第112話 スキルアップ
ー大蛇の巣第2階層ー
生息する魔物はシールドパイソン。
小盾のような鱗をまとい、隠密スキルを持つ非常に厄介な魔物だ。
俺は今そいつらを相手に奮闘中。
いや、いくら固くても、俺の攻撃力なら
当たれば1発ノックアウト。
だけど当たらないよね。
大きさがひと回り大きいはずなのに機敏さもひと回り速い。そして隠密スキルも、一回り上だ。
正直、魔力視と振動感知のLv1だけだと
動きについていけない。
集中して見つけだしても、攻撃した時には既に避けられている。
スキル魔力視発動。
ある一点に意識を集中する。
このある一点とは、実は眼ではない。
額だ。
不思議なものだけど、目でいくら見ようとして集中しても、まったく見えない。
ところが額に意識を集中することで、徐々に周囲にある魔力が見えてくる。
もしかしたらもう少しで第三の目、開眼しちゃうかもしれません。
そうしたらもう人として生きていけないかもね。
いや、もう魔王様として生きてかなきゃ。
なんだけど。
もう一度集中してみる。そこに振動感知を重ねる。
視野が一気に広まり、大蛇の気配を感じる。
後ろか。
ここでさらに集中力をあげる。
見えた。
こちらの様子を用心深く見つめ、
警戒しているようだ。
でもいつ襲いかかってくるか分からない。
プレッシャーの中で集中するって中々キツイよね。
うぅ、へばりそう。
だんだん集中力が落ちてくる。
あ、全方位の振動感知が解けて向き合ってる蛇の方にしか意識を向けられなくなってきた。
やっぱり一朝一夕というわけには行かないよね。
……いや、周りがぼやける代わりに意識を前にだけ向けることで蛇の姿が鮮明になってきた気がする。
もう少しやってみようか。
さらに蛇の方にだけ意識を向ける。
よし、見える。見失わないように常に蛇の動きに合わせて。
よし、よし、これなら行ける!
パクリ……。
あ、
後ろからもう1匹来てたのね…。
頭から上半身丸呑みである。
うぅ、クッサイ。蛇の中めっちゃ生臭い。ヌルヌルするし。
そして、うねるうねる。
俺を引き倒してそのまま飲み込むつもりだ。
俺はと言うと、
ビクともしません。
体幹大事。
ただね、動く度にヌルヌルがまとわりついてすっごく不快。
ベリベリっ!
手を前に突き出し蛇の腹を両手で裂く。
あご先まで裂けた蛇はピクピクと痙攣し、そのまま動かなくなった。
思いがけず1匹撃破だな。
肉を食わせて骨を断つ戦法。
これなら苦労せずに倒せそうだな。
クンクン…。
やっぱりその戦法は無しで。
残り1匹はと言うと、まさか、獲物を横取りしたはずの仲間が返り討ちに会うとは思わなかったのだろう。
慌てた様子で方向転換。
隠密スキルMAXで、逃げの体勢に入った。
逃がしませんよ。
《魔力視のレベルが2に上がりました。》
《振動感知のレベルが2に上がりました。》
レベルアップしちゃった。
でもこれと言って能力が強化された感じはない。
ただ、今までは集中してやっていた事が、無意識にできるようになったようだ。
OK。とにかく後を追おう。
追ってる間に、前の方に集中していた意識を全方位に広げてみる。
「できた。」
元の探知能力のまま全方位を見ることが出来た。
そしてまた、前方に意識を戻し更に集中。
すると、
「うん、さっきよりも鮮明に見える。」
そして、その先に潜む二匹の蛇のことも。
タンタンっ!
逃げる蛇に追いつき頭に一撃。
手にはブラックアナコンダの皮でできたグローブ。
タルトの故郷、兎人族の村で貰ったものだ。
魔力の通りが非常に良くとても手によく馴染む。
何より相手を攻撃した時の反動が少ない。
普通は、敵を殴る力が強ければ強いほど、相手が固ければ固いほど、その反動は衝撃となって自分に帰ってくる。
つまり大きな岩を思い切り殴ったら怪我しちゃう。って事。
なんだけと。
ブラックアナコンダ。
その皮は敵の攻撃を弾き返す力がある。
それを逆に利用したのがこのグローブ。
攻撃時に返ってくる反動を相手に弾き返してしまうって言う代物。
うん、理屈が全く分かりません。
と言ってもやっぱり限界はあるんだけど、魔力を込めれば込めるほどその力は強まり、攻撃力が格段に上がっていく。
なのにこっちは反動がほとんどないっていう、恐ろしい武具だった。
そして、シールドパイソンをそのグローブの力で難なくしとめた。
そのまま、
タタンッ!
タタンッ!
その奥の2匹の蛇を襲撃。
反撃の間もなく打ち取った。
うっし!
シールドパイソンはもう敵じゃない。
このグローブだったら非力な兎人族でも格闘戦出来るんじゃないかな?
魔力を通すのは得意だろうし、隠密系スキルと組み合わせれば、戦いの幅がぐっと広がるんじゃないかな?
むしろ兎人族向けの武具のような気もしてきた。
ブラックアナコンダ見つけたら兎人族に相談して武具を作ってみよう。
そういえばアナコンダも、パイソンもどっちも蛇だ。
毒を以て毒を制する。
ならぬ、蛇を以て蛇を制するだ。
あ、ちなみにパイソンは毒無し蛇だそうです。




