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20話

遅れてすみません

 「みんな、おはよう!」


 次の日の朝、妃奈と仲直りをし上機嫌な俺は教室のドアを開ける。


 「おはよう、優斗。優斗、お前なんかいいことでもあったか?これは……あったようだな。」


 匠が挨拶を交わしたあとニヤニヤした目を向けてきた。


 「い、いや別にそんな事はないよ。あはは……。」


 俺はもしかして見られていたのかと思いながらも誤魔化そうとした。まぁ、匠には無駄だろうが。


 「優斗って、マジで嘘が下手だよな。まぁ、そこがいいところでもあるけど。」


 匠が呆れた顔をしながら言う。


 「あはははぁ…………。」


 俺は昨日のことを隠しておくことにした。別に言う必要もないからだと思ったからだ。


 ガラー


 ドアが開く音が聞こえた。俺たちは反射的にそっちは向く。


 「おはよう!美坂さん!」


 俺は美坂さんに挨拶すると美坂さんは少し元気がないのか声のトーンを少し下げて言った。


 「おはよう……。優斗くん……。」


 「どうしたの?大丈夫?美坂さん?」


 俺は何故美坂さんの元気が無いのかわからなくて声をかける。


 「うん、大丈夫だよ……。ちょっとね。それで、優斗くん放課後いいかな?」


 美坂さんは俺にだけ聞こえる声で言った。


 「うん、大丈夫だけど……。」


 「わかった。じゃあ、よろしく。」


 そう言って美坂さんは自分の席へと向かった。


 「優斗、お前愛ちゃんに何かしたのか?あんなにテンションが低い愛ちゃんなんて見たことないぞ?」


 匠が俺に聞いてくる。


 「何かしたかなぁ……。」


 俺は思い当たる節がないか考える。すると匠が急に言い出した。


 「よし、優斗。多分お前は何かしたんだろう。してないならあんな風にならないからな。ましてや、昨日の今日だ。とりあえず謝っとけよ。」


 「……まじ?俺なにもしてないと思うけど……。でも匠が言うんだ。謝ってくるよ。」


 俺は美坂さんの席へと向かい、言った。


 「美坂さん。多分俺君に何かしたと思うんだ。今は思い出せてないけど必ず思い出してお詫びする。だからごめん!正直、何をしたのかもわかってないのに、謝られても許そうとは思わないと思う。だけど今謝っておきたいんだ。だから、ごめん。」


 すると美坂さんは少し悲しそうな顔で微笑み言った。


 「別に優斗くんが悪いわけじゃないよ。勝手に私が見て勝手に私が落ち込んでるだけだから。だからその、優斗くんが気にやむことはないよ。」


 「それでも────。」


 俺はそれでも俺が原因なのだろう。美坂さんの顔を見てわかった。


 「だ、か、ら!優斗くん。放課後にね。」


 俺の言葉は美坂さんに遮られてしまった。


 こうして俺の美坂さんの間に溝ができてしまった。



 それから何かしらのイベントもなく、気づけば放課後になった。妃奈には先に帰ってもらうことにした。本当は一緒に帰らないといけないのだが、俺の用事で妃奈を待たせるわけにはいかない。それに今日は花澤さんと一緒だ。だから大丈夫だろう。それよりも、俺は美坂さんとの溝を取り除かなければならない。


 「ごめんね、優斗くん。残ってもらっちゃって。」


 「いや、俺こそごめん。多分だけど今、美坂さんが少し落ち込んでるのと何か関係あるんだよね?」


 「そうだね。でも、優斗くんは悪くないよ。悪いのは私なの……。だからごめんね、優斗くん……。」


 美坂さんは涙を浮かべながら言う。


 「俺こそごめん。あのときからなんで美坂さんを悲しませてるのか考えたんだ。でも思い当たる節がなかった。人を悲しませておいて忘れるなんてとても最低だ。だから、本当にごめん。」


 俺はあれから美坂さんが落ち込んでる原因を考え続けていた。しかし一向に答えは出なかった。


 俺が謝ると美坂さんはさらに涙を流しながら言った。


 「ちがうの!違うんだよ……。優斗くんは何も悪くない!悪くないの……。……わたしね昨日の放課後学校に教科書を取りに戻ったんだ。するとそこに優斗くんと妃奈ちゃんがいたの。」


 まさか見られてたのか……?


 焦りと虚無感が俺を襲う。


 「それでね、私見てしまったの。優斗くんと妃奈ちゃんがキスするところ。ごめんなさい。私、最低だよね。優斗くんには彼女がいるのにキスしてあわよくば付き合いたいだなんて……。」


 「…………。」


 俺はなんと声をかければいいのかわからなかった。

 俺は思考を巡らせる。


 「……俺こそごめん。多分あの時俺がキスされるのを許してなければこんなことにはならなかった。だからこれは俺の責任でもある。」


 「違う。わたしが勝手に好きになっただけ!あの時のキスは関係ない!」


 美坂さんの気持ちはさらに高ぶる。

 俺は少しでも落ち着かせようと美坂さんを抱く。


 「今こうやって君を慰めるために抱きしめるのも正直言ってずるいと思う。でも俺にはこうしてあげることしかできない。本当にごめん。」


 「卑怯だよ……。優斗くん。だってそんな事されたら忘れられないじゃん……。好きだって気持ち抑えきれないよ……。」


 俺は美坂さんを宥めるように言う。


 「ごめん……。だけど一つだけ聞いてほしいんだ。俺はこれからも昨日みたいに美坂さんと友達でいたい。俺のわがままかもしれない。でもこのまま美坂さんと仲良くできないなんて嫌だ!だからさ……これからは親友として仲良くして欲しい。」


 すると美坂さんは泣き止み、俺の胸に顔を伏せて言った。


 「ずるいよ。本当に……。自分のことを好きな相手に一緒にいろだなんて……。」


 「あぁ、たしかにずるいな。でも仲良くして欲しい。」


 「‥‥ダメだよ。私、優斗くんのこと好きな人としてしか見れないよ。」


 「それでも、仲良くしたい。親友として。」


 俺は本音を伝える。


 「……わかった。私も優斗くんと仲良くしたい。だから────。」


 夕日が教室に差し込む。

 美坂さんは顔を上げ、涙を目の端に溜めて、それでいて満遍の笑みで言った。

 

 「これからは親友としてよろしくね!」


 そう言って美坂さんは教室のドアノブに手をかける。


 「美坂さん!」


 俺は慌てて美坂さんを止める。すると美坂さんはこっちを振り向いて言った。


 「優斗くん。私たち親友でしょ?それならこれからは愛って呼んでね!それじゃあまた明日学校で!」


 そう言って美坂さん改め、愛はドアを開き勢いよく教室から出ていった。


 こうして俺と愛は溝を取り除き親友となった。


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