーさがあんたらしくて良いかー。って、早く食べなきゃ授業始まっちゃう!それじゃあね、情!」
そい言い残して依茉はどこかの空いている席を探しに行った。何が「じゃあね」だ。情的には特に興味は無いし、もう一度会いたいなどは微塵も思っていないので、「さようなら」くらいでちょうどいいのにと思った。
「情ー、今の子が元カノー?」
伊織が体を傾けて聞いてくる。
「あぁ、もう顔は見ないと思っていたんだがな。まさか同じ大学だったとは」
「ふーん、確かになんか社交的で明るい子だね。一緒に居たらイレギュラーな事たくさんありそうなのに」
「悪い意味で明るすぎるんだよ」
「なぁ、それよりアイガちゃんの好きなタイプとか知ってるかー?」
「知るかよ」
依茉が去ってからというもの、伊織から出る話題はまたアイガの話に戻り、フォークを指揮者のように振って「知るか」としか答えられない質問しかされなかった。伊織、自分で聞いてくれ。俺はアイガじゃねぇ。
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「ねぇ、あの子情くんに話しかけてるよー?」
友達にそう言われて指さされた方を見ると、確かに彼は金髪の女の子と何かを話していました。
「彼女……なのかな」
「うーん、彼女だったら同じ席に座るんじゃなーい?情くんの顔も楽しそうでは無いしー」
他の女の子と話しているだけで、恋をしていると心はこんなにもモヤモヤするんだ……。玲はそう思った。玲にとっては初恋と言っていい程、情の事をいつも考えてしまっている。
ただ少し話しているだけなのに、胸がキュッと苦しくなる。
ずっとこのモヤモヤした気持ちを抱えたまま過ごすくらいなら、いっそ……
「ねぇ、私情くんに告白……しようかな」
「えっ!?どうしたの急に!めっちゃ良いじゃーん!応援するよー!」
「あ、ありがとう。でも、どうすれば良いかな……?」
「んー、じゃあじゃあ、こういうのはどう?」
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食堂は様々な話し声や面白い話を聞いて笑いながら手を叩く音などが賑やかに響いている。
ほとんどの人が二人、または数人のグループで、午前中からの授業を一息つけるこの昼食の時間を楽しく過ごしていた。
しかし、依茉はポツンと一人で席に座り昼食を済ませていた。
何故なら、依茉には友達が居ないから。いや、正確に言えば作らないようにしているから。
依茉は昼食のコロッケセットを口に運びながら心の中で独り言を言う。
『別に私はひとりぼっちが好きな訳じゃないの。本当は幼なじみの女の子が居て、その子と喧嘩別れしちゃったから。それを思い出したくないから。新しい友達を作るくらいなら、その子とまた仲良くなりたいから一人でいるの。今、あの子は何をしているのかな。就職して働いているのかな。それとも専門学校とか大学に行って勉強しているのかな。また、分かり合える日が来るかな………………』
楽しそうな声が今日も耳にはいる。だから、今日の学食の味も薄く感じてしまう。本当は私も美味しく食べたいのに。




