第114話 プラウドガード
王都西、建設ラッシュのスラム街。
更にその西にそびえる魔王が作ったとされる四角い巨体建造物。
ちまたでは、魔王城なんて呼ばれてるらしい。
ただの箱型の魔王城なんて
センスの無い魔王もいたもんだ。
ていうか、魔王城じゃないし。
失礼しちゃうわ。
王都の隣に魔王城なんて、物語始まってすぐラストダンジョンみたいなもんじゃん。そんな挑戦的な話、素人じゃなきゃ作れないわ。
てか、魔王が挑戦的だよね。
やれるもんならやってみな、みたいな?
恐ろしく好戦的な魔王のようです。
俺はそんなんじゃないですからね。
細々とやります。
細々とやらせて…。
…今さら無理?
「と、言うわけで、ロズさんたちにお集まりいただいた訳ですが…。」
「おいヒトシ、それにしても酷い顔だな。
昨日あれから何かあったのか?」
「すいません、ちょっと。
でも大丈夫です。」
「そうは見えないぞ。
自慢のポーションはどうした?
あれで1発回復だろ!」
「いや、ポーションはやめときます。
ウップ……。
すいません。
多分余計に調子悪くなります。」
「おいおい、今日はやめにしておこう。」
「大丈夫です。
回復は、早いはずですから。」
「確かにさっきよりは顔色はよくなってきてるが、せめてもう少し休もう。」
「すいません、ではお言葉に甘えて。」
俺は席を立ってスライムベットを生成する。そして、30分後にタイマーをセットし、仮眠を摂る。
「おいおい、ヒトシがあんなになってるの見たことないぞ。」
「相当疲れが溜まっているんだ。
ポーションがきかないくらいに。」
「それともどこか悪いのか?
医者に診せた方がいいんじゃないか?」
みんなそれぞれに心配の声を上げる。
たしかに激しい頭痛と倦怠感と吐き気に襲われている。
だが、コレは所謂ポーション酔いである。
言えない、
夕べはしゃぎすぎたせいだなんて。
子供みたいに、やりたいことを我慢できなかったせいだなんて。
ポーションがぶ飲みで徹夜するつもりでダンジョン攻略してたせいだなんて。
そして途中で記憶を失って、
朝目覚めると、銀緑亭の部屋のベッドの中にいた。そして睡眠学習というスキルを覚えていた。
しかも、Lvは8まで上がっていた。
一晩で。だ。
何があったのか朦朧とした頭で考えつつ、ポーションで体調の悪さを回復しようと、ドザエもんの無限収納からポーションを取りだし口に含んだのだが。
いつもより、マイルドだった。
いや、すごいドロっとしていた。
その小瓶の中には見た事もない赤茶色の液体が…、
液体と言うより、ゼリー状のものが入っていた。
こんなもの作った覚えはないぞ、と思いつつ、小瓶を眺めていた。
この、睡眠学習のスキルのせいか?
そう、思い当たるとしたらそれしかない。
どんなスキルか。
《睡眠学習Lv8》
睡眠など無意識の中で戦闘や鍛錬を繰り返し、肉体、精神、技術の強化を可能とするスキル。覚醒時よりステータス、判断力は格段に劣るが、何度も同じ動作を反復するため、スキルが身につきやすい。
また深層より埋もれた記憶を掘り起こし未知なる技術を試みる事もある。
なんですかこのスキル?
いつの間に覚えたの?
未知の技術って、
私にとってはあなたが未知です。
て感じだった。
混乱の極みだった。
そして、スキルの下には、
弱 中 強
そして、激。
これは、睡眠学習の強度だろう。
そしてその設定は「強」より上であろう「激」になっていた。
と、まあ今朝はこんなやらかしちまった感じ。
あれだ、俗に言うポーションあるあるだ。
…よね?
それにしても、
誰が設定したの「激」なんて。
あれでしょ?
あの変な薬とかも、無茶を可能にするために調合したんでしょ?無意識に。
怖っ、怖っ!
「激」は、過激の激ですね。きっと。
「ぴぴぴぴ。」
アラームの音に目を覚ます。
アラームの音は、スライムベットに付いている俺と同じ顔のクローンの声だ。
しかも、わざわざ耳元まで来て囁く。その吐息は俺の好きなグレープフルーツとミントの香り付きだ。
寝覚めがいいような悪いような、微妙な感情になる。
そして、
ブブブブブブブブ…。
ベット全体が細かく揺れるバイブレーション付きだ。
うう、今はやめて、気持ち悪くなる。
「お待たせしました。」
「さっきよりは顔色はいいが、本当に大丈夫か?」
ロズさんが心配そうに確認する。
「ヒトシ、休息も大事だぞ。
俺たちはそんなに急いじゃいねぇ、
準備金も十分に貰ってる。」
ガッドさんが諌める。
「本当に大丈夫です。」
俺は屈伸して、腕を何度か横に大きく振ってアピールする。
「この話し合いが一段落したらちゃんと休みますから。」
そう言うと2人とも納得してくれたようだ。
「さて、と。」
俺は8人がけの長方形のテーブルの端の椅子に腰かける。
「これからの御者たちの訓練について話し合いを始めましょう。」
「すまないヒトシ、その前にひとついいか?」
ロズさんは、神妙な面持ちだ。
「はい、なんでしょう。」
「この仕事を始めるにあたって
形だけでも整えておかなければと思ってな。」
キョトンとする俺を見すえ、ロズさんが続ける。
「我々は、クラン
『プラウドガード』
の結成をここに宣言する!」
力強く宣言されたクラン名。
プラウドガード。誇りを守る者達だ。
「「「「おおおぉぉ!!」」」」
その宣言に答えるプラウドガードのメンバーたち。
「クラン?冒険者になるんですか?」
「まあ、それも一つの手だな。
一応全員冒険者登録は済ませてある。
本格的にやる訳じゃないが
そっちの方が融通が効くからな。」
「だが本業は違ぇ。
俺たちの仕事はスラムを、いや
国民を守ることだ。
そして、その力を育てること。」
「そう、それこそが国を守ること、
みんなの誇りを守ることだ。」
「「「「「おおおぉぉぉぉ!!!」」」」」
プラウドガードのメンバーが輝いて見える。
みんな肩を組んだり背中を叩きあったり、グータッチをしたり、ロズさんに頭を下げたり、髭モジャさんの髭をわしゃわしゃやったり、
「ヒトシさん、
俺たちが信念を曲げることなく
こうやっていられるのは、
ヒトシさんのおかげです。」
彼は確か、ハンス。
20歳そこそこで二人の子供の父親だ。ロズ隊長に憧れて国王軍に入隊した剣士で、今伸び盛りな若手の中でもメキメキと実力を付け、頭角を現してきている。
若手のリーダー的な存在だ。
「いいえ、お礼を言わなきゃ行けないのはこっちだよ、ハンス君。」
ハンスは一瞬ハッとした顔をして、
すぐ満面の笑みに変わる。
「俺の名前、覚えてくれてるんですか?!」
「もちろん。子供は2人で、3歳と1歳。
だったよね確か。」
うろ覚えである。
「はい!この前誕生日を迎えて
4歳と2歳になりました!
上の子はもう木の棒を振り回して、
剣士の真似事をしています。」
「そうか、将来が楽しみだね。」
「はい!」
「ハンス君、ロズさんについて来てくれてありがとう。
家族がいるし、どうするか悩んだろう。」
「はい、でもすぐに答えは出ました。
この国に仕え、国王軍としている事が、
果たして子供たちに誇れることなのか。
胸を張って国を守ってると言えるのか。
妻には最初反対されましたが、
話すと、ちゃんと分かってくれました。」
「良い奥さんだね。
そんな奥さんのためにも頑張らなきゃね。」
「はい、よろしくお願いします!」
いい青年だ。こういう若い力がこれからきっとこの国を引っ張っていくんだろう。
「さて、俺たちの意志も1つに固まったところで、本題に入るとしようか。」
各々席に戻り、真剣な表情で話し合いが始まるのだった。
ダンジョン独占企業。
読んでいただきありがとうございます。
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読んでもらえてる、楽しみにしてもらえてると思うと書いてて嬉しいし、楽しいですね。
これからも楽しく書いていけたらと思います。
どうぞよろしくお願いします。




