第113話 ロズ達の誇り
大蛇の巣第二階層奥。
俺は、魔力視と振動感知を駆使して索敵をしながら探索を続けていた。
(マスター、本日の御者訓練場の拡張そろそろ終了です。)
お、もうそんな時間か。
探索に夢中になりすぎてすっかり忘れてた。
そもそもダンジョン内だと時間が分からないしね。
俺はスラム西にある、魔王が作ったと言う巨大建造物地下1階、御者の訓練場に移転した。
あ、ちなみにその魔王ってのは俺です。
魔王ヒトシ、です。よろしく。
国王軍襲撃から3日たったけど、
その後襲撃らしい襲撃はなかった。
(ありました。)
あー、そうなの?
あった。
こっちじゃなくてスラムの方にあったみたい。
訓練場拡張工事のため、昨日と今日は訓練はお休み。
だって成長早すぎるんだもの。みんなでゆっくりモンスターを倒しながら訓練しようと思ってたのに、まさかの急成長だもん。
訓練日数1日違うだけでかなり実力差が付いちゃう。
だから、もっと訓練場を細分化して、実力に合わせた訓練をしていかないと。初日と2日目なんて赤ちゃんと大人くらいの実力差だ。
というわけでお休みしてもらってたんだけど、ロズさんたち元国王軍を中心に自主訓練をしていたみたい。
ステータスは上がっても、スキルが上がるわけじゃないからね。
あとは、それぞれに得意武器を見つけたり、武器防具の選び方、手入れの仕方なんかも教わったりしてたみたい。
俺じゃあそこまで気が回らない。
やっぱりロズさんたちがいてくれてよかった。
と、言うわけで武装して、さらに戦い方も学んだ御者軍団に国王軍は成す術無く撤退させられたそうな。
めでたしめでたし。
「ヒトシ、帰ってきたな。」
元、イケメン隊長が現れた。
「あ、ロズさん、スラムを守ってくれたんですね。ありがとうございます。」
「ああ、クローンから聞いていたか?
今、その報告をしに来たんだが、
必要なかったな。」
「いえ、そんなことはありません。
助かりました。」
「俺たちはただ自分たちの家を守っただけだ。
当たり前のことをしただけだよ。
ヒトシに頼まれた仕事でもあるしな。
自分たちの家を守っただけで仕事になるんだから、いい仕事だ。」
「何言ってるんですか、元々国を守る仕事してたんですから、今更ですよ。」
「はは、たしかにな。
そんな簡単で、1番大事なことを見失っていたなんてな。」
「ロズさんたちは見失ってなんかいません。
だから今、ここにいるんです。」
「ありがとうヒトシ、俺たちに誇りある仕事を預けてくれて。
国王軍を抜けて尚、誇りを失わずにいれるのはお前のおかげだ。」
「今の国王軍にいても誇りなんて保てないですからね。
それに、今回はそれ以上の働きです。」
「?
どういう事だ?」
「俺がロズさんたちに頼みたかった仕事は
護衛なんかじゃありません。」
「違うのか?じゃあ一体俺たちの仕事は?」
「昨日今日でもうやってるじゃないですか。
御者たちに戦闘訓練をしたり、
知識を与えたり。」
「それは、少しでも役に立てばと。」
「そうです。役に立つんです。
20人そこそこじゃ、いくら腕が立っても、
そこまで大きなことは成しえません。」
「つまり、俺たちの仕事は、御者に戦い方を教えたり、戦場での経験を伝えたり学ばせたりする事か?」
「そういう事です。
そしてそれは間違いなく大きな力になります。少しじゃ無くて、大いに役立てて欲しいんです。
武器の選び方や、手入れの仕方なんて
俺には教えられません。
やっぱりその道のプロじゃなきゃ。」
「ヒトシ…。」
ロズさんは今にも泣き出しそうな顔で、
「ありがとう。本当にありがとう。
守るだけじゃない、守る力を育てる。
とてもいい仕事だ。
とても誇るべき仕事だ。
ありがとう。
やっぱりお前の元に来てよかった。
すぐにみんなに伝える。
みんなきっと喜んでくれるだろう。」
「明後日からは少し訓練の仕方を
変えようと思います。
なので明日ロズさんたちに集まってもらって
意見を聞きたいんです。」
「わかった、皆には声をかけておく。」
「よろしくお願いします。」
ロズさんは、真剣な顔をするとひとつ頷き、
「こちらこそ。」
にっこりと爽やかに笑うと。
肩の荷が降りたのか、足どり軽くスラムの方へ帰っていった。
きっと国王軍を抜けたこと、仲間たちを巻き込んだこと、
後悔と葛藤とずっと戦っていたんだろう。
リーダーと言うのは、自分一人の言動が
どれほどの重みを持っているか
知らなければならない。
下に就いた者たちは、
それに人生を預けているのだから。
だからこそ、上に立つものは悩み葛藤する。
みんなの事を考え悩み抜いて出した答え、
その意志が弱いわけが無い。
そして、皆はその決断に人生をかけて、
ついてくるのだ。
ロズさんは、その決断が正しかったと、
今、確信したんだ。
俺は、そう思ってくれた事がとても嬉しかった。
きっと、上手くいく。
俺にそう確信させてくれた。
ロズさんに出会えて、本当に良かった。




