表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
――D――  作者: 山目 広介
5/8

 何度目かの調査で機械はコンピュータのようなものらしいことが判明した。

 そして壁の奥の部屋はそのまま倉庫のようだった。中には食べ物が保存されていたのだ。

 特殊装備で温度が分からなかったが、低温で保存された部屋だった。どこにそんなエネルギーがあったのかと疑問に思ったが、なにやら地下の温泉を熱源としてエネルギーを取り出しているようだ。放熱がどこでしているのかは分からなかった。

 簡易検査では空気中には問題となるような菌やウィルスは見つからなかった。

 コンピュータを弄って分かったことには、棺の中の人はコールドスリープしているようだ。

 よく見ると綺麗な女の子で、倉庫にあるのはこの子の食料のようだった。

 装置を起動したことで、この女の子はもうすぐ目覚めようとしている。

 遺跡となるぐらいには古いのに、棺の中の女の子はちゃんと生きてるように見えた。

 何故、こんなところにいるのだろうか。

 病気などで医療が発達する未来へ送ったのだろうか。

 もしそうなら助けてあげたいと思う。

 どんな病気なのかも分からないが。



 コンピュータの言語は端末で調べることで把握できた。

 しかし、起きた女の子の言語は違うもので当然それを理解できなかった。

 食事もこちらの物を勝手に与えて病気になられても困る。まずは倉庫にあるもので彼女の食事を作る。

 自分の分は自前のものだ。倉庫の物のサンプルを取り、それも本部へと送る。

 さすがに言葉が分からないと血液サンプルを貰うことも憚られた。チクッと痛いことして攻撃されたとでも思われると調査が進まない。ちなみに彼女の服は俺の服を貸している。

 何日か過ごして分かったが、彼女はこのコンピュータの使い方を知らなかった。

 コンピュータの言語から言葉を理解していこうとしたのだが、無理だと判断し、一から言葉を教えたり、また教わったりしながら、少しづつ歩み寄っていくことにした。

 そこまでの余裕があるのはしばらく時間が掛かるという検査だ。他の検査が俺が送る前に大量に入り、更に俺が送った後のも優先して行われるために、後回しになることが決定した。

 もともと後回しにされていた遺跡の検査だ。当然と言えば当然なのだろう。だが規則では順番だというのに、それが無視される現状を理不尽だと感じてもおかしくはないだろう。

 だからこちらものんびりとすることにしたのだ。





 筆談などをしながら棺の中にいた女の子と何週間も過ごす。

 その子の名前はアイシスというらしい。

 年齢も少女と言えるような若さだった。寝ている間にどのくらい時が経ったのかは知らないけれども。

 かなり学習能力が高いらしく、こちらが相手の言語を覚えるよりもアイシアがこちらの言語を理解する方が早いようだ。

 簡易検査では食料もアイシアも問題はないようだった。

 アイシアは倉庫前のコンピュータのある場所に寝床などを作り生活している。

 さすがに検査前で外に出すわけにはいかなかった。それはアイシアの体に病原菌がある可能性もあるし、反対にアイシアが外の病気に対して抵抗力がない可能性もあったからだ。

 俺も生活物資を持ち込んでなるべく一緒にいた。性格にはコンピュータの調査をしているためにこの場所に一緒にいたということだ。

 アイシアが起きてからは特殊装備は着けていない。

 さすがに不気味に思われるとコミュニケーションが取りづらい。

 この施設は地下にまだあるようだが、ここから直接行けるような構造ではないようだった。

 アイシアだけを置いて、またシールドマシンを動作させて地下の調査をすることも考えたのだが、彼女一人だけ閉じ込めておくというのも気が引けたのだ。

 他に人がいないため、人寂しいということなのかも知れない。言葉が不自由だからこそ巧く通じ合えないことは双方理解しているのだろう。不要な衝突などは起きなかった。

 恋人とは些細なことで喧嘩したりするのは、言葉が通じるという驕りがあったのかもしれない。

 分からないからこそ、分かる様に努力する必要があるのだろう。些細なことでも察してあげて、無駄に怒らないようにこちらの価値観を押し付けない様にし、相手の価値観も容認する必要があるのではないだろうか。

 少女との生活でそのように思うようになった。最初は食事はお腹の音で分かっても、トイレが分からず、焦ったりした。自分もするのだからアイシアももちろん排泄するのだ。簡易トイレの使い方を教えるのも苦労したし、布団もないところで寝かせたりもした。それも翌日になって気付く有り様だった。

 それらが愛犬を最初に飼い始めたときの苦労と重なったのだ。

 誰もいない場所で黙々と作業して疲れても癒しもなかったのが、アイシアという少女が現れて癒されていることに気付いた。

 窮屈で外に出れない生活の中でも話したりすることでアイシアも気を紛らわせることが出来ていたのだと思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ