第115話 訓練方針会議その1
王都西の魔王の巨大建造物、
通称風雲ヒトシ城。
じゃなかった。
通称、魔王城。
その屋上東側。
スラムと王都を見渡せる大窓を設えた会議室。
スラムでは俺が討伐したトレントの建材を使って、大工さんたちが次々と家を建てている。
その光景を眺めながら話し合いは始まる。
「まずは俺から説明します。」
先ずは訓練場の概要から説明する必要があるだろう。
訓練場は地下7階層。
各階層3つの部屋に分けられていて、
訓練内容にもよるけど、
各部屋、最大300人は剣を振るうなど訓練ができるはず。天井、床、仕切りには硬度の高い物質に魔力を通して錬成した素材かわ使われているので簡単には崩壊しない。(ルーンドラゴンのブレスにも何とか耐えたからだいじょぶだろう。)
必要に応じて拡張も可能。
あとはレベリングと、実戦ように提供できる魔物だ。
「スタンピードの際ゴブリンの後に、
レッサーデーモンも召喚していた。
オークにスライム、トレント、ドラゴン。
召喚できるのはこんなところか?」
「残念ながらスライムも、トレントもドラゴンのダンジョンも、
魔石は落とさないんですけど。」
「いや、十分だろ。魔石なんてボーナスみたいのものだ。おかげでステータスは馬鹿みたいに伸びたが、戦闘経験が積めるだけでもありがたい。ドラゴンとの遭遇なんて、普通経験すら出来ないからな。しかも施設の中で万全な状態でだ。」
どうやらロズさんは、魔石には元から頼る気はなかったらしい。
頼もしい限りです。
でも随時、経験値の魔石を落とすモンスターは追加していく予定だけどね。
「それにしても、一部屋300人とは、
ヒトシはどれ程の規模の戦闘訓練を
しようとしているんだ?」
「一応、スラム全体です。」
固まった…。
全ての人が固まった。
あは、またやっちゃった。
「20人では圧倒的に足りないな。
まあ、足りないのは想定内だが。」
「どうしましょうね。」
一応考えは持ってるけど、
ロズさんの意見を聞きたい。
「とりあえずは、御者だ。
そして冒険者も育てる。
冒険者は魔物のエキスパートだ。
俺たちなんかよりずっと。
だから冒険者もクランに引き込みたい。
しかし素性のわからないやつは危険だ、
王やヴォルフガングの息の掛かったやつが
紛れてるかもしれない。
もしかしたら御者志望の中にも…。」
あまり考えたくはないけど、そういう可能性だってあるよね。
そうなればこちらの手の内がバレるし、相手の戦力強化を手伝うことにもなる。もしかしたら、扇動や不和を引き起こすように動いて内部崩壊を招くなんてことだってできる。
でもだったらどうする?
知り合いの冒険者は何組か知ってるけど、ブルーレインとか、アンフェロッテとか。アイアンクロスのみんなともまた一緒に行動出来たらな。
でも、スラムから来る人間全員の素性を暴くなんて絶対出来ないし、それってプライバシーの侵害。
そんなこと言ってる場合じゃないのかもだけど。
「難しい問題ですね。
冒険者なら何組か紹介できますけど。
あと、ダンテさんに相談すれば、
信頼のおける人たちを紹介してくれるかも。
でもスラムの人達はちょっと…。」
「とりあえず、その話は置いておこうぜ。
決めれるところから決めていかないと、
話が進まねぇぞ。」
ガットさんが話しを元に戻す。
「少し話が逸れちまったが、
俺たちはもっと仲間が欲しい。
スラム全員鍛えるとかなんとか、
とんでもねぇことを言ってたが、
ともなりゃなおさらだ。」
「と、言うわけで有能な人材を見つけたらスカウトしたい。」
「もちろんです。
というかこっちからお願いします。
適材適所。戦闘に長けた人材を御者にしておくつもりはありません。
そもそも、スラムの皆さんは俺のモノではありませんし。そこら辺は個人の自由です。
御者が減り過ぎてしまうのは流通的にいただけないですけどそこら辺のバランスは自然に取れていくと思います。」
俺は、仕事を強制するつもりもないし、使役するつもりもない。
あくまで、自主的に、俺はそれの手助けが出来ればいい。
「ヒトシは、どこまで先を考えているんだ?
そこまでして、何をする。
まさか、ペンレシアの権力を衰退させ
新たな国の王にでもなるつもりか?」
ロズさんは真剣な顔だ。
「プフッ!!
真面目な顔で冗談はやめてください。
まあ、国王では無いですけど、
魔の王ですよね。」
「違ぇねぇ!
もう王様じゃねぇか。
なんなら、いますぐ
魔王国の国民になってやってもいいぞ!」
「あー、結構です。」
どっと笑いが起こる。
「なんでだよ!こんな有能な国民がどこにいるんだよ!」
「だって、毎日奥さんとのノロケ話し、
聞かされそうですもん。」
「違いない。それは俺も勘弁だな。」
「ロズまでひでぇな!
こうなったら毎日聞かせてやるぞ。
今日なんて朝から早く子供が欲しいなんてねだられてな……。」
「では、話を進めようか…。」
「はい…。」
「無視かよ!ひでぇな。」
もげろ…、
あちらこちらから呪いの言葉が聞こえてくるようだった。
話し合いは進み、
・訓練は個人の自由
・訓練内容はプラウドガードに一任
・必要な魔物は前日のうちに要請する
・訓練は週4日残りはプラウドガードの訓練に使う。
・戦士、剣士が多く魔道士、ローグ、スカウト職が少ないので、勧誘したい。
・座学も必要、それ用の部屋も欲しい。
など、要望も出た。
そして、
「給料の事だが…。」
「そうですね。
月一人あたり金貨1枚でどうでしょう?」
「それなんだが…。」
あれ、足りなかったかな?
「スラムの住民はヒトシのものでは無い。
そして、俺たちもヒトシに雇われている訳では無い。」
「はい、その通りです。」
「ならば、俺たちがヒトシから報酬を貰うのはおかしくないか?」
「たしかに…。」
「場所と魔物を提供してもらってるんだ。
むしろこっちがその費用を支払うべきではないか?
それにだ、御者に無償で馬車を提供するのも、やめるべきだ。」
確かに、俺からすれば労力もほとんどかかってないし、魔物も馬車も馬もタダみたいなものだから、あんまり価値とか考えてなかったけど、普通にそろえたら莫大な費用がかかるだろう。
「それは、ヒトシがやろうとしている事から、少し外れるんじゃないか?」
さすがロズさん。俺が多くを語らなくても、本質を捉える力を持っている。
「そうですね。
危うく暴走するところでした。」
「まあ、金に頓着しないのはいい所だが、
良くも悪くもお前の影響力は、
小さくないことを覚えておいた方がいい。」
前に、銀緑亭の女将さんにも似たようなことを言われたな。
「心得ました。」
ぅん…。
ロズさんは、静かに相づちを打つと話を続けた。
つまらなかったらごめんなさい。




